表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おしかけ!メリーさん  作者: 隆頭


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/47

三十六話 記憶違い

 芽凛衣(めりい)が、あの幼馴染の妹。母さんからその話を聞いて、俺は強い違和感を感じた。だってあの子は一人っ子だったはずだ。

 少なくとも、あの子の家に遊びに行ったときに妹と会った記憶はない。そんな気配もなかった。

 もしかして、芽凛衣(めりい)は物事の整合性を持たせるために、妹がいたという設定を作ったというのか?


 想定外の話に、俺はただ黙って頷くことしかできなかった。そんな俺に母さんは首を傾げるものの、すぐに芽凛衣(めりい)を見た。


「さて、私たちはご飯の用意をしておくから、若い二人は上でゆっくりしてらっしゃい」


 そう母さんに促され、芽凛衣(めりい)と二人で俺の部屋に向かう。荷物を置いて部屋着に着替えたあと、芽凛衣(めりい)とベッドの上でくっつくように並んで腰を下ろした。


芽凛衣(めりい)があの子の妹って、どういうことなんだ?俺の知る限りひとりっ子だったはずなんだけど」


 気になって仕方がないことを、芽凛衣(めりい)に尋ねる。彼女は困った表情をしながら、あははと口を開いた。


「そうだよ。(あかね)には両親しかいないの。今は動けないあの子に代わって、私が更斗(さらと)くんの傍に来たんだ。あの子はずっと、あなたのことが大好きだったから」


「そうか……俺のこと、覚えてたんだな」


 遠い昔の記憶だからと、名前を忘れていたことに申し訳なさを感じる。あれから何年も経っているというのに。


「そりゃね。だって(あかね)は病弱でさ、一時期は良くなったけど、結局またそれが再発しちゃって、それからもまたベッドの上。だから、更斗(さらと)くんほどに関係を深めた人って、一人二人くらいしかいないんじゃないかな?それも女の子が相手だから、唯一の異性(おとこのこ)のことを覚えてるのは、不思議なことじゃないよ」


 思い出すように、芽凛衣(めりい)はそう語った。当時はどうして関わってたのか覚えてないけれど、なにかしらのきっかけはあったのだろう。

 覚えていてくれたのなら、それはとても嬉しいことだった。


「それに、更斗(さらと)くんは別れ際に、ぬいぐるみをプレゼントしたでしょ?くまさんの」


「え?人形じゃなかったか?」


 芽凛衣(めりい)が言った別れ際のプレゼントのことに、思わず聞き返す。その言葉に彼女の表情が固まり、沈黙の時間が流れる。

 あれ?違ったっけ?


「え、違ったか?俺はてっきり、あの子に人形を渡したから、芽凛衣(めりい)になって来たのかと思ったんだけど……」


「え?私は(あかね)が引っ越してからあの子と会ったんだけど……」


 恥ずかしい記憶違いに、俺は眼を見開いて固まってしまう。つまり俺は、自分の渡したものも覚えていない阿呆ではないか。

 なんかもう、居たたまれたくなってくる。


「ちょっと席を外すわ」


「わわわ!待って待って、覚えてないのも仕方ないよ!だって十年は経ってるんだよ?それに私の曰くも考えたら更斗(さらと)くんの勘違いも当然だと思うなー!」


「やめろその慰めは胸にくる」


 芽凛衣(めりい)の必死のフォローが、俺のみっともなさを助長していた。思い込みったって、いくらなんでも限度があるだろう。

 人形とくまのぬいぐるみって、共通点が四肢だけではないか。シルエットも色も違うというのに、どうしてその勘違いを信じ込んでいたのか。

 たしかに芽凛衣(めりい)はかの "メリーさん" なわけだが、それにしたって違和感を感じないのは恥ずかしい。


 あの都市伝説は自分の持つ人形を手放したことから始まっているのだから、芽凛衣(めりい)だってそうに違いないと、確信してしまっていた。恥ずかしさのあまり、思わず顔を両手で覆ってしまう。


「まぁまぁ、人間誰しも勘違いくらいあるって、だから落ち込まないで?そんなことで私も(あかね)も怒ったりしないからさ」


 横から抱き締めるように背中をさする芽凛衣(めりい)が、そう慰めてくれた。穴があったら入りたいという言葉もあるが、その気持ちが痛い程分かってしまった。

 泣くぞこのやろう。いや自業自得なんだが。



 恥ずかしさのあまり芽凛衣(めりい)の顔を見れず、それを誤魔化すために彼女の薄い胸に顔を(うず)めてやった。ほんの少しだけある柔らかい感触が心地好く、心を落ち着かせてくれる。


 こうして甘えている中、芽凛衣(めりい)が俺の頭を撫でながら、優しく問いかけてきた。


「今度の日曜日、(あかね)のところに行こうよ。あの子の両親も、更斗(さらと)くんのことはちゃんと覚えてるから、会えたら絶対喜ぶよ」


「そうだな。久しぶりに会ってみるのも楽しそうだ」


 断る理由はなかった。幼馴染と会ったのは小学校に入る前だったはずなので、既に十年は経過しているだろう。

 思い出話に花を咲かせるのも良いだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