19 見られても減る物じゃあ無し、パンツ位幾らでも見せたる!
今日はショッピングだ。
かつて明里と来たショッピングモールに、オレ一人で来ている。
お店のウインドウに写る自分を見て、自分のファションのチェックをする。
もう直ぐ十月と言う事で帽子はもう要らないので、髪は後に垂らし紺のヘアバンドをしてる。
白いTシャツの上にブラウンのキャミソールワンピースを着て、靴はスニーカーだ。
普段は女子と云う自覚を促すため、ガーリーぽい服を選んで着て居る様にしているが、今日は完全にプライベートと云う事で少しラフだ。
普通の女子ならアチコチお店を覗いて、ウインドウショッピングを楽しむのだろうが…オレにはまだ男子だった頃の性癖が残って居るらしく、一直線に目当ての店に直行する。
ランジェリーショップ…そうオレは女性下着を買いに来たのだ。
女の子になった始めの頃は、女物の下着や服装を着るのは拒否していたのだが…女の子である事を受け入れてからは積極的に着る様にして居る。
最初の頃は恵美姉ぇの言うままに下着を着けて居たけど、オレ自身が色んなファション雑誌やネットの情報から、自分で自分の好みの服や下着を着ける様になって行った。
つまり自分自身を戒めるためと言いながら…案外オレは可愛く女の子ぽい服や下着が好きなんだよなあ。
(まぁ…こんなに可愛く性転換したんだから、可愛く飾らないと…)
ピンポーンと入店を知らせるチャイムを聞きながらランジェリーショップにオレは入る。
するとそこは、DT男子の憧憬と妄想を掻き立てる様に、ヒラヒラしたレースやキラキラした生地で彩られた、パンティやブラジャー、そしてキャミソール、ペチコート、などの綺羅びやかな物が舞う桃源郷が広がって居た。
初めてこう云う所に来た時は、オレは随分気後れして五分と店内に居られず、逃げ出したっけ。
店内に色々並べてあるブラジャーやパンツを見て周る。
女性下着と言うのは、コレが中々に侮れない無くて、ちょっと良いなと思った物は、大抵安くても五〜六千円くらい高級品になると一万円を超す物も普通にもある。
かと言って安売りスーパー等で売ってるのは千円から二千円以下で、デザインは兎も角も着けると今ひとつフィット感が無かったり、酷いのになると肌に擦れて赤くなったりする。
最近は可成りましになって来てるそうだが…やはりちょっと躊躇してしまう。
だからオレは正規品の値引き品を探すのだ。
何せオレはまだ扶養家族な訳で、お金はお小遣い制なので色々とやり繰りしてるのだが…。
オレは三点ほど安くて程々にデザインの良いのを見繕い…そして一点だけ高くて買う気は無いけど、デザインが凄く気に入った物を持って試着室に行く。
下着の試着は大事なのだ、ブラジャー等は一日中着ける物なのでフイット感が重要になる、キツかったり締めが偏っていたりすると、場合に依っては体調まで崩す事が有るからなぁ…。
オレは試着室で先ずキャミワンピのストラップを降ろして脱ぐ。
ソレからTシャツも脱いで今着てるブラジャーを表に出す、そして後手にホックを外しブラジャーを脱ぐと…ちょっと開放感を味わう。
今日は一人での買い物だから少しラフな格好なので、ブラジャーはノンワイヤーの柔らか目のやつなのだけれども、それでもブラジャーを外すと得も言われない開放感があるのだ。
最初ブラジャーを着け始めた頃は、この拘束感に馴れなくてちょっと閉口した。
試着室の中の姿見に、上半身裸で乳房を放り出して居るオレが映ってる。
「もうちょっと大きく成らないかなぁ…せめてもう1カップほど…今のCカップだとホックを詰めても少しカップが緩く、Bカップだとホックをいっぱいに開いてもちょっとカップがキツイと云う、微妙な大きさ何だよなぁ…しかもその時々で大きさが変わるし、特に生理前は…」
