第20話
「ロッテンマイヤー、お願いね」
ブリュンヒルデが、侍女長のロッテンマイヤーに指示し、ティータイムが始まった。
「ロッテンマイヤーよ、我には……」
「大丈夫でございますよ、大公閣下。閣下には、ブランデーを……」
「たっぷりとな!」
大公と侍女長とのやり取りに皆が微笑した。そして侍女長が、まずは、ジークフリートのティーカップにお湯を注いだ瞬間、侍女長をジークフリートが取り押さえた。
「「「???」」」
「皆、すぐに目を閉じよ!」
ジークフリートの命令は絶対だ。皆、疑問に思いつつも指示に従ったのだが、すぐに動けるわけではない。
侍女長に目を向けていたブリュンヒルデは間に合わず、侍女長の目から放たれた光が彼女の目の中に入る。
「ちぃ、こいつ、聖女かよ……。こりゃ、ダメだ。面倒だな~」
と、おおよそ大聖女とは思えない口ぶりで話すブリュンヒルデに、皆、驚愕した。
「殿下、こ奴が件の思念体でございますか」
目を瞑りながら、バーデン辺境伯が尋ねる。
「そのようだな。まさか、ここまで入り込んでくるとはな」
「ああ、本当に、面倒だな~。
かなり久しぶりだけど、顕現するしかないのかなぁ。
あいつ、本体だからって、いつも偉そうに、面倒ごとを押し付けやがって。
まあ、この聖女はかなりの上玉だな。
染め直せば、ご馳走だし。
後で、じっくりと頂こうかな」
禍々しい黒い霧がブリュンヒルデの体から吹き出てくる。
黒い霧は、塊となり、やがて人型になった。
その後、ブリュンヒルデの目から再度発せられた光は、黒い霧に吸収される。
その瞬間、頭が蠅のような奇怪な者が顕現した。
「さて、どうしようかな? って、あれ……、なにぃぃぃぃ!!」
しかし、顕現した瞬間、ジークフリートが手にした宝玉に吸い込まれてしまったのである。
「やれやれ。
宝玉がこのようなものまで吸収してくれて本当に助かったな。
皆、目を開けて良いぞ」
皆が目を開くと、ブリュンヒルデを抱きかかえながら、禍々しい色に染まった宝玉を持ったジークフリートが皆に微笑みかけた。
「こいつは、後でよく調べてみよう。どうやら別に本体がいるようだが……」




