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55 真琴さんの純潔を守りたいと思って居るんだよ

コッコッと硬質な足音をさせて、オレがやや大股で歩く。

鏡の様に磨かれた床に、オレの着ているメイド服のスカートの中が写って居る。

スカートの奥、フワフワのパニエの間から覗くピンク色の紐パンティが、何時もの様にハッキリクッキリと床に写って居た。

「いらっしゃいませ、ご主人様」

オレは嫋(たお)やかな営業スマイルで、テーブル席のお客様を迎える。

そう…今オレは、『Pメイド純喫茶』でバイト中だ。

この『Pメイド純喫茶』に来るお客様は、大抵の方がお店に入ったところから、ただひたすらに床に写るメイド達のパンティに気を取られていて、オレがお声がけして初めて顔を上げる人が殆(ほとん)どだ。

そしてオレの顔を見てその容姿に驚き、それから床に写って居るオレのパンティと見比べる。

それからお客様は、歓喜とも付かない緩んだ笑顔になったり、顔を紅くしてモジモジ仕出す人も居たりする。

その瞬間オレは、自分が今カワイイ女の子だと云う自己肯定感と自己満足的な快感を覚えるのだ。

思わずオレは、この話を読んでる読者様に向かって、カメラ目線のドヤ顔で言いたくなる。

「皆んな女の子に成るって良いよ、TSって最高だよ!」

とまぁ…そんなメタ的な冗談はさておき、今日も今日とてオレはメイド姿のウエイトレスの仕事に精を出して居るのだ。

オレの『Pメイド純喫茶』でのシフトは、週三日で夕方三時間だけと云う超時短なため、この店に来るお客様からはレアモンスター扱いされて居る。

常連のお客様はオレのシフトを把握されて居るが、新規様やたまに来るお客様からは、お店に来てオレが居たら超ラッキーと云う感じなのだ。

「あっ、今日はマコちゃんが居る日だ、ラッキー」

と云う感じで、若い男のお客様が店に入って来た。

「お~い皆んな、我が言って居たカワイイ娘が、今日はシフトに入ってるぞ」

店に入って来た若い男のお客様が、入口外に居るらしい後続に呼び掛けて居た。

「え~っ、噂で聞いて居たカワイイメイドさんが、居るんですかぁ~」

そう言って、ドヤドヤと六人程の若い男の人達が、店内に入って来た。

オレはその入って来たお客様を迎えるために、足早い入口に向かう。

「お帰りなさいませご主人様が…」

オレは、定例句のお迎え挨拶を言おうとして、絶句した。

その若い男達の中に健介が混ざって居たからだ。

健介もオレを見て一瞬驚いた様だが、直ぐにニヤリと笑った。

オレは営業スマイルを顔に貼り付けたまま、フリーズしてしまう。

健介以外のお客様は、最初オレの容姿やメイド姿を誉めそやして居たが、固まってしまったて居るオレを訝しる様に声をかけて来る。

「アレレどうしたの?」「メイドさんが固まってしまったよ…?」

オレの異変に気付いたフロアマネージャーの禊(みそぎ)さんが、急いでオレのサポートに入って来て、そのお客様方を座席に案内して行った。

健介は座席に案内されて居る間も、さも面白そうにニヤニヤしながら、オレを見ていた。

オレは厨房とカウンターの間にあるスタッフ用スペースに入って、動揺を押さえるために一息入れる事にする。

しばらくして禊(みそぎ)さんが、健介達を座席に案内した後直ぐオレの居るスタッフスペースに来た。

「小鳥遊さん大丈夫、お客様への対応が変だったけど…貴女らしく無かったわね?」

禊(みそぎ)さんがオレに声をかけてくれた。

「あ…すみません、その…お客様の一人が知り合いだったので、ちょっと驚いてしまって」

オレはなるべく平静を装いつつ答えるが。

「ふ~ん、そう…その知り合いの人って、貴女にとってイヤな人なのかしら」

禊さんが、スタッフスペースから店内を覗きつつ、聞いて来る。

「えっ、あっいえ、イヤと云う訳では…その、苦手と言うか…」

オレが口籠(ごも)りながら言うと。

「そう云うのをイヤな奴と云うのよ…まぁいいわ、未だ就業時間が三十分程残ってるけど、早上がりしてもイイわよ」

禊さんがそう言ってくれたので、オレは直ぐに帰り支度をして帰る事にした。

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それから健介は、オレのシフトの日に必ず『Pメイド純喫茶』にやって来る様になった。

どうやら恵美姉ぇから、オレがバイトに行く日を聞き出した様だった。

もちろん健介は『Pメイド純喫茶』に来てくれるお客様なので、初対面の時の経緯や俊達と引っ越し祝いを持って行った時の態度はあれど、接客はちゃんとしたのだが…。

兎に角オレに健介は、色々と絡んで来るのだった。

注文を取りに行くと、もっと足を開いて床に写ったパンティを良く見せろ、とか言ったり。

いっそスカートを捲くり上げて見せろとか、触らせろとか、パンティを脱いでノーパン喫茶にしろとか、些か傍若無人が過ぎたので、とうとう『Pメイド純喫茶』から出禁を食らったのだが。

