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おしかけ!メリーさん  作者: 隆頭


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二十六話 呼び出し

 昼食を終えて、不躾な視線から逃れるように教室に戻る。芽凛衣と彩斗は見目がよく、とにかく周りからの目を引いた。

 歩いてるだけだというのに、凄まじい不快感だ。何をジロジロ見ているのか、見世物ではない。



 俺の腕を抱く芽凛衣と、俺たちの後ろを歩く彩斗。たとえ後ろにいたとしても、彩斗の背は高いためよく見えるはずだ。つまり、俺の存在は眩しい二人によって隠れてしまうだろう。

 次の日には、芽凛衣が彩斗と付き合っているといううわさが流れ始めるに違いない。


 教室に戻ると相変わらず、クラスメイトたちがこちらを見てくる。青崎(あおざき)らのグループは相変わらず気に入らないというような表情をしていた。



 時間を空けて、昼イチの授業を終えた休み時間にトイレに行った。ささっと小便を済まして教室に戻ろうとトイレから出たところで、青崎とその友人がやってきた。


「ちょっとツラ貸せ」


「なに?」


 青崎のツレであるガタイの良いスポーツ刈りが、無礼にも命令してきたので理由を尋ねる。いきなりツラ貸せとはあまりにもご挨拶じゃないか。


「いいからこいよ」


 苛立ちを隠さずそう言ったのは、今まで化けの皮を被っていた青崎だった。彩斗の足元にも及ばない程度にモテる男であるが、普段の愛想の良さは完全に消え失せて、非常に高圧的な態度で詰め寄ってくる。めんどくせー。

 とはいえ、ここで逃げても仕方ないので、二人着いていくことした。


 連れてこられたのは、屋上に出る施錠された片開き扉の前だ。掃除用のロッカーやバケツ、モップや消火器や中身の分からない段ボールが積み上げられたその場所には、あまり人が来ることはない。

 フィクションのみたく屋上へと出る、なんてことはできないが、内緒話をするにはもってこいの場所だろう。


 校舎裏へ向かうよりは、距離やアクセス的にも手っ取り早く、十分程度の休み時間で終わらせるには、丁度良かったのだ。

 まぁそのせいで呼び出されたわけなので、それが裏目に出たわけだが。


「お前、紫崎とどういう関係?ハッキリ言って釣り合わないから、さっさと手を引いて欲しいんだけど」


 そう切り出したのは青崎だ。芽凛衣が自分のものにできなくて気に入らないのだろうが、俺も彼女も好きで一緒にいるわけで、外野がとやかく言ったところでうるさいだけである。


「嫌だね。俺も芽凛衣も好きで一緒にいるんだ、それを外野が──」


 口を挟むな。

 そう言おうとしたところで、青崎のツレが俺を壁に突き飛ばす。壁と言っても手摺の方なので、頭をぶつけることはなかった。


「言っとくけど、これはアドバイスなんだよ。高嶺の花に手を出すと、余計なトラブルを生むからやめとけよってな。平和に過ごしたいなら、その辺のブサイクと付き合った方がよっぽど安全だぜ。お前もどうせヤりたいだけなんだろ」


「一緒にするな。俺は芽凛衣の性格が──」


「あぁもういいってそういうの。クセェから止めろよ、カッコつけんな」


 青崎が右手をヒラヒラとさせながら、嘲笑うように言った。確かに芽凛衣の見た目は浮世離れしたほどの可愛さであるが、それでも性格だって素敵なのはよく知っている。

 一緒に暮らしているわけだから当然だ。


「とにかく、これ以上紫崎(アイツ)に付きまとうなよな。向こうから寄ってくるとかいう言い訳はいらねぇから、痛い目みたくなけりゃ黙って従っとけよ。お前の意見とか聞きたくねぇし」


「ふざけんな、誰が──」


 そこまで言って、青崎に思い切り首を捕まれる。殴るようなその勢いに呼吸が一瞬止まり、言葉が紡げなくなる。

 そのまま突き落とそうという勢いで押し込まれたことで、背中にある手摺を軸に足が浮いて、身体が斜めになる。


「お前の意見は聞きたくねぇって言ったろ。言葉わかんねぇのか、殺すぞ」


「もういいだろ兼斗(けんと)、そんなやつそのまま落としちまえよ。一回くらい痛い目みればちっとは目を覚ますだろうしよ」


 首を掴む青崎の右手を掴んで抵抗する俺を見て、ツレの方が言った。一階層分の高さを頭から、しかも階段へ落とすとか正気か?

 冷静に考えずとも、それが殺人と同じレベルの被害を出すことは間違いない。そんなことをされるというのなら、こちらとしてもいよいよ手を出すしかなくなる。


「いっ、いってっ!」


 青崎の手首を力一杯握り締めると、ギリギリという感触が伝わり、顔を歪めた彼が咄嗟に手を離した。


「ックソ!」


 ささやかなら抵抗にキレた青崎が、間髪を容れずに左頬を殴る。その勢いによろめいて、その勢いのままに倒れ込む。


「調子に乗んなよ!」


 倒れた俺が立ち上がると、ツレの方が蹴りで追い打ちし、蹴られた衝撃で階段へとバランスを崩す。手摺がなくなったので当然だが、到底正気とは思えない行動だ。


 咄嗟に地面を蹴って、壁に設置されている手摺を握って身体を支えて事なきを得る。


「お前ら、やりすぎだと思わねぇのかよ。一歩間違えたら死んでたかもしれねぇだぞ!」


「知らねぇよ。お前が調子に乗るからだ」


 いけしゃあしゃあと抜かすツレの方に、プチンと堪忍袋の緒が切れる。同じことやっても良いということだろうか、数の利でイキってるだけの分際で調子に乗るなら、こっちから殺してやる。


 駆け出した俺はその勢いで手摺りを足場に跳び上がり、ソイツの目の前に着地した流れでその首を壁に向かって叩き付ける。

 そのまま喉笛を潰せば、自分の行為を反省できるかもしれない。


 殴られたことで口が切れ、血の味がする。青崎にも同じことをしてやらないとな。

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