37 パンティが落ちて居た
パンティが落ちて居た。
朝起きて、ベランダに続くガラス戸を開けたら、落ちて居たのだ。
それは白い光沢のある生地で出来て居て、触ればきっとスベスベした手触りだろうと思えた。
更にフリルやリボンと云う飾りが付いていて、若い女の子向けのパンティだと思えた。
最初はソレは何処かから飛んで来たのかと思ったが、しかしココのベランダはマンションの六階だった。
その上このマンションは、田園と言うのも烏滸がましい田んぼと畑に鬱蒼とした鎮守の杜等があるだけの、田舎の風景のど真ん中に突然七階建てのマンションが一棟だけ建って居ると云う、状態なのだ。
だから何処か別の建物から飛んで来たとは考え難いのだが。
ボクはこのマンションが出来た時に、家族で入居してまだ一年ほどしか経って居ないし、今通って居る高校に通学しやすいと言う理由でボクの家族ははココに越して来たのだ。
前に居た所からだと、通学に電車で一時間半ほど掛かるのだった。
右隣はまだ入居者が居無くて開いてるし、左隣は四十歳位の男性が独居してるそうだ。
つまり同階のベランダからパンティが飛んで来たとは思え無い。
そこでボクはベランダから少し身を乗り出して上を見た。
上の階は、フロア全体が一軒の家になって居るペントハウスで、大家の親戚が住んでると聞かされている。
上の階を見上げて居ると、左端のベランダにヒラヒラとたなびく洗濯物が見えた。
そして良く見るとその洗濯物は、ブラジャーやパンティと言った若い女の子用の下着だと云う事が。
(間違い無くあそこから落ちて来たんだろうな)
ボクはそう思い、落ちて居る洗濯物のパンティを返さないと、とも思った。
それでボクはそのパンティを拾おうと思ったのだが…ボクは最初それを触る事に躊躇した。
恐る恐る手を出して、ツンツンと突付いて見ると、指先に柔らかい生地の感触がする。
ソレから指先で摘み上げて見ると、ゴムのせいで少しクシャッと縮こまる。
その縮こまった布をボクは観察して、ソレが女の子の腰周りに穿かれているところを想像してしまい、カーッと顔が赤くなってしまった。
「博、なにしてるの?」
後から母が声を掛けて来た。
ボクは今去っきした想像に罪悪感を覚えたのか、手に持ったパンティをそそくさとポケットに押し込んだ。
それからボクは、急いで朝食を済まして学校に行く準備をする、今日から二学期が始まるのだから。
学校に行く前に、上の階の人にパンティを返そうと思い、階段を上がる。
階段を上がると専用のエレベーターが止まるエレベーターホールが有り、その奥に玄関と思える扉があった。
玄関前まで行くと表札が掲げて居て、柴田慎一、恵美、奈美、と書かれて居て、更に付け足した様に紙が貼ってあって、そこには小鳥遊真琴と書かれて居た。
ボクは呼び鈴を押そうとして、ある事に思い至った。
(高校生位の男子が、パンティを持って来ても大丈夫だろうか…男子に下着を返されるって引かれないかな、最悪ボクが盗んだとか思われたりして)
そんな事を考え始めたら、呼び鈴は押せなくなった。
ボクは結局パンティは返す事が出来なくて、その日はそのまま学校に行った。
新学期が始まって一週間ほど経ったころ、同じ二年の別のクラスに飛び切り可愛い女の子が転校して来たと言う情報が回って来た。
ボクも健全なDT男子なので、飛び切り可愛い女の子とやらを、興味本意でその娘の居るクラスまで見に行くと。
まさに噂に違わず…イヤそれ以上の可愛いく綺麗な女の子が、クラスメイト達と談笑して居るのが見られた。
彼女を見た瞬間、ボクの頭の中でツァーリボンバーが爆発した。
そう核実験で爆発させた、歴史上最大の水爆が爆発した位の衝撃が走ったのだ。
そしてそスクールカースト上位組らしい女の子達が、彼女の名前を呼んだのが聞こえて来た。
「小鳥遊真琴さん…コレから私達とカラオケいかない」
その名前を聞いた時…ボクの中で二発目のツァーリボンバーが炸裂した。
(あのパンティは…もしかして、彼女の物かぁ!)
