43 愉悦に綻んだ女の顔は、オレにそっくりだった
「えっ、画鬼斉ですか?」
上代静子さんはちょっと驚いた顔になり、口に運ぼうとして居た卵焼きを、弁当箱に戻した。
「そう…今度オレは、その画鬼斉さんと言う画家さんの、モデルをする事になったんだよ」
最近、上級生で図書委員の上代静子さんが参加し易い様に、お昼休みに図書室の控え室でオレ達が集まって、お弁当を食べながら駄弁り合う“お弁当集会”をやる様になって居た。
そこでオレは明里や千秋や美波に上代静子さん達に、しばらく授業が終わったら、オレは早く帰って画家のモデルをしなければいけないので、放課後は付き合え無いと説明すると。
「へぇ~、マコちゃん、絵のモデル何てするんだ」
「マーちゃんは、中々に美人さんですからね」
「師匠が絵のモデルをする何て、スゴイです」
と…まあ、明里や千秋や美波等は、一応に驚き感心してくれたが。
「全裸で縛られたり、男と性交するところを描かれるモデルを、するのですか?」
上代静子さんが爆弾をぶっ込んで来た。
「全裸で縛られて性交、マコちゃんってまだ処女だったでしょう⁉」
明里は驚いて心配そうに言い。
「マーちゃん、本当なのぉ〜っ」
千秋も驚き困惑した様子で聞いて来て。
「し、し、師匠ぉ〜っ、大丈夫なのですかぁ」
美波に至っては驚いて、オタオタと狼狽えて居た。
そのために忽ち駄弁り場は姦しくなり、オレは明里と千秋と美波に詰め寄られる事になる。
「いや、誤解だから…モデルと言ってもそんな事しないから!」
オレは慌てて弁明した。
「でも…画鬼斉さんと云えば、日本画壇の異端児で、あぶな絵と言われる往年の春画を復刻させた画家として、好事家の間では有名ですよね」
しかしそう言って上代静子さんは、更に追い打ちを掛けて来る。
それを聞いた明里達三人に、オレがヤイのヤイのと言われて居る間に、上代静子さんは図書室の書架から大きな画集を持って来て、オレ達の前に広げて見せた。
その画集に収められた絵は…絢爛豪華で華麗流麗ながら、同時に艷やかに魅了する様な男女の交合いの姿が描かれて居た。
しかも交接する男女の性器も、余す処無く克明に描かれて居たのだ。
オレは春画と云うと、情交を生々しくイヤらしく描いたエロ絵だと思って居たが…画集に載って居る絵は、情動を悪戯に煽る様なそんな物とは一線を画する、男女の交合いを尊く魅了される様に画いて居る物だった。
その絵を見た瞬間、皆は黙って仕舞いそして次々と開かれる画集のページ毎に表れる華麗で絢爛な春画の世界に、感嘆と溜息を漏らしたのだった。
「はあ〜っスゴイですぅ、イヤらしい絵のはずなのにイヤらしく無いですぅ」
千秋が溜息を吐きながら言う。
「こんなにSEXしてるところを、綺麗で生き生きと描いてもらえるなら…私のSEXしてるところで良かったら、幾らでもモデルにして描いてもらいたいわ」
明里も感嘆しつつ言って。
「……♡♡#&%?……」
美波は意味不明の言葉を呟いた。
「画鬼斉さんの絵は、題材的に公に展示したりは出来ませんが、画壇の目の肥えた専門家や好事家の間では、非常に評価が高く作品は大変な高額で売り買いされて居るそうですよ」
上代静子さんも画集の絵を見ながら、やや目元を上気させてそう言った。
オレは安達原の爺さんに、男と絡みのあるヌードモデルだと聞いては居たが…こんな美麗で華麗な絵のモデルになるとは、知らなかったのだ。
(オレもこんな風に描かれるのなら…ヌードモデルも…良いかもな…SEXはしないけど)
オレはそう思って、あの画鬼斉さんのヌードモデルになる事を肯定的に思える様になった。
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次の日曜日、モデル初日を迎えてオレは画鬼斉さんの自宅に向った。
画鬼斉さんの自宅は、如何にも日本画の画家の家と言う感じの所だった。
長い土塀が続き、重厚で年季が入ったな長屋門がある事から、元この辺りの庄屋の屋敷だったのだろうと思った。
