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44 男親としては、娘の中に踏み込んではいけ無い所や、理解出来無い所もあるだろう

え〜また蛇足です。

今回も時々やる原点回帰の回で、女子高生のちょっぴりHな日常話では無く、TS物だと云う事を思い出すための回でした。

「お~い真琴、準備出来たか?」

私がリビングから、娘の真琴の部屋に呼びかけると。

「うん、いま行くよ」

そう言ってしばらくしてから、部屋からセーラー服を着た中学生くらいの娘が出て来た。

「ど、どうかな…オレちゃんと女の子に見える?」

真琴は恥ずかしそうにセーラー服のスカーフを触ったり、プリーツスカートの端を持ってちょっとヒラヒラさせたりして、聞いて来た。

その姿はまさに…子供から女性に変わろうとする、思春期真っ只中の女の子そのものであり…私と出逢った頃の、妻の面影を何処と無く残す少女の姿、であった。

私は、かつての面影の幻視に、一瞬目眩を覚えて複雑な感慨が脳裏に去来する。

「も…もちろん、可愛い女子中学生に見えるよ」

私は何とか笑ってそう答えると。

私の横に居た長女の恵美は、頷き笑って右手をサムズアップした。

********************

私は小鳥遊裕二と言う、四十代後半に差し掛かったごく普通の中年商社マンだ。

妻を十数年前に亡くして、二十二歳の娘と十三歳の息子との三人家族で東京近郊の都市立川で暮らして居た。

ある夜、残業中だった私の所に息子の(まこと)が、原因不明の意識不明状態になって倒れて、近くの病院の集中治療室(アイシーユー)に担ぎ込まれたと姉の恵美から電話で知らされて、私は急いで病院に駆けつけた。

息子の(まこと)を診てくれた医師は、原因不明だとしか言ってくれず、何やらひどく困惑して焦って居る様にも見えた。

面会謝絶のため、集中治療室の窓越しに(まこと)を見舞うと、ビニールカーテンの中でいろんなチューブと検査機器のケーブルに繋がれて昏々と眠って居る様な息子が居たのだ。

何故こんな事が起こったのか、訳か分からず私は、姉の恵美と呆然として息子を見守った。

しばらくして、息子が入院して居る地方の総合病院よりも、専門的な治療が出来る大きな大学病院に(まこと)を転院させる事になった。

それに(ともな)い仕事が忙しくて、常時息子に付いて面倒を見られ無い私に代わって、大学を出て就職をして居た、姉の恵美が仕事を辞めて(まこと)に付きっきりで、看病してくれる事になった。

息子が転院した大学病院は、何故か息子を病院の奥の隔離病棟に入れて、秘密裏に治療をする様な体制を取ったのだ。

その不自然で物々しい事態に私は困惑を極め、担当医師に説明を求めたが、上からの指示と言う一点張りで明確な説明は無かったのだ。

私は、(ようや)く息子がかなり異常な状態である事だけは理解した。

それから息子の病室には、いろんな医者や教授に医学博士等の肩書を持つ人達が…中にはどう言う訳か、物理学や天文学の権威と言われて居る様な人迄もが、引っ切り無しにやって来ては息子を診察したり検査したりした…しかし結局は皆首を振るばかりだった。

そして私は、担当医師から思いもかけ無い事を説明れる。

「息子さんの体内で今…医学的に前代未聞の事が起こって居るのです、内臓や骨格等が変化して身体全体が変体しょうとして居るのですよ」

「内臓や骨格が変化⁉」

私は、言われた内容に困惑して、呆然とする。

「はい…しかしこんなにも激的に体内構造が変化して居るのに、何故か呼吸や脈拍等は安定して居るのです、ですから当面は生命は大丈夫では無いかと思われますが…」

生命は大丈夫と言う医師の言葉に、私は少し安堵する。

「ただちょっと…このまま身体の変化が続くと、お父様には覚悟していただく事があって…何と言うか息子さんは、何故か男性から女性に身体が変化して行って居るのですよ」

「は…はいぃ⁉」

私は医師の言った事が理解出来ず、素頓狂な声を出した。

********************

けっきょく息子の(まこと)の意識不明は二カ月近く続き、ある日就寝から目覚める様に意識不明から目覚めた。

再び姉から連絡を受けて、私が病院に行くと…病室は大騒ぎだった。

(まこと)は目覚めて直ぐに自分の身体の変化…男性から女性変わっている事に気付き…パニックになって看護師さんを押し退けて、病室から飛び出したらしいのだ。

訳も分からず(まこと)は闇雲に病院の廊下を走って居る時に、突然股間から出血が始まり…女としての生理が始まった事に(まこと)の頭は、完全にオーバーフローを起こして、卒倒してしまったらしいのだった。