そうすると今度は、健介はオレのバイト終わりに出待ちをして、オレに絡んで来る様になった。

オレに街で食事をしょうだの、何か欲しい物を買いに行こうだのと言って、オレを何処かに連れて行こうとするのだ。

一度などはオレの手を掴んで引っ張って行こうとしたので、健介の掴んで来た手を合気道の三か条に極めてやったのだが。

それからは、健介はオレに対してのボデイタッチを避ける様にはなったが、ウザ絡みは相変わらずにして来た。

正直オレは、義兄の弟だと云う健介が、何故こんなに絡んで来るのかが分から無かった。

  ∥ ∥ ∥ ∥ ∥ ∥ ∥ ∥ ∥ ∥ ∥ ∥

綺麗で大きな湖を望む岸辺に建つ高層ビルの前に、オレはちょっとよそ行きの桜色のワンピースにクリーム色のカーディガンを羽織って、立って居た。

その高層ビルの入口に綺羅びやかなショーウインドゥがあり、その中に頭からヴェールを被り、手にはブーケを持ち、惜しげも無くふんだんにレースと刺繍で彩られたハイウエストのウエディングドレスを纏って居るマネキンが飾られて居た。

どうやら、この高層ビル内に結婚式場があるらしく、その宣伝用らしい。

オレはそのウエディングドレスを纏ったマネキンに、何故か目を奪われてボーっと見て居た。

イヤこのマネキンだけじゃあ無い、最近オレはこう言う結婚や新婚生活を連想したり匂わせたりする文物が、やたらと気になり目に付くのだ。

どうもオレは、俊のお母さんのお嫁に来てくれる発言が、相当に気に掛かって居る様だ。

「マコちゃん、熱心にウエディングドレス何て見て、誰と結婚するつもりなの?」

突然に明里が、オレの後ろから抱き着いて来て、そう声をかけて来る。

「あっいや、べ…別にけ…けけ結婚何てしないケド」

オレが少しアタフタとして言うと。

「ん~なぁに、その慌て方…怪しいわね」

明里が訝る様にオレの顔を覗き込んで来る。

オレは敢えて明里と目を合わせ無い様に、外方を向く。

「えっマーちゃん、誰かと結婚するんですかぁ~」

同じ様にやって来た森谷千秋が、追い打ちをかける様にオレに言って来た。

「師匠…最近法律が変わって、十八歳に成らないと結婚は出来ないそうですよ」

千葉美波もやって来てそう言う。

「イヤァ、だから、オレは別に今は誰とも結婚何てしないよ!」

オレが、明里の抱きつきを振り解いて、そう言うと。

「ははっそうだよね、真琴は以前から男と恋愛や結婚何て出来そうにないって言って居たよね」

俊がやや複雑そうな表情をして、オレの側に来る。

「まぁ良いじゃあねぇ~、最近は男も女も結婚しないって言う人が多いと言うし、でもSEXはして少子化の解消はしないとなぁ〜」

遊馬もやって来て、混ぜっ返す様に言う。

今日はオレと明里に千秋に美波と、更に俊に遊馬までが、ある人物に呼び出されてこの高層ビルの前に集まった来たのだった。

オレ達はビルの中に入り、館内案内板を探す。

案内板はエレベーターホールにあり、それを見てオレ達は向かうべき所を確かめた。

安達原プロモーション…そう『Pメイド純喫茶』のオーナーの安達原の婆さんの会社だ。

安達原プロモーションがある階まで、オレ達はエレベーターで上がり。

エレベーターを降りると、正面に壁一面に安達原プロモーションと云うロゴのディスプレイが掲げられて居た。

硬質ガラスの扉を開けて中に入ると、小柄で可愛いらしい女の受付の人が居て、オレ達が来た事をインターホンで何処かに知らせ、それからオレ達を奥に案内してくれた。

奥の応接間らしき所で待つ様に言われ、オレ達は各々応接間のソファーに座ったのだが…直ぐにオレ達は居ても立ってもいられない気分になった。

ソファーは豪華でフカフカで、部屋のアチコチに高そうな美術品が置かれて居て、何より壁一面の大きな日本画が飾られて居て、それが問題だったのだ。

以前オレが絵のモデルになった事もある画鬼斉さんと言う日本画家の絵で…それは昔の“あぶな絵”と云うエロい絵を日本画として復刻させた物だった。

五組の男女の交接が、流麗な筆致と華麗な色彩で描かれて居るのだ。

日本画特有の様式化された絵とは言え、性器まで精密に描かれて居るので、些かオレは目のやり場に困った。

俊もオレと同じらしくモジモジとして天井を見てる。

遊馬は食い入る様に絵を見て、明里も物珍しそうに見て居た。

千秋と美波は、特に羞恥を覚えて居る様には見えず、特に気にして無い様だった。

何だかオレと俊だけが恥ずかしがって居るのが馬鹿らしく思えて来た時…応接間のドアが開き、オーナーの安達原の婆さんと、もう一人が入って来た。

そのもう一人の人物を見て、俊や遊馬と明里に千秋が驚き…特にオレは声を上げて名前を呼んだ。

「う…梅木響也!」

梅木家の総領息子はオレを見て、少し皮肉ぽい笑顔をして言った。

「小鳥遊真琴さん、久し振りだね…何時ぞやは失礼したね」

オレが次に言う言葉が見つからず、口をパクパクして居ると、俊がオレの前に庇う様に立つ。

応接間の中は緊張感で張り詰めたのだった。

「みんな落ち着きな、梅木のボンボンは今回は敵では無いよ」

安達原の婆さんがオレ達に声をかけて来る。

「そう…私は安達原清さんの言う通り、敵では無いよ、むしろ…真琴さんの純潔を守りたいと思って居るんだよ」

そう言って梅木響也は親しそうな笑顔をオレに向けて来た。

蛇足です。え~今回も続きますね、ちょっと私事(わたぐしごと)で身辺が少しゴタゴタして居るために、お話を書き進める時間が取れずに、また続かせる事になってしまいました。続き物は多くても前後編位に収める様にして居たのですが、今回は止むを得ず続かせます。次回でこの章の話を終わらせ様と思っています。

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