門前にインターホンがあったので、モデルに来たと家人の人に伝えると、門横の扉が開き大学生位の朴訥とした男の人が出て来て、門内に入れてもらった。
中は広い日本庭園に大きく重厚な母屋が有り、そのまま母屋の裏にある離れに案内される。
その離れだけで建売住宅の二〜三倍はある建物で、中はほぼアトリエとなっていた。
アトリエの隣にある、控え室と思しき部屋に入ると。
「衣服を脱いでガウンを羽織ってアトリエに行くように、アトリエで先生がもう待ってらっしゃるから」
朴訥とした男の人はそう言うと、控え室から出て行った。
この部屋には、隅に数個の衣装籠らしい物と姿見があり、衣紋掛けにハンガーでバスローブが掛けてあるだけのガランとした部屋に、オレは一人残される。
オレは一つ息を吐き、衣服を脱ぎ出した。
全裸にガウンを羽織っただけで、オレは隣のアトリエに入る。
中は座敷の様な作りのアトリエで、オレは出入り口を入った所から中を見ると、部屋隅の作業机の横にあの日『Pメイド純喫茶』に居た眼光の鋭い老境に入ったばかりの人物“画鬼斉”さんが正座して、待って居た。
オレは慌てて挨拶をする。
「あ…あの、今日からモデルをいたします小鳥遊真琴と言います、よろしくお願いします」
オレは深く頭を下げて言う。
「う…む…コチラこそ、モデルを引き受けてもらって感謝する、私は画鬼斉と名乗っている画家だ」
やや嗄れているが、落ち着いたトーンのある渋い声でそう言うと、軽く頭を下げて挨拶をされた。
改めて良く見ると画鬼斉さんは、年齢は五十代後半か六十代前半と行った頃で、もみあげに白髪が混じっている位で頭髪はまだまだ黒ぐろとして居る。
四角く巌の様な顔の中に、一際鋭く光る双眸があり、通った鼻筋に薄い唇と頬に深いほうれい線が刻まれて居た。
藍染の作務衣を着て、傍らにスケッチブックを置いて座ってオレを見て居る。
「それじゃ、さっそくだが…窓の前の敷物の上でガウンを脱いでもらおうか」
画鬼斉さんが、窓の方に顎を杓って言った。
オレは指示に従って、部屋の南方にある天井付近まである大きな窓の方に行く。
窓辺には外光が燦々と降っていて、真っ赤なビロードの様な敷物が敷かれて居た。
オレはその敷物の上に上がり、ガウンを脱いだ。
パサリと足元にガウンが落ちると、窓から射す小春日和の陽光に、オレの裸身が現れた。
緩らかに盛り上がって行く双丘の乳房に、ややツンと上を向いた乳首。
キュッと引き締まった腰周りに、緩やかに落ち窪んでいく臍がある腹部。
臍から大分下に僅かに淡い翳りとなって居る疎らな陰毛が萠え出っていて、両太腿の間に窄まって落ちていく女の割れ目を微かに隠して居た。
そんな普段は人目に触れる事の無い部分が、今は陽光に照らされて露わに成った。
オレは流石にちょっと恥ずかしくなり、手と腕で乳房と陰部を隠そうとすると。
「隠さない、そのままで!」
画鬼斉さんの叱咤が飛んで来た。
オレは下唇を噛み、顔を上気させて羞恥に耐えた。
画鬼斉さんはスケッチブックを持つと、オレの近くに来て猛烈な勢いで、スケッチブックにオレの裸身を描き出した。
画鬼斉さんは、老境に入った人とは思え無い俊敏な動きで、立ったり座ったり遠くに離れたり息が掛かるほど近寄って来たり、果てはオレの足の間に頭を入れて、真俯瞰から股間を見上げる様にして来た時は流石にオレは逃げ出した。
その後もオレに、身体を捻るポーズや片足を上げるポーズ等をする。
それから走ってる様なポーズに、四つん這いになって猫が伸びをしてる様なポーズ。
更に座って胡座をかくポーズに、体育座りのポーズ膝立ちのポーズ等などと、色々なポーズをさせられた。
最初こそオレは色んなポーズをさせられて、普段人目に見せる事の無い乳房の乳首や股間の秘所が、曝され強調される事に、いちいち羞恥を感じて居たが…。
画鬼斉さんの視線には情欲的な邪さがまるで無く、ただ只管にオレの裸身を紙に写し取る事だけに専念して居たのだ。
それでオレは、やがて恥ずかしさをあまり感じ無くなり、言われた通りのポーズを無心にやる様になって行った。
二十分ポーズをやって五分休みと云うローテーションで、画鬼斉さんのスケッチのモデル仕事は進められた。
