第10話
その光が消失した時、聖騎士の鎧を着た、一人の青年が忽然と現れた。
全身に傷が認められるものの、その青年には非常に大きな力が漲っているように見受けられた。
「貴様こそ、分を弁えよ」
「ば、馬鹿な!? なぜ、どうやって……」
「なんとか間に合ったようだな」
「……あなた、我が大聖堂の聖騎士の鎧を着ていますが、何者ですか?
まあ、突然現れたのは驚きましたが、そのような傷を負いながら、たった一人でどうするつもりですか?」
「つい最近も、似たようなセリフを聞いたな。
外道の神官ども。
誰が貴様らに発言を許した?
さっさと、ここから消えろ!」
どこからともなく取り出した宝玉を手にした青年が、宝玉を頭上に掲げた途端に、少女達を取り囲んでいた神官達が宝玉の中に瞬時に吸い込まれた。
一人残された高位神官は唖然。
「ば、馬鹿な……」
「お前、それしか言えないのか?
まあ、いい。お前は特別室に案内してやる」
青年は、別の宝玉を取り出し、宝玉を高位神官に向ける。
その場から逃げようとした高位神官。
しかし、宝玉から飛び出た光線が高位神官の全身にまとわりつき、一気に宝玉の中に引きずり込む。
「逃すわけがないだろう。
貴様がこれまでに他者に与えた苦痛を、百倍にして返してやる」
青年が力を込めると、宝玉からは絶叫が聞こえたが、すぐに静かになった。
「二人とも、怖かっただろうが、もう安心だ。こっちにおいで」
「「ジーク!!」」
縋りつく二人。
二人の頭を撫でながら、侍女と護衛達に声をかける。
「皆、苦労をかけたな。これから一緒に帰るが、少しの間、目を瞑っていてくれ」
困惑しつつも、命令に従う侍女と護衛達。
「もういいぞ」
「「「???」」」
ジークフリートに声を掛けられ、目を開けた彼らは、なぜか公都の城内にある訓練場にいた。
「殿下、そのお力は……」
「今は詳しく説明している時間はない。
まだ少し余裕があるはずだが、ぐずぐずしていると、大公も危ない」
「おじ様が?
ジーク? あなたはどうするつもりなの?」と、シャルロッテ。
「大公も助けてくる。
でも、その前に。
シャル、ああ、本当に無事でよかった。
アビーも、顔を見せておくれ」
ジークフリートの胸に抱きついたままのアビゲイルは、そのまま首を振る。
「アビー、ずるいわ。私も、もっと……」
「シャルまで……、悪いが二人とも、そろそろ離してくれないか?」
しぶしぶ従う二人の少女達。
「伯母上のもとに、彼女達を連れて行ってくれ。
伯母上も心配させておられるだろうから」
「駄目だ。怪我をしているではないか。
すぐに直してやる。シャルも手伝え」
「ええ、もちろんよ」
二人が手をかざすと、神聖な光が現れ、青年の全身を包み込む。
大聖女の娘である二人の聖女の力は強力で、見る見るうちに怪我が回復していく。




