第26話
「なんだ、これは、波の音?」
「じゃあ、これが潮の香……」
「二人とも、もう目を開けていいぞ」
「「!!!」」
目の前に、夕焼けに染まる大海原が広がっている。まさに絶景である。
「すごい! すごいわ!!
ありがとう、ジーク!!」
「ああ、本当に海が見られるなんて。
あれ?
でも、まだお昼過ぎのはずなのに、なんで夕方なのだ?」
「ここは、大陸東部の、バーデンが治める辺境伯領の海岸なんだ。
大公領とは、時差が3時間ほどあってね。
ちょうど今なら夕焼けの景色が観られると思って、ここにしたんだ」
「本当に、本当に、素晴らしいわ。
ありがとう、ありがとう、ジーク!」
「そんなに喜んでくれたなら、俺も本当に良かった。
過ぎたる権能だが、こういうことに使う方が、やっぱり良いな」
「あぁ……、想像以上に、素敵!
ジーク、大好き!!」
ジークフリートに抱き着くシャルロッテ。
「ああ! シャル! ずるいのだ!!」
アビゲイルも、ジークフリートの背中に抱き着く。
「おいおい、二人とも……。
ほら、せっかくの景色を観たら……」
「あら、ジークったら、顔が真っ赤よ。
相変わらず照れ屋さんなんだから。
背が高くなって、とても大人びたかと思っていたけど、そういうところは、
”おチビちゃん”だったころと変わらないわね」
「あれ? 本当だ。
ジーク! 美人姉妹に挟まれた気分はどうだ?」
「俺のことはイイから……、ほら、海だぞ、二人とも。
観ないんだったら、帰るぞ」
「ダメよ、もう少しだけ……」
「仕方ないな、じゃあ、私も……」
「おいおい、二人とも、そろそろ……」
「わかったわ。
せっかくジークが連れてきてくれたんだもの。
この景色、目に焼き付けるわ。
この感動をどう表現したら、いいかしら……」
「シャルが、感じたままに、絵で表現してくれたら、いいさ。
創作意欲を掻き立てるような場所に、これからも色々と連れて行ってやるよ。
そうだな、今度は、大公領の浜辺にしよう。
あちらなら、夕日が海に沈む様子も観られる」
しばらくの間、海岸で景色を眺めていた三人。
程なくして、対岸の山に夕日が沈み、辺りは暗くなってきた。
「近くに、俺の別邸があるんだ。
そこに寄って、少し休憩するか?
そうそう、別邸には俺のヴァイオリンもあるから、そこで、アビーに曲を聴いてもらってもいいし」
「本当か! それは楽しみなのだ!」
「ええ、そうね。こちらのジークの別邸にも興味があるし」
「それじゃあ、そうしよう」




