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第64話 筋肉と筋肉

ダービルは、止まらなかった。

迷宮の構造。

罠。

分岐。

そんなものは、もはや意味を成していない。

壁という壁を、破壊しながら。

一直線。

ただ最短距離を求め、

筋肉のみで突き進む。

ドゴン!!

バゴォ!!

ズガァン!!

石壁が砕け、

粉塵が舞い、

迷宮そのものが悲鳴を上げる。

ミリア

「ちょっ……!!待ってください!!」

崩れる瓦礫を避けながら、

ミリアは必死に追いかける。

ミリア

「普通は道を探すんです!!

作るものじゃありません!!」

だが、ダービルは止まらない。

振り返りもしない。

ダービル

「筋肉の前に、道理は不要」

ミリア

「またそんなことを言う!!」

そして――

バン!!!!

最後の壁が砕け散る。

粉塵の向こう。

そこには――

巨大な広間。

多数の魔族兵。

武装。

警戒。

だが、その表情は一様に混乱していた。

魔族兵A

「か、壁を壊してきただと!?」

魔族兵B

「入口から来ないのかよ!!」

魔族兵C

「どうかしてるぞ……!!」

完全に予想外。

正規ルートを無視し、

壁を貫通して現れる敵。

それはもはや侵入者ではなく、災害だった。

その魔族たちの中央。

一際巨大な影。

巨漢。

ダービルに匹敵する体格。

圧倒的な筋量。

その男だけは、

狼狽えていなかった。

「……オーマの部下は、入口から入ることを知らぬのか」

嘲笑。

筋肉への自信。

ダービルは静かに前へ出る。

そして。

ダービル

「……ルームサービスだ」

沈黙。

ダービル

「筋肉一丁」

広間全体が静まり返る。

ミリア

「意味が分かりません!!」

ツッコミが響く。

だが、ダービルは真顔だった。

男は、ゆっくり立ち上がる。

床が軋む。

「貴様が……噂に聞く」

一歩。

「魔王軍最高の筋肉を持つ男か」

ダービル

「……いかにも」

男は鼻で笑う。

「無知とは罪だな」

さらに一歩。

「上には上がいるということを――」

筋肉が膨張する。

血管が浮き上がり、

衣服が弾け飛ぶ。

ビリィッ!!!!

魔族たちが息を呑む。

「教えてやろう」

ダービルの目が細まる。

ダービル

「……ほう」

「我が名は――」

「パドル」

「魔王シューベット五人衆最強の男だ……!!」

ミリア

「あいつが、五人衆……!!」

その威圧感。

その筋量。

明らかに、これまでとは格が違う。

ミリア

「それに、五人衆最強……!?」

だが。

ダービル

「案ずるな」

静かな声。

絶対的自信。

ダービル

「魔王オーマ四天王――」

一歩。

ダービル

「ダービルだ」

二人の巨漢が、歩き出す。

一歩。

また一歩。

その度に、

部屋が揺れる。

床が軋む。

空気が震える。

筋肉。

そして筋肉。

純粋なる暴力の塊同士。

そして中央。

二つの巨体が、相対した。

ミリア

「ダービルさん……!!」

パドルが先に動く。

巨大な拳。

右ストレート。

バン!!!!

直撃。

ダービルの左頬を撃ち抜く。

ガン!!!!

「ぬぅ……!!」

衝撃。

だが、倒れない。

踏みとどまる。

そして即座に。

バン!!!!

ダービルの左ボディ。

鋭く、重い。

パドル

「ぐっ……!!」

巨体が一歩、下がる。

パドル

「小癪な……!!」

再び右腕。

バン!!

バン!!

バン!!

部屋中に打撃音が響く。

拳。

筋肉。

骨。

ダービル。

パドル。

交互に殴る。

避けない。

防がない。

ただ、打ち合う。

パワー対パワー。

筋肉対筋肉。

純粋すぎる殴り合い。

その迫力に、

誰一人近づけない。

魔族兵も。

ミリアも。

ただ、見守るしかない。

ミリア

「がんばって……!!

ダービルさん……!!」

ミリアの声が届く。

パドル

「くっ……!!」

ついに。

パドルが一歩後退する。

パドル

「……化物め……!!」

目線の先。

ダービル。

その表情。

笑っていた。

ダービル

「俺は――」

拳を握る。

筋肉が膨れ上がる。

ダービル

「こういう戦いがしたかったんだ」

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