第11話
「二人とも、ありがとう。助かった」
すっかり回復した様子のジークフリートが感謝を伝えると、二人の少女達も安心したのか、ようやく落ち着いたようだ。
「すぐに戻ってくる。詳しくはその時に」
ジークフリートの全身が光に包まれ、光が上空に向かって放たれた。
その瞬間、ジークフリートはその場から消失した。
皆、光の柱が上った空を見上げながら、呆然として、しばらくその場から離れることはできなかった。
驚いて腰を抜かした侍女も少なくなかった。
異変に気付いた城の衛兵達が訓練場に集まってくる。
「シャル、母上に報告に行くぞ!」
「ええ、そうね。早く無事を伝えて、お母様にも安心して頂かないとね」
「それにしても、ジークめ。
たった1年で、あんなに背が伸びていたなんて、生意気だ!」
「フフッ、ええ、そうね。
“おチビちゃん”のジークだったくせに。
とても同い年とは思えないわ……」
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アウグステンブルク帝国は、皇帝直轄領と、二つの大公領、そして200以上の公領・侯領・伯領・教会領などの領邦から成る。
各領には、ある程度の自治が認められているものの、かなり制約がある一方、二つの大公領には、主権を持つ事実上の独立国家としての権利が認められている。
これは、帝国建国に多大な貢献をした二人の大公に、初代皇帝が配慮したことに起因する。
ブラウンシュヴァイク大公領は、二つの大公領の一翼であり、帝国南西部に肥沃で広大な領土を有しており、交通の要衝である回廊にも接していることから、経済的に恵まれていた。
また、ブラウンシュヴァイク大公領は、歴代名君にも恵まれていた。
中でも、当代のブラウンシュヴァイク大公アルプレヒトは、大陸南部の大国の一つであるブルグント王国を主力とした王国連合軍の侵攻を都度撃退したことで、軍事面で、とりわけ高い名声を得ていた。
さらに、先帝暗殺で窮地に陥っていた皇太子ジークフリートと、親聖マクシミリアン教皇国から亡命してきた大聖女も庇護するに至り、その影響力と保有する強大な軍事力を背景に、宮中伯達が暗躍する帝国宮廷や親聖マクシミリアン教皇国からの画策を跳ね除けたことで、その体制をさらに盤石とすることに成功していた。
このような貴種を庇護する政治的な効果は非常に大きい。
しかし、そのような効果とは関係なく、妻子のいないブラウンシュヴァイク大公にとって、彼らは今や何物にも代えがたい愛すべき存在であった。
領境の難所、モーゼル渓谷を莫大な費用をかけて整備したのも、表向きの理由は、隣領との交通事情改善だが、大公の真意は、この難所を大公領への帰路に通る皇太子の負担軽減のためであった。
そのため、突貫工事で皇太子の帰還になんとか間に合わせた難所の整備が、このような事態を招くこととなるなど、大公にとっては思いもよらぬことだった。




