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第52話 筋肉が支える王国

王都。

ギルド本部。

かつてないほど、空気が張り詰めていた。

冒険者たちの喧騒。

依頼の声。

訓練の掛け声。

普段なら絶え間なく響いているそれらが、今は妙に遠い。

重い。

王国全体が、見えない圧力を感じ始めていた。

ギルド長ガルドの前。

一枚の通信魔法紙が、淡く光を放っていた。

セリアーナからの報告。

内容は簡潔。

だが。

そこに記された“名”が、全てを変えた。

「……魔王シューベットだと?」

低く、重い声。

ガルドの眉間に深い皺が刻まれる。

周囲の空気が、一段冷えた。

その場には、すでに主要人物たちが集められていた。

魔王オーマ。

カイシン。

ポウサン。

そして、フィオナ。

王国と魔族。

理論と筋肉。

今や、一つの国家防衛のために並ぶ存在。

オーマが、静かに目を細める。

「……奴の仕業であったか」

その声には、明確な確信があった。

フィオナが即座に反応する。

「知っているのか?」

オーマは、ゆっくりと頷く。

「昔、やりあったことがある」

一拍。

「知略家でな」

「時間を与えると厄介なやつだ」

その言葉には、単なる敵評価以上の重みがあった。

“戦った者だけが知る危険性”。

それを理解した空気が、その場に広がる。

カイシンが、長い髭を撫でながら呟く。

「……ほう」

その目は鋭い。

単なる魔王ではない。

戦略で侵略する敵。

つまり。

“理論が通じる敵”でもある。

ポウサンが、一歩前に出る。

「援軍を送りますか?」

当然の提案。

だが。

オーマが、静かに手を上げた。

「いや」

一言。

全員が視線を向ける。

「勇者は、すでにダービルと合流したようだ」

「それに」

「ポウセンの故郷も近い」

「奴も合流する可能性が高い」

その瞬間。

ポウサンの目が見開かれる。

「おぉ……!」

「ダービルとポウセンが……!」

声に、明確な熱が宿る。

かつて共に戦った者だからこそ分かる。

その意味。

フィオナが、腕を組む。

「その二人なら知っている」

「だが……強いのか?」

率直な疑問。

彼女は、勇者との戦いしか見ていない。

四天王の本気を、まだ知らない。

カイシンも、静かに頷く。

「確かにのう」

「ワシらは勇者との戦いしか見ておらん」

そこで。

ポウサンが、迷いなく言い切った。

「あの二人の実力は、私が保証いたします」

空気が、少しだけ変わる。

ポウサンの声には、理論家としての冷静さがある。

だからこそ、その保証は重い。

「メギストラと同等の実力者ですよ」

フィオナの目が、わずかに細くなる。

「……メギストラか」

脳裏に蘇る。

かつての激戦。

フィオナ。

シエル。

セリアーナ。

三人がかりで。

辛勝。

圧倒的だった。

「それほどか……」

その一言で、理解する。

“前線は十分に強い”。

カイシンが、ゆっくり頷く。

「それなら、大丈夫そうじゃのう」

オーマが、全体を見渡す。

王として。

戦略家として。

「勇者」

「四天王二人」

「すでに前線にいる」

一拍。

「ならば」

「援軍部隊の編成と同時に」

「防衛線も構築する」

場が、一気に実務へ切り替わる。

カイシンも即座に応じる。

「そうじゃな」

「侵攻を前提に考えるべきじゃ」

ポウサンが、次々と整理する。

「では」

「最終防衛線には」

「オーマ様」

「カイシン様」

「そして私が入りましょう」

誰も異論はない。

王国最高戦力。

まさに“最後の壁”。

「第一防衛線には、魔族部隊を配置」

「侵攻速度を削ります」

さらに。

「騎士団とギルドからも援軍をお願いできますか?」

ガルドが、力強く頷く。

「任せておけ」

「冒険者を確保しておく」

その声には、ギルド長としての覚悟があった。

フィオナも、迷わず前に出る。

「承知した」

その瞳に、闘志が宿る。

「援軍には――」

一拍。

「私が行かせてもらうぞ」

その場が、静かに熱を帯びる。

騎士団長。

守護者。

そして、鍛え続ける戦士。

フィオナ自らが前線へ向かう。

それは、王国の本気そのものだった。

戦争が始まる。

だが。

単なる“力”ではない。

知略。

侵攻。

防衛。

連携。

筋肉だけでは終わらない。

だが。

その中心には、やはり“筋肉”がある。

オーマが、静かに立ち上がる。

「シューベット」

低く。

確かな敵意を込めて。

「好きにはさせぬ」

王国。

魔族。

騎士団。

ギルド。

全てが、一つになる。

迫る侵略。

迎え撃つ防衛。

そして。

最前線では。

勇者と、四天王たちが進む。

戦いは、より大きな局面へ。

筋肉が導く戦争は――

新たな段階へ突入していく。

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