第58話 筋肉で突入する魔王城
ついに。
竹助たちは、魔王シューベットの城へと辿り着いた。
巨大な廃城。
黒ずんだ石壁。
崩れかけた塔。
禍々しい魔力を放つ巨大建造物。
長い年月を経て朽ちているはずなのに。
その存在感だけは、今なお圧倒的だった。
まるで。
“ここから先は死地だ”と語りかけてくるかのように。
だが。
その城門の前に立つ者たちは。
誰一人として、怯んでいなかった。
リオンが、目の前の光景を見上げながら呟く。
「……信じられない」
「本当に……ここまで辿り着けるなんて……」
ネイソンも、眼鏡を押し上げながら息を吐く。
「理論上、到達成功率は極めて低かったはずですが……」
「まさか、現実になるとは」
バーバラが肩をすくめる。
「途中から、もう意味が分からなかったけどね」
ブロックは、自身の腕を見ながら真顔で呟いた。
「……俺も、鍛えた方がいいのかもしれない」
そんな彼らに対し。
セリアーナは、どこか得意げに胸を張る。
「筋肉です!」
ミリアが即座にツッコむ。
「説明になってませんからね!?」
※
ポウセンが城全体を見上げながら、頭をかく。
「……とりあえず、辿り着いたのはいいけどよ」
「どこから入る?」
「真正面から行くのか?」
「さすがに敵も待ち構えてるだろ」
常識的な意見。
ミリアの目が輝く。
「なるほど!」
「裏口とか、別の侵入口を探す感じですね!」
ようやく。
ようやくまともな作戦会議が始まる。
……かに思えた。
だが。
ダービルが腕を組み、低く言う。
「一理ある」
「だが」
「回りくどいのは、性に合わぬ」
竹助。
「同感だ」
ミリア。
「嫌な予感しかしません!!」
セリアーナが、にこやかに頷く。
「それなら……決まりですね!」
リオンたち。
「え?」
ポウセン。
「あーもう……」
深いため息。
「……知らねぇぞ」
※
正門。
巨大。
古びている。
だが、今なお圧倒的な存在感を放つ巨大城門。
侵入者を拒絶する象徴。
その正面へ。
竹助が進み出る。
静かに。
拳を握る。
リオン。
「……え?」
「まさか……」
ネイソン。
「いや、さすがにそれは――」
バンッ!!!!
轟音。
竹助の拳。
ただ、それだけ。
しかし。
巨大な正門が、内側へ向かって吹き飛んだ。
粉砕。
木片。
鉄片。
石材。
全てが、豪快に弾け飛ぶ。
静寂。
城内にいた魔族たちが、完全に硬直する。
「な……」
「正門を……」
「吹き飛ばした……!?」
「ふざけやがって!!」
「皆殺しだァァァ!!」
※
ミリア。
「あーもう!!」
「いきなりじゃないですか!!」
ダービル。
「俺のもとから離れるなよ」
ポウセン。
「やることが派手すぎるだろ……」
セリアーナ。
「いきますよ!」
竹助。
「……全力でかかってこい」
リオンたち。
「無茶苦茶すぎる!!」
※
次の瞬間。
無数の魔族が、一斉に襲いかかる。
「うおおおおお!!」
「殺せぇぇぇ!!」
数。
圧力。
殺意。
リオンたちは咄嗟にフォーメーションを組む。
剣。
槍。
魔法。
盾。
これまで何度も魔族と戦ってきた。
だが。
この規模。
この密度。
この戦場は、完全に別格だった。
※
だが。
竹助たちにとっては。
違った。
セリアーナ。
「――結界展開」
魔法陣が展開される。
敵の退路を封鎖。
さらに。
侵攻ルートそのものを強制的に狭める。
魔族たちの流れが、一本に収束する。
その先。
竹助。
「……ふん」
拳。
ドンッ!!
ただのパンチ。
しかし。
その威力は。
魔族をまとめて爆散させる。
一撃。
また一撃。
敵が、次々と消し飛ぶ。
リオン。
「なっ……!?」
ネイソン。
「殲滅力が異常すぎる……!!」
※
一方。
ダービルとミリア。
ミリアは背後を守る。
「結界!」
防御。
支援。
補助。
ダービルは正面のみを見る。
「ぬぅん!!」
拳。
魔族が吹き飛ぶ。
さらに。
床に転がる瓦礫を拾う。
投擲。
単純。
だが。
恐ろしく正確。
離れた位置の魔族の頭部が、次々と吹き飛ぶ。
ミリア。
「やっぱり戦い方が豪快すぎます!!」
だが。
彼女の防御は、確実にダービルを支えていた。
※
さらに。
ポウセン。
高速。
リオンたちへ向かう敵を、片っ端から排除する。
「おらっ!!」
蹴り。
拳。
突進。
速い。
何より。
的確。
気づけば。
リオンたちの周囲の敵だけが、綺麗に排除されていた。
ポウセンが、軽く振り向く。
「……よぉ」
「怪我、ねぇか?」
余裕。
リオンたち。
「…………」
「この人たち……」
「こんなに……強かったのか……!!」
※
魔王城正門前。
そこは、もはや戦場だった。
だが。
その戦場で。
竹助たち一行は。
圧倒していた。
勇者。
神官。
補助神官。
四天王二名。
異世界勇者パーティ。
常識外れの戦力。
筋肉。
それは。
魔王城すら、正面突破する。




