燃料要らずの機械飛行兵器 その①
人気が全く無い街を俺とフィルナルドは歩く。その街並みを見て俺は呟く。
「ライネスの言う通り人払いは出来ているみたいだな」
周囲に人は一切居らずそれどころか家からは生活音は一切聞こえない。とても不気味な雰囲気だ。
「帝国って同盟国より貧しいんだね? ユヅキ?」
フィルナルドは街の様子を見て言う。確かに同盟国に比べると帝国は家にドアが付いていない家もあり、庶民の生活はとても貧しそうだ。
「そうだな。帝国ってどこもこんな感じなのか?」
「うーん? ボクは帝国には入ったこと無いからね。中央は豪勢なんじゃないかな? 少なくともここは傭兵国より酷い生活をしているみたいだね」
街を少し見ただけでそこまで解るのか?色々な国を見て回ったらしいから国の状況を分析するのに長けているのだろうか?
「そんな事よりさ! ユヅキ手繋ごうよ!」
フィルナルドは突然そんな事を言い出す。
「ここは敵地だぞ。そんな事している場合じゃないだろう」
「敵地だからこそだよ! ここは知らない土地だよ! だって迷子になったら困るだろう?」
言っている事には一理有る。俺はフィルナルドに自分の手を差し出す。その手をフィルナルドは握った。フィルナルドの手はとても小さく、昔妹とデパートで手を繋いだ事を思い出させる。
「ユヅキの手大きいね?」
「一般的な十五歳の大きさだと思うが…………」
「むう。そんな事が言いたいんじゃないやい」
フィルナルドは頬を膨らませる。しかし手を放しはしなかった。手を繋いだまま俺達は行き場も無く街の中をうろつく。ライネスは敵を誘き出せと言っていたがこれで良いのだろうか? 人が近くに来る気配は一切無く。能力者はおろか一般人にすら遭遇しない。人払いの効果は有るみたいだ。これで街中で戦闘をしても一般人の犠牲者は出さないだろう。
しかし能力者が来てくれなければ何の意味も無い。そもそも敵能力者は俺達が街中に入ったことを知っているのだろうか? 見張りの一人も居ない。それは敵が侵入するのを報告する人物が居ないと言う事を意味する。俺達のこの行動に意味は有るのだろうか?
「……ユヅキ! こうしていると、こ、恋人がデートしているみたいだね?」
顔を赤らめたフィルナルドは下から俺を見上げる。俺とフィルナルドには二頭身位の差がある。遠目で見たら、いや近くで見ても兄妹が仲良くしている様にしか見えないだろう。しかし、そんな事を言えばフィルナルドは不機嫌になるのは目に見えて解る。だから俺はその言葉に同意した。
「ああ、そうだな。でもデートって言ったら買い物とかしたりするモノだろう?」
「確かにそういうのも良いけどさ。こう、二人で誰一人も居ない街中を歩くって言うのもロマンチックじゃあないかい? ここにはボクとユヅキしか居ないんだよ! これはとても贅沢な事さ」
「そういうモノか?」
「そういうモノなの!」
フィルナルドはハーフエルフだった事で差別を受けていたらしい。街中をこうして歩くことも無かったんだろう。敵が来る気配も今の所一切無いしフィルナルドに付き合ってやるのも悪くないだろう。
「そうだ! ユヅキ? 二人で何時か本当のデートをしようね? こう言うのも悪くないけど街中で色んなものを食べて色んなお店に行くってのもやってみたいな!」
「無事に戻れたらな」
「ホント? 約束だよ! 絶対だからね!」
二人きりで会話をしながら色々な場所をうろつく。当然何処にも人は居らず、敵の襲来も無い。そんな時俺達が街の大通りを歩いていると何かが俺達に向けて飛んできた。それが俺に当たる前にフィルナルドは魔法を唱える。
「…………詠唱破棄! バリアー!!」
俺に直撃する前に目の前に透明な壁が現れその壁に飛んできた物がぶつかり跳ね返り地面に落ちる。
「大丈夫かい! ユヅキ?」
俺の無事を確認する様にフィルナルドは話しかける。俺に何かが直撃する前にフィルナルドが魔法を唱えたため俺に怪我は無い。
「……助かった。フィルナルド」
「当然だよ! キミに怪我をさせないって言っただろう?」
俺は地面に落ちた物を拾い見る。それは俺が無月と両親が殺され紛争地域で孤立した時に一真に連れて来られた一真が所属してた抵抗組織に居た頃一度見たことが有る。その後直ぐに俺と一真は保護され日本に戻ったため使ったことは無いが実物は一度見たことがある。
俺の拾ったそれは拳銃などで使用されている弾丸だった。




