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第24話 理と覚悟は筋肉を交差する

 魔王軍陣地――中央指揮陣。

 整然と並ぶ魔族たちの中、ひときわ静かな空間があった。

 そこに立つだけで、周囲の空気が自然と張り詰める。

 魔王オーマ。

 すでに戦支度は整っている。

 だがその視線は戦場ではなく、ただ一点を見据えていた。

 勇者。

 それ以外は、もはや眼中にない。

「ポウサン」

「は」

「指揮権を一任する」

 短い言葉。

 だが、それだけで全てが決まる。

「私は――勇者に集中する」

 迷いはない。

 それが、この戦の“核心”だと理解しているからだ。

「承知しました」

 ポウサンは一歩前へ出る。

 その瞬間、戦場の主導権が切り替わった。

「今回の戦における最優先事項は一つ」

 視線を巡らせる。

 そこにいるのは、魔王軍最高戦力。

 メギストラ。

 ゼルアーク。

「勇者以外の戦力を削ぐこと」

「魔王様は勇者との戦闘に専念される」

「よって、それ以外の戦力を戦場に残すのは非効率」

 合理。

 ただそれだけを追求した判断。

 メギストラが、わずかに首を傾ける。

「……私が護衛につかなくていいのか?」

 ポウサンは即答する。

「不要です」

「私などに貴重な戦力を割くわけにはいきません」

「予備隊に最低限の警戒を任せます。それで十分です」

 メギストラは、小さく息を吐く。

「……合理的だね。了解した」

 次に、ゼルアーク。

「……私は勇者と戦いたい」

 抑えきれない熱。

 ポウサンは、それを真正面から受け止める。

「なりません」

 一切の躊躇もなく。

「あなたの気持ちは理解しています」

 一拍。

「ですが――魔王軍のためです」

「どうか、従っていただきたい」

 静かな圧。

 ゼルアークは、しばらく沈黙した後。

「……分かった」

 短く答える。

 だが、その瞳の奥にある闘志は消えていない。

「各隊、配置につけ」

「――開戦する」

 魔王軍は、理によって動き出した。

■人間軍陣地

 一方――人間軍。

 こちらもまた、異様な緊張に包まれていた。

 敵は魔王軍。

 これまでの戦いとは、明らかに違う。

 フィオナが前に立つ。

「敵は強敵だ」

 誰も否定しない。

「よって、小隊単位での行動を徹底する」

「孤立するな」

「連携を切らすな」

 騎士団が頷き、冒険者たちもそれに続く。

 その中で、一つの小隊。

 フィオナ。

 シエル。

 セリアーナ。

 竹助。

 そして――

「遅れたね」

 軽い声と共に、影が降り立つ。

 ロゼッタ。

 その背後には、かつての盗賊団――今は山の自警団となった者たち。

 気配が違う。

 荒削りだった頃とは違い、実戦を積んだ“戦力”として完成している。

 シエルが、わずかに息を吐く。

「……来た」

 それだけで十分だった。

 さらに。

「ほっほっほ」

 場違いなほど穏やかな声。

 カイシン。

 白髪を揺らしながら、ゆっくりと前に出る。

「相手はこれまでにない強敵じゃぞ」

 その言葉に、誰もが緊張を強める。

 だが――

「だが、それでこそよい」

 その目は、笑っていない。

 完全に“戦う者”の目だった。

 少し離れた位置。

 ガルド。

 ザッコス。

 トロール王。

 それぞれ別の小隊に所属している。

 だが、距離は近い。

 視線が交わる。

 言葉はない。

 それでも分かる。

 “いつでも合流できる”

 戦場での連携が、すでに成立していた。

 静寂。

 シエルが、小さく言う。

「……死なないでよ」

 フィオナが答える。

「当然だ」

「全員で帰る」

 セリアーナが手を握る。

「大丈夫です……絶対に」

 震えはある。

 だが、それ以上に強い意思があった。

 竹助は、変わらず静かに立つ。

 そして。

「問題ない」

 一言。

「筋肉は――応える」

 セリアーナが即座にツッコむ。

「またそれですか!?」

 小さな笑いが生まれる。

 それでよかった。

 張り詰めていた空気が、少しだけ緩む。

 その時。

 角笛が鳴る。

 低く、長く。

 戦の合図。

 風が止まる。

 空気が張り詰める。

 誰もが、理解する。

 ――始まる。

 次の瞬間。

 世界が、動き出した。

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