表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
68/70

第63話 筋肉は道を創る

毒が満ちる密室。

空気は重く、肺に絡みつく。

時間は確実に削られていく。

リオンたちの呼吸は浅くなり、

ネイソンの額には冷や汗が滲む。

(……長くはもたない)

ポウセンは理解していた。

このままでは、全滅する。

目の前には、プランクリン。

その間には、無数の糸。

足元には粘着トラップ。

速度は殺されている。

(普通なら、詰みだ)

ポウセンは、ふっと息を吐いた。

視線を横へ。

通路の壁。

石造り。

分厚い。

だが――

(壊せないとは言ってねぇ)

ポウセン

「……なぁ」

プランクリン

「なんです?」

ポウセン

「この通路、丈夫そうだな」

プランクリンは一瞬だけ眉をひそめる。

その違和感。

だが、すぐに笑う。

プランクリン

「えぇ、魔法補強済みです。簡単には――」

ドゴォォォン!!!!

言葉は、最後まで続かなかった。

ポウセンの拳が、壁に突き刺さる。

衝撃。

石が砕け、

亀裂が走り、

次の瞬間――

壁が、吹き飛んだ。

外気が流れ込む。

毒の霧が、揺れる。

拡散。

逃げ場を得た毒は、密度を失い――

薄れていく。

同時に。

張り巡らされていた糸が、

支点を失い、次々と地面へ落ちる。

粘着トラップも、

外気と破壊の衝撃で機能が乱れる。

閉じられていた空間が、

――開いた。

プランクリン

「な……っ」

理解が追いつかない。

設計された“殺しの空間”が、

一撃で崩壊した。

プランクリン

「ふざけないでください!!」

声が荒れる。

プランクリン

「こんな突破方法が許されていい訳がありません!!」

ポウセンは肩を回す。

軽く、準備運動のように。

ポウセン

「悪いな」

一歩、踏み出す。

ポウセン

「筋肉に不可能はないらしいぜ」

その瞬間。

消える。

リオン

「っ!?」

視認できない。

ポウセンの速度が、解放された。

一歩。

二歩。

三歩目で――

間合いゼロ。

プランクリン

「――!!」

反応が、間に合わない。

拳。

蹴り。

連撃。

逃げる暇も、防ぐ余裕もない。

音だけが響く。

ドン、ドン、ドン!!

そして。

最後の一撃。

プランクリンの身体が、

壁に叩きつけられる。

崩れ落ちる。

動かない。

静寂。

ポウセンはゆっくりと近づく。

倒れたプランクリンの服を探る。

指先が、何かに触れる。

ポウセン

「……あったな」

取り出す。

小瓶。

一本。二本。三本――

複数の解毒剤。

ポウセンは振り返る。

ポウセン

「ほら、飲め」

リオンたちへ投げ渡す。

リオンは震える手で受け取る。

すぐに飲む。

喉を通る液体。

数秒。

呼吸が、楽になる。

ネイソン

「はぁ……助かった……」

バーバラ

「マジで死ぬかと思った……」

リオンはポウセンを見る。

まだ信じきれない顔で。

リオン

「ポウセンさん……さっきの方法って……」

ポウセン

「あぁ」

何でもないように答える。

ポウセン

「筋肉だ」

リオン

「……えぇ」

理解を、諦めた。

※※※

ダービルとミリア。

こちらも迷宮を進行中。

ダービルは止まらない。

罠を見つける。

回避しない。

踏み抜く。壊す。突破する。

ミリア

「ちょっと待ってください!!普通は解除するんです!!」

ダービル

「筋肉で十分だ」

ミリアは頭を抱える。

(まただ……この人たち……)

だが、ついていくしかない。

やがて。

巨大な扉。

ダービル

「来たか……五人衆」

構える。

だが――

静寂。

何も起こらない。

ミリア

「……いませんね」

ネイソンの推測通り。

ここはすでに攻略済み。

タラスコウの担当ルート。

ダービルは、露骨に不満そうな顔をする。

ダービル

「五人衆はおらぬのか」

ミリア

「いいじゃないですか……安全に進めるなら……」

だが。

その先。

行き止まり。

沈黙。

ミリア

「……え?」

完全な袋小路。

道は、ない。

ミリアの背中に冷たいものが走る。

(……嫌な予感しかしない)

ダービルの肩が、震える。

怒り。

ダービル

「……おい」

低い声。

ダービル

「道は繋がっているよな?」

ミリア

「……そう、ですね」

(やめてくださいその確認)

ダービルは拳を握る。

そして――

壁を殴る。

ミリア

「えぇぇぇ!?」

轟音。

石が砕ける。

ダービル

「道がないなら――」

さらに一撃。

ダービル

「作ればいい」

ミリア

「もう嫌ですこの世界!!!!」

筋肉は、道をも創造する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