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46 スカート捲りは、漢の称号

フワリと…制服のスカートが舞い上がった。

そして、その向こうから小花を(あし)らった布に包まれた、(たわ)わなお尻が現れる。

「キヤッ!」

突然スカートが、風も無いのに捲り上がった事に驚いた女生徒は、後を振り返ると。

ランドセルを背負った、三人ほどの男子小学生の一団が走り去って行くのを見たのだった…。


春近いぽかぽかとした朝日を受けて、真琴は学校への登校中だった。

(桜は未だ未だだけど、梅の木の蕾はソロソロ大きくなって来てるかな)

バス停から校門までの道にある梅の木を、真琴は見てそう思った。

(後一月もしない内に卒業式が有って、上代静子さんが卒業するのか…未だ知り合って二月ちょっとだけど、何だか名残り惜しなぁ)

そんな事を道すがら考えて居ると。

(邪気を孕んだ気配がする!)

そう思って、一歩前に踏み出した足をグリンと内側に捻り、その勢いで素早く身体全体を回して捌きつつ、後を振り返ると。

直ぐ後に、小学校高学年らしき三人の男の子が居た。

「うわっ、目標十九号に見つかった、逃げろ」

三人の内、一際目を引く美少年の子が言うと、男の子達はバラバラに逃げて行ったのだった。

真琴は、あの男の子達は何だったのかと、訝しく思い首を傾げた。

********************

真琴が登校すると、教室の女子達が幾人か集まって、(かまびす)しかった。

「貴女も捲れたの!」「私も突然後から捲られたわよ」「私もよ…」「私は真横から…」

何やらクラスでも可愛いと評判の女子達が、集まって何かを言い合って居る様だった。

オレはその様子を見て、隣の席の森谷千秋に何事か聞いた。

「男子小学生が、スカートを捲りに襲って来るんですってぇ…マーちゃんは捲くられませんでしたか」

「スカート捲りぃ…そう言えば今日の登校中に三人の小学生らしいのが、オレの後に忍び寄って来てたなあ」

オレは、つい去っきの小学生達を思い出して、ちょっと呆れた様に言うと。

「やっぱりマコちゃんは狙われた様ね、何せそれなりに綺麗な娘や可愛い娘が、スカート捲りのターゲット見たいだからねえ」

明里が、いつの間にかオレの横に来て居て、そう言った。

「明里は捲られ…」

「先週中にもう捲られてますが、何か?」

オレは、明里も被害に遭ったのかと聞こうとしたら、少し憮然とした顔で明里は答えた。

「はあ…まあスカート捲り何て、小学高学年くらいの男の子がかかる麻疹(はしか)見たいな物何だけどね」

オレがヤレヤレと言った感じに言うと。

「その麻疹(はしか)とやらで、スカートを捲られて下着を衆目に曝される何て、女子としてははた迷惑以外の何物でも無いけどね」

明里はオレを睨んで言って来たので、オレは慌てて目を逸らす。

「そう言えば昔、私が小学生だった頃にもスカートを捲られた事があったわね…百人の女子のスカートを捲ると言って、それを実行して男の子達から”A、No.1“何て言われて居た男の子に…アレは誰だったかしらねぇ」

明里が、半眼で非難する様な視線をオレに向けながら、躙り寄って来て言う。

「あ…いや、その…アハハ」

オレは、まだ男の子だった頃の黒歴史を(あげつ)らわれて、些か焦って後退る。

(ああ…明里はオレ達と同じ宝望(ほうぼう)小学校だったんだよな。

だから小学六年の時にオレが、女子のスカート捲りを百人やると言って、同じクラスの女子や近隣の中学高校の女子までもターゲットにして、スカートを捲りまくった時の最初の被害者だったっけ。

