第55話 筋肉が示す魔王城への道
荒廃した町。
崩れた建物。
疲弊した住民たち。
そして。
新たに出会ったもう一人の勇者――リオン。
二つの勇者。
二つの異なる戦い方。
だが、目指す先は同じ。
魔王シューベット討伐。
※
町の中央。
崩れた石造りの広場。
その一角で、竹助たちとリオン一行は改めて向き合っていた。
リオンは、竹助たちを見渡す。
筋肉の勇者。
神官。
補助神官。
魔王軍四天王二名。
あまりにも異質。
だが。
これまで聞かされた内容。
倒してきた敵。
実績。
それら全てを総合すれば――
「……正直」
リオンが、深く息を吐く。
「とても信じられません」
率直だった。
「ですが」
「あなた方の話が本当なら――」
一拍。
「魔王シューベットも、倒せるかもしれない……!」
その言葉には。
疑いよりも、希望が強く宿っていた。
※
ポウセンが、すぐに本題へ入る。
「そのシューベットの居場所は分かるのか?」
無駄がない。
戦うには、まず敵の位置。
ネイソンが眼鏡を押し上げながら答える。
「現在確認されている拠点は」
「この町から西へ進んだ山奥」
「廃城です」
静かな声。
だが、確信があった。
※
ミリアが首をかしげる。
「……現在?」
その言葉に。
バーバラが腕を組んで答える。
「シューベットは、一つの拠点に留まらないのさ」
「いくつもの拠点を持ってる」
ブロックも頷く。
「定期的に拠点を変えてる」
「かなり慎重なやり方だ」
※
セリアーナが静かに考える。
「……なぜ、そこまで?」
「魔王であれば、そこまで隠れる必要はないのでは?」
※
リオンが答える。
「おそらくですが」
「敵からの攻撃に備えているのかと」
ネイソンが補足する。
「もっとも」
「魔王シューベットへ直接攻め込む者など、ほぼ存在しませんが」
※
ダービルが鼻を鳴らす。
「……ふん」
その声音には、明らかな侮蔑。
「かつて」
「シューベットは、魔王オーマ様に敗れたと聞く」
※
ポウセンも腕を組む。
「なるほどな」
「オーマ様を恐れての備えか」
かつて敗北した記憶。
それが。
シューベットをここまで慎重にしている。
※
竹助が、静かに口を開く。
「……とにかく」
「今は、その廃城にいるんだな」
※
リオンが力強く頷く。
「はい!」
「移動していなければ、今もそこにいるはずです!」
※
セリアーナの瞳が輝く。
「勇者様!!」
竹助。
「これで」
「向かう先は決まったな」
短い。
だが。
それで十分だった。
※
すると。
リオンが、一歩前に出た。
「私たちも同行します!」
真剣な表情。
「あなた方には及ばないかもしれません」
「ですが」
「魔王シューベットを倒したい気持ちは同じです!」
ネイソンも続ける。
「道案内も必要でしょう」
「地理は我々の方が把握しています」
合理的。
※
ポウセンが、にっと笑う。
「おう!」
「よろしく頼むぜ!」
こうして。
二つの勇者パーティは、一時共闘することとなった。
※
その後。
西の廃城へ向け、一行は進軍を開始する。
山道。
険しい道。
緊張感。
決戦が近い。
※
その道中。
「……おい」
低い声。
ダービルだった。
ミリアが振り向く。
「何ですか?」
ダービルは前を見たまま言う。
「……今から決戦だ」
「怖くないのか?」
突然の問い。
ミリアは少しだけ黙る。
怖い。
当然だった。
相手は魔王。
今までの敵とは、格が違う。
だが。
「……怖くないって言ったら」
「嘘になります」
正直な答え。
だが。
そのまま終わらない。
「でも」
一拍。
「ダービルさんに、勇気をもらえましたから」
※
ダービルの表情が、わずかに動く。
「……ふん」
照れ隠しのように鼻を鳴らす。
そして。
「俺から離れるな」
「全力で守ってやる」
その言葉には。
絶対的な自信があった。
※
ミリアが微笑む。
「ありがとうございます」
そして。
「でも」
「私も、ダービルさんを守ります」
※
沈黙。
ダービルが、ゆっくりと口元を吊り上げる。
「……言うようになったじゃないか」
成長。
補助神官として。
そして、一人の仲間として。
※
その様子を後ろから見ていたポウセンが、小さく呟く。
「……あいつら」
「仲良かったのか?」
率直な疑問。
すると。
セリアーナが、なぜか誇らしげに胸を張る。
「筋肉です!」
※
ポウセン。
「……は?」
※
ミリア。
「違いますからね!?」
全力否定。
だが。
否定しきれない何かも、確かにそこにはあった。
※
こうして。
二つの勇者。
二つのパーティ。
筋肉。
剣。
魔法。
神官。
四天王。
全てを乗せた大連合が。
魔王シューベットの待つ廃城へ向け、進軍を開始した。
決戦は近い。
筋肉が。
新たな戦場へと導いていく。




