第16話
「ん?」
「いかがされました、殿下」
「バーデンがこちらに来ると言ったので、許可した」
「なんと! バーデンも殿下と同じ権能を持っているのですか?」
「どうやら、そうらしい。私も把握していなかったのだが……」
と、先程までの重苦しい雰囲気を払拭すべく、努めて明るく話すジークフリート。
その後、ジークフリートの剣の鞘から光が漏れ出し、やがて眩しい光となった瞬間、その場に屈強な戦士が現れた。
突然現れた鎧姿のバーデン辺境伯に、ブラウンシュヴァイク大公と、フェンビュッテル伯爵は、大変驚いた。
「殿下、ご尊顔を拝し、恐悦です。大公閣下、ご無沙汰しております。おお、フェンビュッテル伯もいたか!」
「よく来たな、バーデン。いつの間に、そのような権能を発揮できるようになった?」
「それがですな、殿下。 イーゼンブルクが、最近どうやら我にも権能の一端が発現する兆しがあると申しまして。
近場で試したところ、できることが確認できました。
そこで、早速、殿下のもとに、この権能で直接ご報告に参った次第でございます」
「なんだと!
では、遠距離転移は初めてか……。
無理するな。
失敗したら、どうする」
「イーゼンブルクは問題ないと太鼓判を押しまして。
あやつの権能での判断ならば、間違いはあるまいと。
殿下も、ご自身の権能でご確認くださいませ」
ジークフリートが目を細める。これは、権能“聡明叡智”を発揮する際の癖。まもなく、破顔したジークフリート。
「確かに、問題ないようだ。
ただし、転移する座標が不確かな場合には、聖剣などの神聖な物品を介する制約条件があるようだな」
「座標? でございますか……。
それはなんだか複雑で、我には無理なようです。
視認できる範囲であれば問題ないのですが、それ以外は、今のところ、存在が明確に認知できる殿下の元しか、転移はできないと思われます」
「それでは、辺境伯領にはどうやって帰るつもりだったのだ?」
「そこは、殿下に」
「ハハハ、仕方ないな。
まあ、よい。んん?
なるほど、俺が座標指定を手伝ってやれば、卿の権能だけでも、転移は問題なくできるようだ」
「恐縮です」
「まったく。ちょうどよい、卿らも交えて、今後の対策を講じた方が良いな。
一旦戻って、イーゼンブルクを連れてきてくれ」
「おお、これが座標指定ですか!
早速、転移し、イーゼンブルクを伴って、戻ってまいります」
バーデン辺境伯の全身を光が包み込み、光の柱となって、天井に向かって放たれ、その場からバーデン辺境伯は消失した。