あの後オレは、小学校の全男子から一目置かれる様になって、誰言うとも無く“A、No.1”と言われる様に成ったのだけど…。

もっとも小学校の全女子から顰蹙(ひんしゅく)をかって、小学校を卒業するまでオレは、全女子から無視されたっけなぁ…。

当時オレはもう明里が一番気になる女の子だったので、だから…いの一番にスカート捲りのターゲットにしたんだっけ…なぁ。

未だ未だオレはガキで、女の子に対する興味と憧れの思いをどう対処したら良いのかが分からず、暴走した挙句の結果何だよな…)

明里の半分呆れた様な冷たい視線に、オレは吹けない口笛を吹いて誤魔化そうとした。

********************

ある小学校の裏に、鎮守の杜に囲まれた小さな神社があった。

ソコの社の中で潜めた話声が聞こえる。

薄暗く広さも三畳も無い程の社の中で、三人ほどの小学生らしき男の子達が、顔を寄せ合って居たのだ。

その三人の中の、やや長髪で幼いながらも一際目立つ印象がする子がリーダーらしく、他の二人を見廻して言った。

「僕らの目標の達成率はどうだ?」

「昨日で99人達成だよ」

メガネをかけた男の子が、ノートを見ながら答えた。

「そうか、伝説の再来はもう少しで達成だな」

リーダーらしい子が、満足そうに言うと。

「だけど、最後の1人はどうすんだよ」

短髪で身体が大き目の男の子が言うと。

「目標19号を残すのみ何だけど…コレが中々に厄介何んだよなぁ〜」

メガネの男の子が言う。

「ああ~、19号かあ〜っ」

リーダーらしい子が言って。

「兎に角感が鋭くて、中々に隙が無いんだよな」

身体の大きい子が言った。

「まさに僕らを寄せ付け無い、鉄のスカートと云う感じだよなあ」

リーダーらしい子が、腕組みしながら呻く様に言う。

(あきら)くんはどう思う、“A、No.1”の伝説を復活させようと言い出したのは晶くん何だからさ」

身体の大きい子が、リーダーらしい子に向かって聞くと。

「わかってる、伝説の偉業まで後一人何だよな…だったらコレから三人で、毎日19号にアタックしょうと思う」

リーダーらしい子がそう言うと。

「僕らが小学校を卒業するまで、もう一週間ちょっとしか無いからな」

メガネをかけた子が、やや焦った様に言うと。

「大丈夫だよ、三人で掛れば出来るよ、ボクらが小学校を卒業する迄に、ボク達で“A、No.1”の偉業を再び達成させるんだ!」

晶くんと言われた子が、二人の男の子に檄を飛ばす様に言うと。

「「わかった、頑張ろう!」」

二人の男の子達も、その檄に応えて、気勢を上げる様に言った。

********************

春休みまで後一週間を余す頃から、オレのスカートを捲ろうとする、小学生らしい男の子が三人が現れた出した。

オレはバス通学なので、バスを降りたバス停からちょっと高台に有る学校までの、およそ五百メートル程の道路で狙われるのだが。

最初は、愚直に三人で正面からオレに突撃して来た。

三人はスカートを捲ろうとして突っ込んで来たのだが…オレは華麗にステップを踏んで、スカートの端に取り付こうとした三人の小学生男子を躱した。

その時、丁度オレの周りに居た他の登校中の生徒達が、オレの見事な躱しを見て歓声と拍手が起こったのだ。

次の日は、オレの後から三人が忍び寄って、スカートを捲ろうとして来るが。

スカートを捲くろうする意気込みの気配を、オレは敏感に察知したのだった。

そしてスカートに手が掛かる直前に、オレは身体を舞う様に一回転させて男の子達を躱すと、今回も周りから拍手が起こった。