五分の休みの時に、あの朴訥とした男の人がコーヒーや温かいココア等を持って来てくれて、オレは一息付いたりした。
初日のその日は結局三時間近く画鬼斉さんのモデルをして、次の日から放課後…Pメイドのバイトがある日意外…一時間半から二時間ほどモデルをする事になった。
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「今日はこのランジェリーを着けて、モデルをして欲しいそうだ」
次のモデルの日、控え室でランジェリーの入った衣装籠を渡され、朴訥な男の人にそう言われた。
衣装籠に入って居たランジェリーにオレは着替えると…それは生地が透けて居る白い前開きのキャミソールタイプのベビードールだった。
しかも胸当ての部分も透けているので、乳首も透け隠せ無い様になって居る。
更にパンティを取り出し穿くと、それはレースとフリルに縁取られているヒモパンティで…コレも透けた生地製でクロッチ部分が二重になって無いので、秘所の割れ目が生地越しに丸見えだった。
(これは、セクシー…と言うか、かなりエロいんじゃあないかなぁ…全裸よりも恥ずかしいかも)
オレは、そのベビードール姿を姿見に映して見て、そう思った。
そのベビードール姿でオレはアトリエに入ると、赤い敷物の前で既に画鬼斉さんが待って居たので、オレは慌てて挨拶をして敷物の上に行って立った。
画鬼斉さんはオレのベビードール姿を、ゆっくりと下から上まで舐める様に見て、それから何か納得した様に言った。
「フム…やはり何かしら着衣した方が裸身は映えるな、生の裸と云うのは…ちと野味が過ぎるのう」
画鬼斉さんの言った事の意味は解ら無かったが、オレの裸を貶された訳では無いらしいとは思った。
また画鬼斉さんは、オレに色んなポーズを取らしてスケッチを始めた。
オレがポーズを取る度に、画鬼斉さんは猛烈な勢いでスケッチを描いて行く。
何度目かのポーズを取った時、オレはある異変に気付いた。
画鬼斉さんの視線に、冷徹な観察者意外の熱が籠り始めた様に感じたのだ。
そしてオレが四つん這いのポーズを取ると、オレの乳房がベビードールの乳当ての中で、若い弾力を持ってブルンっと震えた。
「うむ…そうだ、良い弾みだ」
画鬼斉さんが思わずと言う感じで呟やかれた。
次に、仰向けに横になりながら両肘で上体を起こし、それから両膝を立てて開くポーズを指示されて取る。
(うわ…このポーズじゃあ、穿いているパンティのスケスケ具合では、アソコが丸見えになっちゃうよ…)
オレは些か羞恥を覚えて焦る。
画鬼斉さんは案の定開いた足側に回り、熱を帯びた視線を向けながらスケッチを始めた。
「うむ…よいぞ、秘された花弁が綻ぶ様だ」
また画鬼斉さんは呟きが漏れて来た。
その後も画鬼斉さんは、オレをスケッチしながら意識せずに呟きを漏らし続けられた。
そうした何度目かの休憩の時、お茶を持って来た朴訥な男の人に、画鬼斉さんは何かを耳打ちする様に指示をした。
すると彼は直ぐにアトリエから出ていき、程なくガウンを羽織って帰って来た。
「それでは次からは…彼と絡んだポーズをとってもらおうか」
画鬼斉さんがそう言うと、朴訥な男の人はガウンを脱いだ。
「キヤッ!」
朴訥な男の人の、意外に引き締まった裸身の股間に、隆々たる物が起っていたのでオレは思わず声を上げて目を逸らした。
「フフフ、大丈夫じゃよ、未通娘の娘に無粋な物などは見せはせんよ」
画鬼斉さんが、笑いながらそう言うので、オレはもう一度見直すと。
彼の股間にある物は、男の一物を形どったディルドーが付いたパンツ…いわゆるペニパンと云うやつを穿いて居たのだ。
「それじゃ、また始めようか」
画鬼斉さんの声で、今度は男の人との絡みのモデルが始まった。
朴訥とした感じの彼は、茫洋として捉え所の無い表情のままで、オレの後に回って来た。
「うむ、それではモデルの胸を後から揉みし抱く様に、寛治やって見ろ」
画鬼斉さんの指示を聞いて、オレは朴訥とした男の人は寛治と言う名前なのだと思って居ると、オレの脇の下から前に手が廻って来た。
