燃料要らずの機械飛行兵器 その④
「三機撃墜されたか…………」
黒髪の少年、橘蓮は呟く。
「しかもこちらに真っ直ぐ向かって来ている」
「向かって来ている? 当たり前だろう? 敵は俺達の居る場所ここ研究所に爆破予告しているんだぞ! 来るのは当然だろう?」
「いいや。そうでも無い。相平、敵は俺が攻撃を開始するまで色々な場所を彷徨うだけでこちらに来る気配は一切無かった。だが俺が攻撃した途端にこちらの位置が解った様に真っ直ぐ向かって来ている。何か理由が有るはずだ」
その場に居たラクギリヤが蓮に尋ねる。
「それで敵は何人向かって来て居るんだ?」
「ラクギリヤさん。敵は二人俺達を裏切り同盟国に加入した。狭山有月が魔女の様な恰好をした子供をお姫様だっこしたまま走りこちらに来ていますが…………」
「お姫様だっこ!? 戦闘中にか!? 冗談だろ?」
相平が爆笑する。それを聞き冥界は答える。
「いいや。それはあながち間違いでは無い。剣を創り出す異能力者よ! 飛行機械を操りし異能力は上空から狙撃している。その攻撃を警戒しながら行動するのは難しいだろう。飛行機械で後ろからの狙撃をされる可能性も有る。死角からの攻撃を警戒しながら此方に向かうのは時間が掛かるだろう。だが抱きかかえたままなら話は別だ。一人は移動に集中でき、もう一人は上空からの攻撃を警戒出来る。常に上を向いた状態なら死角は一切無い。飛行機械を操りし異能力に対しかなり有利に戦えるだろう! その魔女の恰好をした人物の攻撃手段は何だ?飛行機械を操りし者よ!!」
蓮が答える前にラクギリヤが答える。
「同盟国の魔女の恰好をした子供と言えば「魔女」フィルナルド・エセンティス・ユースティラーナだろうな。ならば攻撃方法は魔法による攻撃だろう。同盟国の「魔女」はこの世界でも有数の魔法使いとして知られている。それより向かって来ているのは異世界転移者一人と「魔女」だけなのか? 「墜国」のライネス・クリューケントは居ないのか?」
その言葉を聞き蓮は目の前に移るモニターが付いているドローンを使い周囲を確認する。
「今の所その二人のみでそのライネスとやらはいませんね」
それを聞きラクギリヤは「そうか」とだけ言い何やら考え込む。
「それよりさ。どうしてこいつ等は突然こっちに向かって来たんだ? 敵は研究所の場所を知っているんだろう?」
相平の疑問に蓮は答えた。
「今こちらに向かっている二人は元々場所を知らなかったんじゃないか? そうでも無ければ街中をぶらつく理由は無い。位置が解っていないと考えるのが自然だ」
「そんな事有るか? 敵はここを爆破するって手紙を送ってきたんだぜ? なら場所を知っているだろ?」
「知っているのがライネス一人だけの可能性が有る。お前は知らない街で地図にも載っていない場所に行けるか?」
「無理だな。そんなの」
「そうだろ? それなら敵が突然こちらに向かってくるのは可笑しいんだ。敵は研究所の位置を知らない可能性が高い。なのにどうしてこちらに迷いもせず来れる?」
蓮が考え込む。それを見て冥界は答える。
「敵に魔術を操る者が居るなら答えは一つだな。飛行機械を操りし異能力者の魔力の残り香を追い此方に向かって来ている以外有り得ない。それは──」
冥界が最後まで話す前に蓮は尋ねる。
「…………待て、その魔力の残り香って何だ?」
「気付いていないのか? 我々異能力者は能力の発動に魔力を使用し能力を発動している。そこそこの腕が有る魔術師で有ればその残り香を魔力で感じる事が出来る。一流だとそれを視る事も可能だ。だがそれを行うには集中力が必要だ。恐らく火を操りし異能力者が魔術を操る者を抱えているのはそこが理由だろうな。歩くのにも身体のエネルギーは使われる。当然集中力も失われるそれを防ぐ為に抱え行動しているのだろう。となると此方に迷いも無く来るだろうな! 飛行兵器を操りし異能力よ! 残り飛行機械は
幾つだ?」
「…………残り五……いや四だ。敵は何らかの手段で俺の狙撃を防いでいる。その為二人とも怪我無く無事だ。このまま無傷でここに来るだろうな……。一応攻撃は続行するが意味は無いだろう」
それを聞き相平は大きく笑った。
「丁度良いぜ!! 俺の能力の初披露だ! 敵がどんな奴だろうと俺の剣で叩き切ってやるぜ!」
「それは頼もしい限りだな。ドローンが無くなれば俺はただの一般人だ。万が一にそなえ護衛を任せたんだからな」
「剣を創り出し異能力者よ! 実戦は初めてなのだろう? 火を操りし異能力は何度も戦闘を重ねている油断は出来ないが、それに魔力の残り香を感じれるのは魔術師の中でも中級以上だ。相当な使い手で有る事に変わりないだろう。剣を創り出し異能力者は実戦は初めてだろう? 油断していると足元を掬われるぞ?」
「まあ心配するなよ! 冥界! 俺なら出来るぜ。裏切り者の有月も魔女とやらも瞬殺だぜ!!」
それを聞き不安そうに蓮は頭を抱えてため息をした。
「心配するな。ここには私が居る。このラクギリヤ・ユーステスが居る限り君達の安全は保障しよう」
「頼みますよ。ラクギリヤさん。俺達はまだ子供何で、大人の貴方しか頼りになる人が居ないのですからね」
それを聞きラクギリヤは聞こえない声で呟いた。
「……来たか。少年私に君の上がった腕前を見せて貰おうか……。君に預けた剣と共にな」
ラクギリヤはニヤリと笑うその笑みはその場の誰にも気づかれなかった。