ボクの脳裏には、自分の部屋の机の引き出しにしまってある、パンティが思い出された。
そしてボクは、顔が火照り出し心臓が早鐘を打つ様に高鳴り…あろう事か勃起までしてしまった。
ボクは恥ずかしさの余り、そそくさとその場を離れた。
その日の学校で、ボクの勃起は中々収まらず、他の生徒に気づかれ無い様にするのに苦労した。
家に帰って、机からあのパンティを出して見る…そしてこの片方の手の平に収まる、少しクシャッとした布の塊を、ボクは広げて見る。
あの綺麗な女の子が、このパンティを穿いて居るところをボクが想像したら、再び激しく勃起してしまった。
ボクは情動に急かされて、昂りを収めようとズボンを脱いだ時…不意に罪悪感が襲って来た。
あんな綺麗な女の子を自分の獣欲の贄にして良い物か…初恋では無い、初恋は中一の頃に散って済ませて居る…久しぶりにボクの心を高鳴らせて、恐らく彼女に恋をしたと思わせてくれる女の子を、性欲処理の具にする事に罪悪感を覚えたのだ。
だけどDT男子の性欲には抗い難く、一頻り昂ぶって処理した後に、ひたすら落ち込んだのだった。
それからのボクは、学校に行けば彼女を何時も遠くで見る日々になった。
彼女の前に自分を曝して、話しかける等とても出来そうに無いからだ。
学校内では、彼女は男女分け隔て無く親しくして居る様で、その仲で特に親しくして居る子達が居て、常に三人の女子と男子が二人ほどが親しくして居るのが見られた。
ボクは遠くからその親しげな者達を、どれ程羨ましく思った事か。
彼女は学業は中々に優秀で、転校して来て最初の中間テストで学年三位になったのを、学校発表の順位表で知った。
後に噂で知ったのだけど、彼女は偏差値が高く進学校でありながら、非常に格式高い女子教育をすると言われて居る、常盤聖心女子高校から転校して来たそうだ。
しかも彼女は、非常に運動神経も良いらしく、時々体育の授業で彼女を見る事が有って見て居ると。
彼女は走ればカモシカの如く俊敏俊足で、跳躍すればまるで猫科の動物の様に靭やかに障害物を飛び越して居た。
そんな彼女をボクはただひたすら憧憬の眼差しで追いかけるのみだった。
文化祭では、彼女がメイド服姿で給仕して居るところを見た時、ボクはまさに萌え死ぬところだったし…。
ある時は、駅前で親しい友達と待ち合わせをして居た様で、如何にも女の子ぽくピョンピョン飛び跳ねながら、待ち合わせして居た娘と喜び合って居るのをボクは偶然に見かけて、何ともホッコリとした事がある。
ボクからは、彼女は何の屈託も無く日々を過ごして居る様に見えて、ソレがボクにとって嬉しく思えた。
家に帰りベランダから上の階を見上げると、左端のベランダが有る所が彼女の部屋らしく、暗くなってそこに明かりが点くと、いま彼処に彼女が居るのだと思い、何とも言え無い焦がれる様な思いにボクはかられるのだ。
やがて冬休みに入って、彼女を見かける事が著しく少なくなった。
クリスマスの頃に、上でパーティーを開いて居るらしい物音や話し声が、ベランダに出ると聞こえたりしたが…当時は夜から雪が吹雪いて、何時までもベランダで聞いて居る理由には行かなかった。
そして年が明けて元日に、彼女が振り袖を着て初詣に行くらしく車に乗り込む所を、家のベランダから目撃した。
遠目ではあったが、彼女の艶やかな着物姿はボクの記憶に焼きついて居る。
ボクの彼女を想う気持ちは日々募っていき、最早毎日が息苦しいほどだ。
そしてボクは遂に決めた、新学期が始まったら…言おうと。
あのパンティと返して…そしてボクの思いを!
何と言われるだろう、イヤ何と言われても良い。
今のこの苦しい思いのままじゃあ居られない。
冬休みは明日終わる。
そうすれば…。
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冬休み編終了
三学期編開始