前に廻って来た寛治さんの手が、オレの乳房を掴もうとして来たので、目を瞑って乳房が掴まれる時を待った。
しかし何時までも、乳房を触られる感触が来ないので薄目を開けて見ると、寛治さんの手はオレの乳房の直前で、触ら無い様に浮かされて居たのだ。
オレは頭を回して後の男の人の顔を見ると、茫洋とした表情は変わっていなかった。
「うむ…うむ…」
画鬼斉さんは頷きながら、オレとオレの後からオレの乳房を揉みし抱いてる様な寛治さんを、スケッチブックに描き写して行く。
それからも寛治さんは、オレと絡み合い愛撫し合う様な色んなポーズをしたが、極力触る事無い様にしてくれた。
画鬼斉さんは、オレと寛治さんとの絡み合いのポーズを取り始めてから、明らかにオレ達を見る目が変わって来て居た。
「そうだ、首筋に噛み付く様にキスをしろ!」
「もっと厭らしく股間に指を這わせるんだ!」
「腰をもっと突き上げて、お前の物を蜜洞の奥まで挿れるつもりで!」
画鬼斉さんのポーズの指示は、段々とよりセクシーで過激なものを要求する様になって行って、段々と熱を帯びて行った。
画鬼斉さんの、その熱に浮かされた様な様子に、オレも何だか身体の奥が火照って来た様に思える。
寛治さんは、そんな白熱する絡み合いポーズを取る間も、オレの身体に極力触ら無い様にしてくれたけど…それでも偶然に触れる事は有るし、ポーズに依ってはオレの身体を支えないといけなかったりして、不可抗力的に肌と肌や身体同士が触れる事はあった。
そうやって寛治さんの手や身体の肌がオレに触れる時、最初はビクッと緊張したりした。
しかしやがて、寛治さんの気遣う様に優しく触れられる事に、オレは安堵を覚えて寧ろもっと触れて欲しいとさえ思ったのだ。
寛治さんの手が、ベビードールの生地越しにオレの乳首を掠った時、ピクッと反応してむず痒い様な感覚が走ったりした。
それから寛治さんに、オレが撓垂れ掛かったポーズをした時に、オレを支え様と腰に寛治さんの腕が回されたのだが。
そのガッチリとした腕で、捕まえられた腰周りから何とも言え無い火照りが、ジワジワと這い上がって来たりする。
そしてオレを仰向けに倒し、寛治さんが覆い被さって来て股間に腰を入れて来るポーズ…つまり正常位で交合う様な格好になった時に…。
寛治さんのペニパンのディルドーが、オレの秘所をパンティの生地越しに、突く様に触れて来た。
オレはその時、ツンツンと焦らす様に股間を突かれる度に、そのままオレの最奥まで突き込んで欲しいと云う衝動に駆られたりした。
ジワリと…下腹の最奥から、湧き出て来る物を感じる…異物を体内に受け入れるための準備に、秘所が潤い出したのをオレは自覚した。
画鬼斉さんは、既に冷徹な観察者としての視線では無く、熱く情欲の籠もった目でオレ達の絡み合いポーズをスケッチブックに描写していた。
その情欲の籠もった視線に当てられて、オレの意識も興奮して混濁してしまい、一時的に完全に牝落ちしてしまった様だった。
オレはこのまま…純潔を散らして男の物を受け入れて…オ、ン、ナ、になる事を望み始めた。
「うおおーーっ!」
突然画鬼斉さんが大声を上げ、それに驚いたオレは興奮で混濁した意識から覚めた。
寛治さんも驚いたらしく、オレから離れて画鬼斉さんの所に行った。
「か…寛治、た…勃ってるんだ、私のが勃起した!」
画鬼斉さんが、自分の股間を押さえてそう叫んで居た。
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「数年前、私は前立腺がんにかかってしまってな…」
休憩時間の時、画鬼斉さんが静かに話始めた。
「手術とホルモン治療でそのガンは治ったのだが…私はEDに勃た無くなってしまったのだよ」
オレは、寛治さんが入れてくれたホットココアを飲みながら、画鬼斉さんの話を聞く。
「以来、私は以前の様に作品が描け無くなってしまったのじゃ…」
画鬼斉さんは、窓の外の冬枯れた庭を見て言った。
「私の描く作品、ネオ春画は…私の情欲を昇華させて画く物なので、EDになったら画く事が出来無くなったのだよ」
