第21話
緊急事態が生じたものの、直ちに解決してしまったジークフリートの姿に皆、安堵した。
ブリュンヒルデは、幸いすぐに正気を取り戻した。
侍女長は、しばらくその場で立っていたが、程なく何事もなかったように、そのまま、皆の給仕を再開した。
「それにしても、頭が蠅でございますか……、古来の伝承にそのような悪魔がございましたな。
たしか、大公家の禁書庫に詳細が記された書物があったかと」
「確かに。
フェンビュッテルの言う通りだな。
伝承の知識がどこまで参考になるかはわからないが……」
「殿下、他にも侵入している可能性が高いかと。
至急、城内を封鎖いたします」
「ああ、至急対処せよ。
そして、城内の人間を、すべて私の前に連れてこい!」
その後、千人を超える城内の人々全員を数百人単位ではあるが、直ちに確認したジークフリートにより、さらに3体の思念体が宝玉に吸収された。
「私は“これ”の調査を最優先せざるを得ない。
イーセンブルク、卿がアドリアに渡り、ギーとともに、対処せよ。
すまないが、あの国への対応も合わせて、頼む」
「承知いたしました。お任せください」
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(……いったい、どうなっている?
半分近くの力が削がれてしまうとは……。
あんな権能を持っている者など、
これまで聞いたことがない……。
まずい、まずいぞ、
この国からは早々に立ち去り、
しばらくは、おとなしくしているほかない……)
「おやっさん。どうしたんですか?」
「ん、なんでもねえよ。
どうやら潮時みたいだからよ。
さっさと、この国からずらかろう」
「積み荷はどうするんですか?」
「あんなのを連れていたら、逃げられねぇよ。
捨てていけ」
「ええ、もったいねぇ。
上玉もいるんだぜ。
ちょっと楽しんでからでもいいんじゃねえか?」
「黙れ!
ノロノロしていたら、まずいんだよ!」
しぶしぶ従う子分達を引き連れ、しばらく先を急いでいたところ、野盗達の前に、黒装束に身を包んだ者が現れた。
中性的な容姿は、とても美しいが、唇を血で濡らしており、妖艶な雰囲気に、野盗達は圧倒される。
(……んん? 余と同じような力を持つ者が……)
「ああん、誰だ、てめえ!」
『まさか、ここまで弱体化しているとは……、僥倖だ』
(……くっ、なんなんだ、こいつは……)
子分達を置いて、逃げ出した男から、黒い霧が噴出した。
その霧は、黒装束の者に吸い寄せられる。
『我が糧となれ……』