そんな事を愚痴りながら、この三年間ですっかり自分の身体に馴染んだ乳房を見て、そして触る。
オレの乳房は所謂お椀型と円錐型の中間見たいで、鎖骨辺りから優美な裾野が広がり、円錐状に盛り上がって行き頂点の乳首に至る。
そして乳首から下半分はポテっとしたお椀の様な曲線を描き胸板に落ちて行く。
オレは自分の乳房を見ながら、何となくモムモムと揉んで居たら、ぴくんと乳首が立って来た。
(おっといけない、サッサとブラジャーの試着をしなくちゃ)
そう思ってオレはTシャツを再び着る、するとTシャツの生地が立った乳首に擦れてちょっとピリッと来る。
オレはブラジャーを着たTシャツの上に着けて、試着感を確かめた。
別に直に着けても良いのだが、まだ売り物の商品だと思うと、ちょっと躊躇してしまう。
そのため生地の薄いTシャツをわざわざ着て来てるのだから。
試着するため持って来たブラジャーは苺柄とボーダー柄と無地の物で、着けた感じはどれもまあまあで、若干無地のが生地の伸びが無くてキツイかなぁと言う感じ。
正規品と言えど値引き品なのでこんな物だろう。
パンツの方も自分のパンツの上から穿いて確かめる…コッチもまあまあだった。
そうやって三千円以下の如何にもティーン向けの苺柄とボーダーの下着を買う事に決め、買う気の無い高めの下着も着けて見る。
ブラジャーは薄く青光りする絹の生地で、前カップにはゴージャスな刺繍が施され、着け心地はTシャツ越しにもピッタリフィットして、キツくも無く緩くも無く乳房全体を的確に保持しつつ、その上寄せて上げてオレの些か寂しい胸にも谷間が出来るほどだった。
(流石オレの小遣い一か月分、作りが違うな…コレにはきっと人類の叡智の限りが尽くされて作られているんだろうな)
そう思いながらパンツも履くと、パンツはパンツでフィット感が凄くて、お尻全体を軽く手で押さえられてる様な感じでお尻の曲線がより一層円やかになった気がする。
(こんなパンツを穿いてトイレ何て行け無いなあ)
デザインも上品な刺繍とレースで仕上げられて居て息を呑むほどだ。
(良いなあ欲しいなあ、これ買うためにバイトでもしょうかな…)
試着室を出て買う予定の下着二点をキャッシャーに持って行き、お金を払って店を出る。
当初の予定の買い物は終わったので、オレはブラブラと街を歩いた。
地方都市の繁華街は都心の繁華街とは比べるまでも無いが、それでもそれなりに賑わって居る。
大規模店舗や複合型レジャー施設も有り、若者達も出歩いて居る。
今日の買い物で一か月分の小遣いの約半分を使ったので、ちょっと懐の寂しさを噛み締めて居ると、あるビルの前に貼られた紙が目に入った。
『時給千五百円、高校生バイト可、勤務時間等は仔細面談』
(こんな地方都市で時給千五百円だって!しかも高校生可とは…)
オレは時給に釣られ、内容を良く見ずに紙の貼られて居るビルに飛び込んだ。
『Pメイド純喫茶』と書かれて居た事には気付か無かった。
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「容姿、スタイル、合格!即採用」
三途の河原で亡者の衣服をはぎ取りそうなお婆さんがそう叫び、オレは採用になった。
面談を受けた事務室の隣に狭いながらも更衣室が有り、メイド服を着てブリーチした長い髪のぶっきら棒な物言いをする、二十歳位にお姉さんに案内されて入る。
入って直ぐメイド服とヒモパンティを渡され、着替えたら出て来る様に言われる。
(えっ?ヒモパンティ?どう言う事?まさかヤバイ所に採用されちゃった?)
