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第59話 筋肉が導く五つの扉

激戦の末。

魔王城正門付近は、ようやく静寂を取り戻していた。

先ほどまで響いていた咆哮。

爆音。

拳圧。

断末魔。

その全てが消え去り。

今、そこに残るのは。

崩れた瓦礫。

倒れ伏す魔族たち。

戦いの余韻。

そして。

なお前へ進もうとする者たちの、荒い呼吸だけだった。

リオンが剣を下ろし、深く息を吐く。

「……終わった、のか」

バーバラが肩を回す。

「いやぁ……今までで一番無茶苦茶な突入だったよ」

ブロックも、巨大盾を下ろしながら苦笑する。

「正門を拳で吹き飛ばす勇者なんて、初めて見た……」

ネイソン。

「もはや勇者の定義そのものが変わりつつありますね」

ミリア。

「私もそう思います……」

だが。

セリアーナだけは、誇らしげだった。

「さすが勇者様です!」

「筋肉は全てを解決します!」

「だから、それは違いますって!!」

戦いを終えた一行の前に。

新たな光景が現れる。

巨大な広間。

そして、その奥。

五つの扉。

横一列に並ぶ、巨大な石扉。

それぞれが異なる紋様を刻まれ。

不気味な魔力を漂わせている。

どれも同じように見え。

どれも怪しい。

ミリアが思わず声を上げた。

「扉が……五つも……!?」

リオンが険しい表情で前を見る。

「……シューベットらしいですね」

「狡猾な男です」

「おそらく」

「正解の道は、一つだけでしょう」

ネイソンも頷く。

「間違いなく、他は罠でしょうね」

「これまで同様、侵入者を削るための悪意に満ちた構造です」

バーバラ。

「どうするんだい?」

ブロック。

「一つずつ潰していくか?」

常識的な判断。

慎重な進行。

……だが。

この場には。

常識を破壊する者たちがいた。

ダービルが、腕を組みながら低く言う。

「……ふん」

「それでは、時間がかかりすぎる」

ミリア。

(あっ)

(嫌な予感)

竹助。

「別行動を取るか」

ミリア。

「えぇぇぇぇぇぇぇ!?」

絶叫。

当然だった。

「だってここ、魔王城ですよ!?」

「敵の本拠地ですよ!?」

「普通、分断とか避ける場面ですよね!?」

セリアーナが首を傾げる。

「どうかしましたか?」

「どうかしてるのはそっちです!!」

ダービル。

「心配するな」

「おまえは、俺と一緒だ」

ミリア。

「もう決定事項なんですね!?」

ダービル。

「当然だ」

「守ってやる」

ミリア。

「うぅ……それはありがとうございますですけど……!」

セリアーナ。

「私は勇者様と一緒です!」

ミリア。

「でしょうね!!」

一切の迷いがない。

ポウセンが、やれやれと肩をすくめる。

「まぁ……」

「効率的ではあるよな」

意外にも、合理的判断。

そして。

リオンたちへ視線を向ける。

「……お前ら」

「俺と一緒に来るか?」

リオン。

「え?」

ポウセン。

「俺は一人でも構わねぇけどよ」

「五人衆とか来たら、お前らきついんだろ?」

リオンたち。

「…………」

ネイソン。

「……正論ですね」

バーバラ。

「むしろありがたい」

ブロック。

「お願いします」

リオン。

「……よろしくお願いします」

ポウセン。

「よし」

「決まりだな」

こうして。

一行は、三組に分かれることとなった。

第一組

竹助 × セリアーナ

第二組

ダービル × ミリア

第三組

ポウセン × リオン一行

だが。

まだ疑問は残る。

セリアーナが、ふと残る二つの扉を見る。

「……残り二つが正解かもしれませんけどね」

ミリア。

「そうですよ!!」

「その可能性、普通に高いですよね!?」

だが。

ダービル。

「構わん」

「その時は、誰かが戻ればいいだけだ」

ポウセン。

「まぁ……確かにな」

合理的。

だが豪快。

竹助。

「心配ない」

一拍。

「筋肉が導いてくれる」

リオンたち。

「……え?」

セリアーナ。

「さすが勇者様!」

ミリア。

「もう分かりました……」

「考えるだけ無駄なんですね……」

半ば諦め。

だが。

その顔には、わずかな覚悟もあった。

それぞれが。

別々の扉の前へ立つ。

仲間を見る。

短い沈黙。

言葉は少ない。

だが。

確かな信頼が、そこにあった。

ダービル。

「死ぬなよ」

ポウセン。

「そっちこそな」

セリアーナ。

「必ず、また会いましょう!」

ミリア。

「……はい!」

竹助。

「行くぞ」

三組が、それぞれの扉へ進み出す。

魔王城内部。

より深く。

より危険な領域へ。

お互いの無事を祈りながら。

その頃。

最上階。

玉座の間。

魔王シューベット。

巨大な魔力映像越しに、その様子を眺めていた。

仮面の奥。

口元が、わずかに歪む。

「……とうとう来たか」

不敵な笑み。

「正解の道など……」

一拍。

「あれば、いいがな」

五つの扉。

その全てが。

絶望へ繋がる可能性を秘めていた。

魔王城そのものが、次なる悪意を剥き出しにしようとしていた。

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