第0.2話
「アビー、それは仕方ないわ。
それよりも、急いで。
私が支度を手伝ってあげるから」
アビゲイルが見習い侍女に尋ねた、ちょうどその時、姉のシャルロッテがアビゲイルの部屋に入ってきて、そう言った。
「なにが仕方ないのだ?」
「いいから、早く着替えなさい。
今日の午前中は、帝国からお客様がお見えになるから、朝食は早めに済ませないといけないのよ」
「ああ、そうだったのだ!
すまない、シャル。頼むのだ!」
「ジーギ、あなたは外で待っていなさい」
「かしこまりました。
お手を煩わせてしまい、申し訳ございません、シャルロッテ様」
シャルロッテにそう言われた見習い侍女は、どこかホッとした様子で部屋を出ていった。
「アビー、前から言っているけど、着替えは他の侍女にさせなさい」
「でも、ちょうど傷を治してやるのに、この部屋に来るのだから、そのお返しに、着替えを手伝わせれば、他の侍女は、他の仕事ができるし……」
「それでもよ。半年経っても、これじゃ、仕方ないでしょう」
「それはそうだけれど、フリーデは、他の事は、なんでもよくできるのだ。
だから、苦手なことは、練習して、うまくなれば良いのだ。
楽器だって、最初は苦手でも、練習すれば、そのうち上手になるのだ。
それと同じだろう?」
「それはそうだけれど、それは、それよ。
いいから、いい加減に諦めなさい」
釈然としないが、確かに、あんなにホッとした顔をされると、意地悪をしているようでもあり、仕方ないかと考えはじめたアビゲイル。
「悔しいけれど、そうするのだ。シャルが言うことは、いつも正しいし……」
「わかったなら、いいわ。
それよりも、これで大丈夫よ。
早く、ダイニングルームに向かいましょう。
お母様が待っているわ」
「わかったのだ。急ぐぞ、シャル!」
「誰のせいで、遅れたと思っているのよ……」