病室に連れ戻され気絶から目覚めた後、(まこと)は泣いたり喚いたりひどく落ち込んで黙り込んだりした…そして(まこと)が一応の精神的な平静を取り戻すのに、一週間ほどかかったのだ。

私が(まこと)の見舞いに行く度に、(まこと)は笑っては居たが、どこか寂し気な陰があって無理して居るのが分かった。

私はその気丈に振る舞う(まこと)の姿に、ひどく不安を覚えたのだが。

案の定…(まこと)が病院内で事故に会いそうになった時、自ら身を守ろうとせずに死にかけたと、姉の恵美からの報告で知った。

さも有りなん…恵美が言うには、(まこと)は未だ自分の身体の変化を受け入れられず悶々として居るのに、周りの医師達はまるで実験動物の様に(まこと)の身体…特に女性へと変化した部位…を検査したり(いじ)り回したりするのだ。

そのため(まこと)はすっかり落ち込んで、生きる気力と言うか生きて行く意味を見失ってしまって居ると姉の恵美が教えてくれた。

私は何とか(まこと)に生きて行く意味を持ってもらおうと、亡くなった妻が(まこと)に遺した手紙を見せる事にした。

(まこと)の母親は、病に侵されながら妊娠中の我が子に悪影響が出るのを恐れ、治療を先延ばしにして(まこと)を出産するが、その時には病は手遅れになって居たのだった。

妻は余命幾ばくも無い事を悟り、(まこと)を残して逝く事を無念に思って手紙を書いたのだ、そして(まこと)が大きくなってから渡してほしいと言い遺したのだった。

私は妻が…(まこと)の母親が遺した手紙を読んで生きる意味を見出す事を祈って息子に渡した。

手紙を渡して数日後、(まこと)からは以前の様な自暴自棄な雰囲気は鳴りを潜め、何かを深く考えて居る様だった…そしてある日に(まこと)は私と姉の恵美に言ったのだ。

「オレは自分が女の子になった事を、受け入れる努力をするよ、そして何時か母さんがオレに出来無かった我が子に母乳を与え慈しむ事を、オレは出来る様に成るよ」

私は(まこと)の言う“我が子に母乳を与え慈しむ様に成る”部分は些か意味が分から無かったが、兎に角生きる意味と力を取り戻してくれた事を喜んだ。

********************

息子…いや娘となった“真琴”は無事に病院を退院した。

病院側は真琴(まこと)の退院をひどく渋ったが、医学的には健康体なので強引に退院した…月に一度は病院に来て、検査をすると云う約束をしてだったが。

しかし退院してからが大変だった…名前と戸籍の書き換えに役所に行く事になり、膨大な書類を用意して、コレまた膨大な書類に署名捺印をする事になった。

役所の方もイロイロと便宜や特別措置等を(はか)ってくれて、晴れて真琴は私の実の娘と云う事に戸籍上でもなった。

それから真琴は、中学二年進級寸前で入院してしまったので、中二に進級するには学力検査が必要になったが…元々真琴は学力は優秀だった上に、姉の恵美が妹となった真琴をいたく可愛いがって勉強を見てくれたので、難なく合格する事が出来た。

そして今日、晴れ真琴は女子中学生として、以前の(まこと)を知らない別の中学校に転校生として登校する事になった。

********************

「父さん、お待たせ〜っ」

そう言って真琴が車の助手席に座って来た。

途端にフワリと若い娘の香りが、車内に漂う。

以前真琴が真だった頃にも車の助手席に乗せた車はあったが、その時はそんな匂いはしなかったのだが…シャンプーや石鹸の匂いとも違う、もっと(たお)やかな感じのする何処か懐かしく感じる香りだった。

