第12話
「閣下、被災地までは、まだ距離がございます。
そろそろ日が暮れてきますし、このあたりで一旦、ご休憩を……」
「この緊急事態に何を言っておるのか!
殿下を一刻も早くお助けせねば……。
そうでなくても、途中の崩落個所を抜けるのに、時間を要してしまったのだぞ!」
領境まで出迎えに来ていたブラウンシュヴァイク大公は、皇太子ジークフリート被災の報を受け、現地に急行していた。
ブラウンシュヴァイク大公は、高位の聖女には劣るものの、この世界の男性には稀有な治癒の権能があり、ある程度の外傷であれば、すぐさま回復させることが可能であった。
この権能があり、ブラウンシュヴァイク大公は、常に最前線で陣頭指揮を執ってきたが、ここまで突出して進むことは極めて稀であった。
このように先を急いでいた大公一行に、突然、渓谷の崖の上から、一斉に矢が浴びせられた。
「閣下!」
衛兵が自ら盾となり、ブラウンシュヴァイク大公を守るが、次々と倒されていく。襲撃者には、弓矢に長けた遣い手が多くいるようだ。
「まさかこんなに早く、御自ら、ここまでお越しとは、想定外ですな。
準備が間に合わぬかと心配しました。
しかし、閣下ともあろう方が、そのような供回りだけとは。
これなら、我々だけでも、すぐに、なんとかなりそうです」
声を発していた士官らしき男が、矢を構えた兵士達に、合図をする。
「放て!」
多数の矢がブラウンシュヴァイク大公に殺到する。
これでは、いかに治癒の権能を有するブラウンシュヴァイク大公といえども、かなりの深手となるは必至であった。
しかし、その瞬間に、ブラウンシュヴァイク大公が帯剣していた聖剣が光ると、そこに目掛けて上空から光の柱が降り立ち、矢が跳ね返された。
「いや、なんともならんよ」
どこからともなく現れた聖騎士の鎧姿の青年が不機嫌そうに答えた。
「なんとか間に合ったようだな。
だが、またもギリギリだ。
その点は、もう少しなんとかならないものか……」
「おお! 殿下!!
我をお救い頂き、感謝申し上げます。
お怪我は大丈夫ですか?
それにしても、もはや、立派な青年でございますな!」
「大公よ、話は後だ。まずは、“駆除”だな」
宝玉を手にしたジークフリートが、その宝玉を頭上に掲げると、崖の上から矢を構えていて取り囲んでいた兵士達が、宝玉の中にあっという間に吸い込まれていく。
一人残った士官らしき男は唖然。
「お前も特別室に案内してやる。
“先客”がいるが、まあ、気にするな」
ジークフリートは、別の宝玉を取り出し、宝玉を士官らしき男に向ける。
その場から逃げようとした男は、宝玉から飛び出た光線に全身を拘束され、一気に宝玉の中に引きずり込まれる。
「なんだか、既視感が…。まあ、よい。駆除完了だ」




