第15話
その後、皇弟ゲオルクは自決した。
皇太子ジークフリートにより、帝都宮殿の地下の一画から、転移でブラウンシュヴァイク大公領に連行された皇弟ゲオルクは、間もなく目を覚ましたものの、しばらくは茫然自失としていた。
本格的な尋問が可能となるまで、一旦、城の一室で様子を見ることにしたのだが、衛兵が目を離した隙に、窓から飛び降り、自らの命を絶ったのである。彼は、自らの血で壁一面に詳細な遺書をしたためていた。
その内容は、とても信じられない内容であった。
「殿下、これは本当に事実なのでしょうか?」
困惑したブラウンシュヴァイク大公がジークフリートに問う。
「叔父上が自決したことからも、とても虚偽とは思えぬ。
少なくとも、何らかの手段で自らの意思に反して操られていたのは間違いないのだろう。
おかしいとは思っていたのだ。
私が知る限り、虫も殺せぬほどに、とてもお心が弱かった叔父上に、正気であのような所業ができたとは到底考えられぬ」
「確かに……。
皇弟殿下が皇后陛下をはじめ、多数の聖女達にあのような惨たらしいことをなさるとは、話を聞いた時から、とても信じられぬことでしたから」
ジークフリートの見立てに、ブラウンシュヴァイク大公家の家宰であるフェンビュッテル伯爵も同意し、話を続ける。
「皇帝陛下を害しておきながら、自らの権力増強の動きはまったく見せず、宮中伯らの専横を許していたのには、奇異に考えておりましたが、まさか、宮殿に引き籠って、悪逆の限りに興じるばかりだったとは……」
その後、電撃的に帝都に侵攻したブラウンシュヴァイク大公領の精鋭軍は、宮殿を占拠し、詳細な調査を行った。
凄惨な現場が確認され、被害にあった聖女のうち、一命を取り止めていた者達からの証言や、非道に協力させられていた者達の供述もあり、皇弟ゲオルク自らが悪道に手を染めていたのは間違いない事実と判断されていた。
「それにしても、殿下がご確認されたという、目から飛び立った光が気になりますな」
「いかにも。殿下はどうお考えですか?」
「想像の域を出ないが、悪霊か、その類の、何らかの悪意を持った思念体が存在するのかもしれぬ。
とても信じ難いが、私の過ぎたる権能の例もある。
世に知られておらぬだけなのかもしれない。
引き続き、調査を頼む。
それから、警戒も怠るな。
特に怪しげなものとは、決して目を合わせてはならぬと、皆に申し伝えよ」
「「御意!」」