(あっ、そう言えば恵美も今の真琴位の歳の時に、こう云う匂いをさせて居たなぁ…今は香水や化粧品の匂いで感じ無くなって居るけど)

私はそう思い当たって、真琴から若い娘の匂いがする事に、今更ながらにちょっと複雑な気持ちになった。

(もう隣に座って居るのは、息子では無く娘なんだなあ…)

それから私は車を走らせ、真琴が転校する中学校に送って行った。

学校で私は、真琴の事情を事前に話して、了解を取って居る校長や教頭先生に挨拶をして、それからコッソリと真琴の転入したクラスを覗きに行った。

真琴は、流石に緊張した面持ちで教室の机に座って居る様だった。

私の娘が…新しい学校の新しいクラスで、友達を作って楽しく過ごせる事を祈って、私は学校を後にした。

********************

真琴は学校に復帰してから、日々楽しそうにして居る様だ。

姉の恵美に依ると、真琴は最初自分が女子として女子達の中に入って行けるか、心配してしまって何と無く身構えてしまい、そのため上手くクラスに馴染め無かったそうなんだが。

ある日学校で、急に生理が来てしまったらしく、その時女子達がみんなで団結して真琴を助けてくれたので、それで漸く女子達と仲良くなれて親しくする友達も出来たそうだ。

確かに以前男の子だった真琴が、女の子ばかりのグループに入って行くのは、中々に骨の折れる事なんだろうなと思う。

真琴は、学校の事を逐一姉の恵美に話して居るらしく、恵美経由で真琴の学校での事やそれ以外の事を、イロイロと私は聞かせてもらった。

何でも、ウッカリ男子トイレに入ってしまった事や、大きく股を開いてイスに座り、親しくなった女友達に指摘されたりしたと、イロイロやらかして居る様だ。

他にも…クラス内の男子グループと女子グループでイザコザがあった時、カッとなって女子を殴ろうとした男子を、真琴が合気道の技で止めたそうで、以来真琴は女の子は勿論男の子にもモテまくってるそうだとか聞かされた。

(そう言えば小学校低学年の頃から、真には合気道を習わせて居たのだったなぁ…中々のやんちゃ坊主だった真に、礼節を身に付けさせるために行かせたんだったな)

それから女友達と街に遊びに行くと、中々目を引く容姿をして居る真琴は、良く男子のナンパに会うのだそう何だが…自分が男と付き合う何て、未だ考えられ無いから断るのだけど…中々にしつこく付き纏われて閉口したと言って居たそうな。