それからその次の日、立木や道路脇の茂みに小学男子三人は隠れて居て、オレが通り過ぎ様とした時に突然左右から同時に襲って来たが。

オレは()かさず上に飛び上がって、三人同時攻撃を躱した。

左右から襲って来た小学男子達は、勢い余って三人とも正面衝突をして転げてしまった。

オレは転げた三人の横に、フワリと着地した。

すると、またまた周りから拍手が起こり…。

「おお~華麗なジャンプと着地、9·8点だな」

「惜しい、今回もスカートは捲られ無かったか…」

「小鳥遊真琴ちゃんのパンツが見られるまで、あの小学男子達には頑張って欲しい物だなぁ」

「チェッ、ボクは真琴ちゃんのパンツの色は、白だと賭けて居たのだけど、勝負は付か無かったなぁ」

等々と男子生徒達からの声が聴こえて来た。

(何だぁ…オレのパンツの色で、賭けでもしてやがるのかぁ)

オレは男子生徒達の声に、呆れて渋い顔になったのだった。

それからも小学男子三人は、オレのスカートを捲くろうとしてイロイロとやって来たのだが…。

オレはその(ことごと)くを全てを捌き(かわ)したのだった。

オレは伊達に、合気道や実戦古流柔術に中国武術を、もう何年も習って来た訳じゃあ無いからね、小学生三人くらい躱すのは難しくは無かった。

それに…オレも昔、スカート捲り百人を達成しょうとした時に、オレは女子にすっかり警戒される様になったので、スカートを捲るためにイロイロと手段を考えたのだった。

だから小学生男子三人が、オレに仕掛けて来る様な手段は、大体がかつてオレもやった事の有る事だったのだよな。

だからそうそうオレは、小学生男子共に後れは取られ無い自身があった。

********************

まだ朝靄が漂う早朝に、神社に三人が集まった。

「どうする…もう明日から春休みだよ」

メガネの男の子が言う。

「僕らの卒業式も二日後だし」

身体の大きな男の子も言うと。

「こう成ったら、明日一日に賭けて決闘形式で行こうと思う」

リーダーの子が、ランドセルから大きな紙を取り出して言った。

「決闘?」

「この果たし状をあの学校の校門に張って、決闘を申し込むんだ」

リーダーの子が取り出した紙を広げて見せる。

その紙には決闘を申し込む文章が書かれて居た。

「決闘何て、受けてくれるかなぁ」

メガネの男の子が心配そうに言うと。

「受けてくれ無ければ…それまでだけれど、でもあの19号の女の人は受けてくれる様な気がするんだ」

リーダーの子は、何かを思う様に言った。

「気がする?」

身体の大きな男の子が聞き返すと。

「うん…」

リーダーの子は頷いて言う。

「もう僕らには後が無いからな…やるだけやってみるか」

身体の大きな男の子は、リーダーの子のその様子を見て、彼も頷いて言った。

「そうだね、やって見よう」

メガネの男の子も頷いて言い。

「うん、ボクも覚悟を決めて…ボクが(おとこ)だって示すために…ヤルよ!」

リーダーの子は何かを決意したかの様に言った。

********************

オレが学校の校門に行くと、何か人集(ひとだか)りがして居た。

オレはその人集りの中を覗くと、塀に張り紙が貼り出されて居たのだ。

『目標19号の小鳥遊真琴さんへ、我ら“A、No.1”伝説復活同盟は、貴女に勝負を申し込みます。

かつて近隣の百人の女の子のスカートを捲って、“A、No.1”と言う名を轟かせ伝説となった(おとこ)の中の(おとこ)の称号を復活させる事を、我らは有志一同は目指しています。