オレは困惑と焦りで頭の中が混乱しながらもメイド服に着替える。
メイド服は特にセクシーな造りと言う訳でも無く、普通のエプロンドレス風で、スカートも膝丈くらいで超ミニと云う訳でも無い。
ただパニエを穿いて、スカートをふんわりと拡げた感じにしてある。
そして…制服の一部として穿く事になったヒモパンティは、薄い総レース制で透けて居るが、チョメチョメなアブナイ処は裏に一応布が有って、見えない様になっては居る。
普段穿いてる下着より格段に防御力の小さい下着なので、何だか穿いて無い様なスースーする感じで頼りなく思いながら着替えて出ると、あのぶっきら棒なお姉さんが待って居た。
店舗に行く前の廊下でお店の業態の説明をお姉さんにしてもらった。
「うちは純喫茶なので仕事はお客様の給餌だけだから、萌え萌えキューンだとかケチャップで絵を描いたりだとかは仕無いから」
オレはその話しを聞いてちょっとホッとする。
そして店内に入るとソコソコ広くボックス席が十個、カウンター席も十席と言った処で、床の黒いフローリングがピカピカに磨かれて光って居た。
そう…まるで鏡の様にフローリングは磨かれてピカピカだったのだ…。
(なっ…コレは!磨かれた床にスカートの中が写って見えるんじゃあないか⁉)
オレは店の床の仕掛けに気づき焦る。
(ど…どうしょ…こんな風俗紛いの店…道理で時給千五百円も出す訳だ……千五百円…時給…週三日放課後三時間だけで…一月五万円ちょっと…月一万円のお小遣い制のオレには大金だ……それだけあれば…)
店内を見て葛藤してブツブツ言ってる居るオレに、ぶっきら棒なお姉さんが聞いて来る。
「どうする辞める、辞めるなら今のうちだよ」
オレはその声に答えず、ただひたすらに心の葛藤と、向き合って居た。
(…月に一人の渋澤栄一様しかオレに会いに来てくれない…でも五人も一度に渋澤栄一様が来てくれたら…あのランジェリーショップで買いたかったあのブラジャーやパンツが……もっと高いのだって…サブスクだってCM抜きで見られて…ヨウツベもCMを抜けられて…ガチャ課金だって……パンツ見られるくらい何だって言うの…既に俊や遊馬には見られまくって居るし……見られたって減る物じゃあ無し、パンツ位幾らでも見せてやる!……)
「い…いえ、やります!」
オレは眼尻を上げ意を決した様に言った…。
傍目にはオレが重大な決意を持って言った様だが、ただ単にオレは物欲と金銭欲に負けただけなのだが。
店の奥に集まっていた他のメイドさん?達の処に案内されて顔合わせをする事になる。
「私は速水早希、大学で陸上をやっているの、よろしくね」
ショートヘアで女子にしては精悍な容姿で、肌は健康的に日に焼け、スカートから見える足は正にカモシカの様だった。
「わだしは万田都よ、服飾専門学校に通っているの、よろしく」
彼女はちょっとぽっちゃり…いわゆる太ましい系でメイド服を所々カスタマイズしていて、ちょっとゴスロリっぽい。
「わたし…は、愛染京子といいます、一応人妻ですよろしくしてね」
何処か憂いを秘めた様な美人さんで、物腰は凄く優しい感じで…。
彼女がお辞儀をして、長い黒髪の一房がハラリと落ちて彼女の顔に掛かった時、オレの頭の中に昭和のピンク映画のポスターが思い出された。
その映画のタイトルは『団地妻、午後の濡れたチョメチョメ』…。
そしてぶっきら棒な人が自己紹介をする。
私は安達原禊でこの店のオーナー安達原清の孫だよ、一応フロアマネージャーをやっているわ。
「わ…私は小鳥遊真琴と言います、高校二年です、よろしくお願いします」
オレも自己紹介をした。
「それでどうする?今日は顔合わせだけで帰ってもいいぜ、シフト的には明日からでもOKだぜ」
安達原さんがそう言ってくれたが、オレはこの仕事に早く馴れようと、そのまま仕事に付いた。




