第24話
しばし、歓談した後、ブリュンヒルデがジークフリートに尋ねる。
「それで、私たち二人だけに話って、なにかしら」
「私にとって、伯母上と大公は、親代わり。
私の馬鹿げた権能は、目の前で一端を見せたこともあり、ある程度は承知しておられるかと。
しかし、これから話す権能の詳細は、俄かには信じられないと思われます」
「バーデンの“転移”と、イーセンブルクの“聡明叡智”なる権能以外の、殿下の深淵なる権能について、ご教授いただけるのですか?」
と、ブラウンシュヴァイク大公がとても興味を示した。それに答えつつ、自らの権能について、説明を始めるジークフリート。
「私もすべてを把握できかねているのだが、まずは、一端がイーセンブルクにも発現した“聡明叡智”について説明しよう。
これは、端的に言えば、膨大な知識が付与された極めて鋭い洞察力だ。
ただし、イーセンブルクとは異なり、私にはそれだけではなく、この世とは異なる世界の知識が、ある男の記憶とともに与えられたのだ」
「この世と異なる世界とは……」
「そこは、高度に文明が発達した世界でな。
なんと人が80億人以上も住んでいるのだ。
ここで詳らかにすべてを話すことはできぬが、その世界の人々を何度も破滅させるほどの強力な武器などもあるようだ」
「なんて、恐ろしい……」
ブリュンヒルデが表情を曇らせた。慌てて、謝るジークフリート。
「すみません、伯母上。
驚かせるつもりはなかったのですが……。
ご心配には及びません。
我々の世界には、それを再現するだけの技術はございませんので。
とは言え、世の理は、概ね同じようですので、特に文化、芸術に関しては、参考になるものが多く、これらは、折を見て、シャルやアビー達にも伝えようかと考えております」
「それは素晴らしいわね。あの子達も喜ぶわ」
それを聞いたブリュンヒルデは、とてもうれしそうであった。
「技術面の知識については、軍事転用の恐れに十分配慮した上で、徐々に広げていきたいとも考えています」
「それは、ぜひとも。
殿下、必要なものがあれば、なんなりとお命じください」
「ああ、わかった。
それから、伯母上、これを一番先にお伝えすべきだったかもしれませんが、様々な権能を与えられた私ですが、私は伯母上のような聖女様方が有する癒しの権能が行使できません。
癒しの権能を発動させる方法はわかっており、それを行使するだけの力も備わっているはずですが、実際に行使することはできないのです。
どうやら、その権能の行使に制約が掛かっているようなのです」
「まあ、それでは……」
「ええ、他人の外傷の修復はもちろんのこと、低位の聖女でも可能な自己治癒能力さえ、行使できません。
まあ、他に、馬鹿げたような権能を多く与えられていますので、ある意味、贅沢な悩みなのですが……。
さて、他の権能ですが……」