貴女はその伝説を復活させる最後の一人なのです。

故に貴女に明日、野洲川の河原での勝負を、求めます。

貴女は、きっとこの決闘を受けてくれると、信じていますから。

宝望小学校有志一同より』


オレは、校門に張り出された紙を見て、言葉を失った。

「あらあら~伝説の称号ですって、どうします…かつての“A、No.1”を名乗ったスカート捲りの名人さんは」

明里がオレの横に来て、揶揄(やゆ)する様に言って来る。

オレは、苦虫を噛み潰したよう顔で、明里を見た。

********************

「賭け率はどうなって居る?」

「今の所…スカートが捲られる、捲られ無いは…七対十で捲られ無いが優勢だね」

「それで、捲られた時のパンツの色の予想はどうなんだ?」

「白が二でピンクが三、青が四でシマパンも四…花柄が五で…キャラプリントが六と黒が七と言ったオッズだね……後、大穴でノーパンと言うのがあるなあ、賭け率十倍だぁ」

「ノーパンが大穴かぁ、でも希望を込めてそれに賭けようか」

ザワザワと、野洲川の土手に集まったギャラリー達が、オレのパンツに付いて話して居るのが聴こえて来る。

大半がオレの学校の男子達だけど、何処から聞きつけて来たのか…他校の男子達も混ざって居る様だ。

オレは動き易い様に髪をポニテにして、何時もと同じ制服姿で河原に立った。

但し今日穿いてるパンツは、今日のために気合いの入った勝負パンツを穿いてるのだけど…スカートを捲くられて衆目に曝す気は無いので、折角気合いの入った勝負パンツが誰にも知られ無い事、がちょっと残念に思ったのだった。

大体こんな、スカートを捲くるか捲くられるかの決闘何てのに、オレが付き合う義理は無いのだけど。

ここ数日、オレのスカートを捲くりに来た小学男子達…特にやや長髪の美少年な男の子は、思春期DT男子の邪なスケベ心でスカートを捲くに来てる気がしないのだ。

その子は、若いオスのリビドーが暴走した様な感じは無くて、もっと切実な何かによって並々ならぬ気迫と決意で、オレのスカートを捲りに迫って来て居る様に思えるのだった。

それがどうもオレの心に引っ掛かって居て、何故かオレはこの決闘を受ける気になったのだった。

程なく小学男子二人がやって来た。

「アレ?何時も三人だっただろう、あのちょっと長髪の可愛い奴はどうしたんだ」

オレが二人しか居無い事を聞くと。

「アイツは今秘密兵器の準備中何だよ、後から来るから先に決闘を始めたようよ」

小学生にしては大柄な男の子がそう言った。

「ふ~ん、オレ…いや私は構わ無いわよ、早くこんな茶番はおしまいにしたいのよね、それでどう言うルールで勝敗を決めるのかな?」

オレが大柄な男の子に聞くと。

「コレから三十分、兎に角ボク達は貴女のスカートを捲る様に仕掛けますから、それらを全て躱されたらボク達の負け…ボク達がスカートを捲って貴女のパンツが曝されたら貴女の負けです」

メガネをかけた男の子が答えた。

「ところで、あなた達が勝ったら“A、No.1”とかの伝説の称号を名乗るのでしょう、それなら私が勝った時…何が私のメリットになるのかしらね」

オレがそう言うと、男の子二人は顔を見合わせて考え始めた。

「あら、決めて無かったの…それじゃ私には何のメリットも無いから、決闘何て止めて帰ろうかしら」

オレがそう言うと。

「わかった!ボク達が貴女の子分になるよ、使いパシリでも何でも貴女の言う事を訊く様になるから!」

メガネの男の子が焦った様に答えた。

「え~っ私は子分何て要らないわよ」

オレがそう言うと。

「じ…じゃあどうすれば」

メガネの男の子が更に焦った様に答えた。

「そうねえ、それじゃ各々に一つ私の言う命令を聞いてもらおうかしら」

オレとしては、勝った時の報酬何てどうでも良かったのだけど、ソコはまあそお言う事にしとこうと思ったのだった。

「わ…わかった、負けたら貴女の命令を一つ各々が聞くよ」

メガネの男の子が頷いて言う。

「それじゃソロソロ始めたましょうか」

そう言って、大柄な男の子がポケットから百円玉を取り出して、空中に放り投げた。

蛇足です。

本当は続き物にするつもりは無かったのですが、当初思って居たより長くなってしまったので、止むお得ずに後半を次回に回す事にしました。

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