真琴に付き纏うナンパ男に、私は憤慨すると同時に複雑な気持ちにもなったのだった…。

 ✕  ✕  ✕  ✕  ✕  ✕  ✕

恵美には最近彼氏が出来たらしく、よく外出や外泊をする様になった。

もう恵美も二十二歳の大人の女なのだから、当然と言えば当然なのだが…恵美も私の可愛い娘なので、心配と言うか気が気で無いと言うか…。

近い内に恵美は、何処かの男と結婚して、私の所から出て行くのだろうなと思う。

そして…息子から娘になった真琴も、いずれはそう云う事になるのだろうかと思った。

恵美がちょくちょく家を空ける様になった事で、そのため私が仕事から帰ると、真琴と家で二人きりになる事が多くなった。

以前は私と息子の二人だったので、何の気兼ねも無く過ごせたのだが…。

我が子とは言え、異性となった真琴と私との二人きりと云うのは、何だかちょっと構えてしまって、居た堪れ無かったりするのだ。

その上、こう云ったちょっとした事故も、起こったりするのだが。

仕事から帰って汗だくだったので、シャワーを浴びようと浴室のドアを開けると…真琴が居た、しかも真っ裸で…。

私は慌てて浴室のドアを閉めて出た。

「わぁっ、ごめん真琴!」

私はドアの外から真琴に謝ったが、非難の声が中から聴こえて来るだろうと待ち構えて居ると。

「あぁ~、うん、別に大丈夫だよ」

真琴の何でも無いかの様な声が聞こえた。

私は正直ホッとして拍子抜けたが、同時にそれで良いのかと疑問に思った。

そしてリビングに行ってソファーに座って落ち着くと、何だか一瞬ながら見えた娘の裸体が、何故か脳裏に焼き付いて居てフラッシュバックして来る。

濡れた髪をタオルで拭いつつ、振り返った真琴の身体は…明らかに膨らんで盛り上がり始めた胸に、その頂上にはポチリと存在を主張する突起があった。

背中や腰周りは、もう男のものでは無いなだらかな曲線と丸味を示し艶っぽさを醸し出して居た。

そして何よりスラッと伸びながら、張りと弾力を感じ取れる足だった。

私は異性となった我が子の裸を見た事と、それが脳裏から離れ無い事に、猛烈な罪悪感を覚えかつ強烈な自己嫌悪に見舞われた。

リビングのソファーで、私がそんな風に悶々と悩んで居ると、浴室のドアが開いて真琴が出て来た。

「父さん、浴室開いたよーっ」

真琴はそう言って浴室からキャミソールとパンツのみの姿で出て来た。

そして私の向かいの椅子、にだらし無く股を開いて座った。

「父さん、未だ暑い日が続くよね、オレも今日は汗だくになったので、シャワーを浴びてたんだよ」

そう言いながら、手団扇(てうちわ)でキャミソールの胸元を開いて扇いで居る。

そのためブラジャーをして無い素の胸元が、見えてしまって居た。

父親とは言え、私を気にしない無遠慮な態度と、だらし無い格好に耐えられず、真琴を怒鳴ってしまった。

「真琴ぉ!女の子何だからそんな端た無い格好で居るな、ちゃんと服を着なさい‼」

私の剣幕に驚いた真琴は、直ぐに部屋着に着替えて来たのだが…。

真琴は、普段自分が女の子だと云う事を自覚して戒めるために、なるべく女の子っぽい服や下着を着る様にして居ると言って居るが。

リビングを下着でうろつく何て、女の子としての自覚や戒め等と云う以前の事で、まったく何おか言わんやである。

(まぁ未だ…男の子だった時の意識が抜け切れて居無いのだろうな…)

