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おしかけ!メリーさん  作者: 隆頭


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二十七話 メリーさんの恐怖

「おい離せよ!ックソ、力強ぇ……!」


 必死の抵抗をする青崎とその金魚のフンだが、力一杯押さえつける俺の手を動かせずにいた。ほんの少し鍛えているだけの俺に力負けするとは、弱い証拠である。

 もう少しで片割れの意識が飛ぶかもという良いタイミングで、授業の始まりを知らせるチャイムが鳴った。


 まぁ俺ごときが誰かの命を奪うなんぞできるはずがないので、嫌々ながらその手を離す。ヤツはドサッと腰を下ろし、ゴホゴホの首を押さえて咳をしている。


 本当は青崎にもやっておきたがったが、さすがに遅刻はマズいと教室へと走る。二人はそんな俺を見送ることしかできなかった。



 あれから遅まきながら教室へと戻り、みんなの視線を受けながら席に着く。時間差で青崎たちも入ってきて、何事もなく授業が進んだ。

 しかしその授業のあと、休み時間に俺の元にやってきた芽凛衣と彩斗が俺の怪我を見て、心配半分怒り半分という様子で尋ねてきた。


 芽凛衣に至っては心配半分怒りの割合が三分の二という、少々オーバーフローしているような感じだった。こっちの方がビビるくらいに怒っていたが、二人に心配かけてくなくて、転んだからと誤魔化してしまった。

 それから二人とも聞くことをやめたが、たぶん理解しているだろう。俺が青崎たち二人に殴られたということは。


「更斗くんがなにも言わないのなら、私はなにも聞かないよ。だから、こっちはこっちで好きにするね」


 そう微笑む芽凛衣に、彩斗も俺も何をするつもりなのかを聞くことはできなかった。




──────────



 身の程知らずで空気の読めない、汐丸(しおまる)という陰キャを分からせようと思ってツレと共にシメようと思ったが、想定外の抵抗を受けて逃がしてしまった。

 あんまりにもムカついたので、今度はもう少し人数を増やしてボコボコてやろう。誠心誠意謝罪させて、二度と紫崎という女から手を引かせてやる。


 あれだけの女だ、ヤれると分かれば協力を惜しむ男はいないだろうし、汐丸を滅多打ちにしたあと、アイツに入れ込んでいる紫崎をこっぴどく振らせてしまえば、あの女は強いショックを受けるはずだ。


 それを俺が慰めて、いつも通り可愛がってやればあっという間だろう。そのまま家に連れ込んで処女をぶち抜いてやる。

 ついでに汐丸に見せつけて、寝取られマゾにして遊んでやっても良いな。


 そんなことを考えながら、名前も覚えていない女と生でヤるだけヤって、その帰りに知り合いに連絡をとってみる。

 しかし通信が悪いのかアプリのバグなのか、どれだけメッセージを送信しても送信失敗のマークが表記されて、会話どころか声をかけることもできない。


 しかし圏外になっているわけでもないので、電話くらいは伝わるだろう。そう考えて電話帳アプリを開き、メッセージを送ろうとした人物の番号をタップして電話をかける。しかし、コール音する鳴らないまま電話が切れてしまった。


 わけが分からず首を傾げていると、汐丸に首を絞められたツレから電話がかかってきた。


「もしも──」


『けっ兼斗(けんと)!助けてくれ!』


「あぁ?どうしたんだよ。もしかして汐丸になにかされ──」


『しっ死にたくない!助けてくれ兼斗!頼む!』


「落ち着けって、なにがなんだか分からねぇって」


 もしかして、変なやつらに喧嘩でもふっかけたのか、ツレが悲痛な声で叫ぶ。状況が分からない俺は困惑のままに声をかけるが、返事が来ないまま電話が切れてしまった。


 折り返しをかけてみるものの繋がらず、コール音すら鳴らない。意味が分からずイライラしていると、突然非通知で電話がかかってきた。


 こんなときに誰の悪ふざけかは知らないが、そんなものに構っている暇はない。だからその "電話を拒否" し、スマホを耳に当てた。

 自分の行動に違和感を感じながら、拒否したはずの電話から聞こえてきたのは、女の声だった。


『もしもし、わたし 繝。繝ェ繝シ縺輔s。今から縺昴▲縺。縺ォ蜷代°縺』


「ひっ……!」


 ところどころ乱れた音声で何を言っているのか分からない。ただおぞましいほどに不快なその声に、思わずスマホを落としてしまう。

 画面が地面を向いて、表示されている画面が分からない。恐る恐るスマホをひっくり返すと、表示されているのはホーム画面だった。


 ホッとひと安心したのも束の間、再び非通知で電話がかかってくる。応答なんぞしたくないのでそれを拒否にスワイプし、再びスマホを耳に当てる。

 吸い寄せられるように、電話を受けてしまうのだ。


「だれだよお前!いい加減構ってくるんじゃねぇ!」


『もしもし、わたしメ繝ェ繝シ縺輔s。今、近くのゴミ捨て場の前にいるの』


「なんだよ!誰だって!ゴミ捨て場ってなんだよ!」


『うふふ、分からない?あなたの住むマンションの下にあるじゃない。この間だって、ゴミ出ししたでしょう?あらそっか、やったのはあなたのお母さんだったね。あはは』


 虚ろな声で笑うその声は、当てずっぽうなのか俺がマンションに住んでいることを当ててみせて、プツリと通話が切れる。

 きっと適当に言っただけだ。そう思い込んでみても、恐怖心がそれを許さない。


 家に帰ればヤツだって手を出せないはずだと、全速力で家に駆け出した。

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