ガウンを着た寛治さんが、画鬼斉さんにお茶のおかわりを持って来た。
「そして先月、またガンが転移して再発した事が分かったんだ…今度は治療が難しいほどに進行していてね、余命が半年か保って七〜八ヶ月だと医者に言われたんだ…」
安達原の爺さんから聞いては居たが、直に画鬼斉さんから聞くと、余命僅かと云う事実はオレには重く思えた。
「それで…せめて最後までに一世一代の作品を遺したいと思ったのだが、如何せんEDでは以前の様なエモーショナルな情欲が湧いて来なくて、どうにも作品を手掛けられ無いで居たのだが」
座椅子の背もたれに上体を預けて、画鬼斉さんは溜息を一つ吐いた。
「そんな折、美術大学の先輩だった安達原さんが、私の窮状を知って手助けを申し出てくれたのだよ…自分の経営して居る店に中々に容姿が良く、しかも男を魅了して奮い起たせる伝統技まで習得した娘が居るのだが、その娘をモデルにしたら作品が描けるのではないかと言われてな…まぁ『Pメイド純喫茶』で君に会った時は、モデルとしていけるかを見極めるためにだったのだよ」
画鬼斉さんはオレを見て、少し自嘲気味な笑みを浮かべた。
「それで…オ…私は、モデルとしては合格でしたか?」
オレは、やや意地の悪そうに微笑みながら、聞くと。
「もちろん、大合格じゃよ…なにしろ私のEDを直してくれたんだからな」
画鬼斉さんは、今は収まって居る自身の股間を見て、そう言った。
「フフッ何と言うか、情欲がフツフツと湧いて来る、まるで未だ女を知らなかった童貞の若い時の様だ、女性への憧憬と妄想と情動に振り回されて居た頃の様だ…今ならこのエモーショナルを昇華した良い作品が描けそうだよ」
画鬼斉さんは、今度は屈託無く笑った。
その様子にオレはちょっと思う所があり、恐る恐る聞きにくい事を画鬼斉さんに聞いて見た。
「あの…ガンが再発して、後半年くらいしか無いって…その…」
「うん…ああそうだね、死ぬ事は恐いよ」
画鬼斉さんは何でも無い事の様に言った。
「よく我が生涯に一片の悔い無し何て言うけど、微塵も悔いや未練を残さずに死ぬ奴何て居無いよ、人は病や老いによって自分の身体の自由や衰退を経験して、諦め覚悟して死を受け入れて行くんだよ…もし病も無く若々しいままなら、人は何時までも生きて居たいと思うだろうね、実際に今私は生きたい生き続けたいと望んで居るからね」
オレは画鬼斉さんの、その言う事にショックを受け、些か引き攣った表情をする。
するとオレのそんな顔を見て、画鬼斉さんは続けた。
「ははっそんな顔をしなさんな、まあ不承不承ではあるがそれなりに覚悟はもう出来て居るよ、それに君のお陰で男としての機能と絵を描く原動力の情欲までも、取り戻したのだから…最後に一華咲かせる様な作品が描けそうだよ」
そう言って画鬼斉さんは立ち上がり、オレのモデル仕事が再開された。
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それから、オレのモデルの仕事は二週間ほど続き、百数十枚に及ぶスケッチが描かれた。
本格的な作品作りでは、オレのモデルは必要無いと云う事で、モデルの仕事は終わったのだ。
そしてコレは後日談となるのだが、半年後に画鬼斉さんの訃報がニュースで流れた。
そしてその数日後、あの朴訥とした男の人、寛治さんがオレに見事な装丁の画集を持って来てくれた。
限定数十部のみ作られたその画集は、画鬼斉さんの遺言で一冊オレに贈られる事になって居たのだそうな。
その画集の中には、華麗絢爛で煌びやかながら、同時に艶っぽく隠秘な雰囲気もある男女の交合う図が十数枚に渡って画かれて居た。
そして画かれている交接の愉悦に綻んだ女の顔は、オレの顔にそっくりだった。
またまた蛇足です。
筆者は一章大体五千文字から七千文字くらいに収める様にして居ますが、その範囲に収まら無い様なら二章に分けています。
しかし今回の話は二章に収まりきらず、一万文字迄に収まら無いなら初めての三章に渡る話になるところでした。