********************

ある日姉の恵美が、私と真琴に話があると言って来て、その話を聞くと。

「私…妊娠しちゃったの、三ヶ月だって」

恵美の爆弾発言で、私は勿論(もちろん)真琴もひっくり返るほど驚いた。

相手は真琴が入院してる時に知り合った医者で、もう向こうの親御さんとも会って居て結婚の約束もしてるそうだ。

恵美は子供の頃から、何でも率先してテキパキとやる性格で、非常に手のかからない子供だったのだけど。

その手のかから無さが、私と妻の間では物足りないと言い合ったものだったのだけど。

それからは恵美の結婚に向けて、私達は怒涛のスケジュールをこなす事になったが、娘の幸せのための忙しさ(など)何ほどの事も無かったのだ。

しかし、幸不幸は(あざな)える縄の如しと故事で言われる通り、だったのだ…。

警察から電話があった、真琴が夜の公園で変質者に襲われそうになった、と言う知らせだった。

私は取る物も取り敢えず、真琴が保護されて居る警察署に私と恵美で駆け付けた。

応接室の椅子に、婦警さんに寄り添われて、小さく俯いて居る真琴を見た。

私が真琴の側に行くと、真琴は私を見て大粒の涙を流して泣き出したのだ。

私は思わず、泣く真琴を慰めようと手を伸ばすと、真琴はビクッと身体を震わせ、手から逃げる様に怯え身を(ちじ)こませた。

代わりに恵美が真琴を抱き寄せると、真琴は抵抗せずに身を任せたのだった。

警察からの話によると、文化祭の準備で遅くなった女の子達を、真琴はボデイガードの様な事をして送って行った帰りに、人気の無い公園内で変質者に遭遇したのだったそうな。

何でもその変質者は、全裸で勃起した男の物を若い婦女子に見せつけて、怯える様を見て愉しむ奴だそうで、実際の暴行には及ば無い奴らしいのだが。

最近この街に出没して被害届が出ていた奴で、そのため近隣の学校や町内会に、注意を呼び掛けて警戒して居た所だったのだそうだ。

兎に角に真琴を私達は家に連れ帰った、そして家に帰った後で真琴は高熱を出して寝込んでしまった。

医者の診断は心因性の発熱で、PTSDの疑いがあると云う事だった。

楽しみにして居たらしい文化祭さえも休み、学校に復帰出来る様になるにも二週間ほどかかったのだ。

真琴は以前と変わら無い様に、学校に行ったり日々を過ごして居る様だったが。

時々真琴は、男性に対して過剰とも思える距離を取る様になり、そして何かの折にひどく内省して考え込む様になった。

それから突然、往復三時間以上も掛かる場所に居る人の所に通い出して、武術の修行を始めたりした。

あの変質者に襲われそうになった事件は、思いの外真琴に影響を与えたらしい。

これが息子だったら、男同士として話し合って力にも成れただろうかと、思わずに居られ無かった。

だけど真琴は、女の子になってしまったのだ…男親としては、娘の中の踏み込んでは行け無い所や、理解出来無い所もあるだろう…。

私はひどくもどかしい思いをして、やはり同性の理解者が必要だと思い、親戚に女性としての立ち振舞やマナーを教え、かつカウンセラーとしても優秀な人が居る事を思い出して…彼女に真琴を託して見る事にした。

一ヶ月ほど彼女の所に真琴を預かってもらうと、真琴は見違えるほどに女性らしい立ち振舞をする様になり、時々見せて居た男性に対する過剰な距離の取り方は影を潜めた様だった。

ただ…時折、軍人の様な言動や立ち振舞をする事があるのだが…気のせいだろうか。

********************

真琴が中学三年に上がる頃、恵美は女の子を出産した。

真琴は、その生まれた姪に当る赤ん坊を可愛がり、恵美が赤ん坊に授乳して居る所等は殊の他熱心に眺めて居た。

それは憧憬に満ちた表情で、自分もあの様にしたいと言って居る様だった。

(そう言えば、真琴が女の子になった事に悩んで居た頃、亡き母親の手紙を読ませたところ、自分の境遇を受け入れて…母親が出来無かった我が子に母乳を与え慈しむ事をしたい…と言って居たな)

私はそんな事を思い出し、真摯に母子の授乳姿を見て居る真琴を見て、ちょっと微笑んだ。

********************

真琴は中学校を卒業して、例の女性のマナーやカウンセリングをして居る人の推薦で、ミッション系の女子高校に進学した。

真琴は一年生ながら、先輩方にも一目置かれる存在となったそうだ。

そしてその頃、姉の恵美が赤ん坊の父親と正式に結婚して、旦那の故郷に引っ越しする事になった。

ソコは以前、私や真琴が未だ男の子だった時に、中学一年生くらいまで住んで居た所で、風光明媚な田舎だったのだが…。

そこに七階建てのマンションが建設されて、最上階を占有するペントハウスに恵美の夫婦は入居するらしい。

別れて行く姉を、寂し気に見送りに来た真琴に、恵美が言った。

「私達夫婦が、住むには広すぎるほどのマンションだから部屋は余って居るのよ、だから夏休みにでも懐かしい故郷を満喫するために、休み中ずっと来ると良いわよ」

そう言われて、真琴は頷いた。

「うん、行くよ…中学生の頃の友達が今どうしてるか知りたいし、女の子になったオレを見てアイツ等がどんな反応をするかも見て見たいからねぇ…」

などと真琴は、イタズラぽく笑ってそう言った。

********************

しばらくして、真琴の学校が夏休みに入る直前に、私に転勤の辞令が出た。

今度はヨーロッパの支社の要職に私が就く事になったのだ。

実際にヨーロッパに行くのは、9月になってからなのだが…真琴は私に付いてヨーロッパに行く事に迷いがあるらしい。

それでも引っ越しの準備をして居た真琴が、ある日私に言って来た。

「オレは夏休み中、恵美姉ぇの所に行って考えて来る、ヨーロッパに行くのは帰って来てから答えを出すよ。」

そう言って真琴は…学校の一学期の終業式にも出ずに、姉の住む故郷に行ってしまったのだ。

そして夏休みが終わった時…真琴は姉の家に居候して故郷の高校に転校する旨を宣言したのだった。

こうして私は真琴を日本に置いて、ヨーロッパに一人旅立つ事になったのだ。

女の子の子供は、何時か手放さなければ行け無い事は分かって居たが、些か唐突だったので、私としては大変複雑な思いで日本を離れたのだった。

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