隠していた本音
作戦会議を終えて夕食を済まし風呂に入った俺は自室で横になっていた。机の上には一つのボールが置いてある。これが二日後爆破する。そしたら俺は再び東の植民地に戻る事になる。前回は俺は戦闘前に気絶して戦闘には参加しなかったが、その戦いでクラスメイトが二人死んだらしい。
俺とクラスメイトの接点はほとんど無い。クラスメイトの顔を思い出すのも難しいぐらいだ。無月と両親が死に俺は五年間の間先の無い人生を過ごした。その為中学時代の記憶が印象に残っていない。思い出すのは毎日襲い来る悪夢の事だけだ。
今夜も恐らく悪夢を見るのだろう。この世界で俺は能力を使い悪夢から一時的に逃げる事が出来ているが。俺の「調節」はあくまっで何かを減らしたり増やしたりするだけだ。何かを無限に出来たり零に出来たりはしない。何時かは限界が来て寝て悪夢を見るだろう。
そんな事を考えているとドアが優しく叩かれるムツキだろう。もう寝る時間と言う事か。俺はドアを開けてムツキを迎え入れる。
「ムツキ? 俺が居ない間は一人で寝れたんだろ? ならもう一人で寝れるんじゃないか?」
「…………ここで寝てた……ご主人の臭いが無いと……寝れない」
その言葉に俺は何も言えず「そうか」とだけ言いムツキと共に布団に入った。しばらく布団で横になっているとムツキが話しかけてくる。
「…………ご主人……今日も寝ないの?」
俺はその言葉に少し困りしばらくして口を開けた。
「ああ、俺は寝れないんだ。寝ると悪夢が襲ってくる。俺はそれが怖くて眠れないんだ」
「……悪夢? ……そんなに怖いの?」
俺は少し悩みそして話す事にした。
「俺には妹が居てな、とても仲が良かったんだが、ある日妹は殺されたんだ。その夢を俺は毎日見る。それで寝れないんだ」
「…………妹? ……もしかして……名前は……」
一真との戦闘時に一真が嫌と言うほど俺の妹の事を言っていたからなその事を覚えていたんだろう。隠しても無駄か…………。
俺は仕方なく妹の無月の名を教える。
「そうだ、お前と同じ名前だ。無月だ」
「…………そっか」
ムツキの反応は意外なモノだった。俺はムツキに妹の名前を付けて怒られるとおもったが、そんな事は無かった。
「怒らないのか?」
「…………何で?」
「俺はお前に死んだ妹と同じ名前を付けた。普通は怒っても良いんだぞ」
「…………ご主人は私に……名前を居場所をくれた……それが他の人の名前でも…………私は嬉しい」
ムツキが俺に優しく微笑む。俺はそれに対し何故か反論した。
「俺はお前を無月の代わりにしようとしていたんだ! 死んだ妹の変わりにしようとした! 俺を恨んでくれてくれて構わない! 俺はお前をお前として見ずに意識せずに無月として見ていたんだ!!」
これが俺の考えだったのか自分の意識していなかった感情を目の前に居る少女に全てぶつける。それを聞きムツキは何も言わずに俺を抱きしめる。
「お前を助けたのも妹に少し似ていたからだ。本当は助けるつもりも無かった。妹に似ていたから助けたんだ! 妹が両親が死んで変わりが欲しくてお前を助けたんだ!!」
ムツキは俺を抱きしめるのを止めない。
「…………辛かったんだね…………よしよし」
ムツキが俺の頭を優しく撫でる。俺はそれを受けて情けなく目から涙を流した。
「ああ辛かった! ずっと一人で辛かった! 妹が死に両親が死にどうしたら良いか解らなかった! 俺から全てを奪った殺人鬼も殺され俺はこの怒りを憎しみを何処にぶつけて良いか解らなかった!! 妹が死んで生きていて全てが憂鬱だった!!」
そんな俺をムツキは優しく抱きしめてくれる。
「…………良いんだよ……全て吐き出して……私がずっと一緒に居るから」
ムツキの声が俺の耳に入り込む、俺はムツキの胸に顔をうずめる。
「本当に一緒に居てくれるのか? 俺はお前を妹の変わりにしてお前を見ていなかったんだぞ」
「…………ご主人が望むなら……私は変わりになるよ…………ご主人の為なら……何だってする」
「なら約束してくれ。絶対何処にも行かないって! 俺を一人にしないって! 俺を置いて死なないって!!」
「…………約束する…………だからご主人も約束して……私を一人にしないって…………死なないって」
ムツキが強く俺を抱きしめる。
「ああ約束する。お前を一人にしない。お前を置いて死にはしない」
俺は泣き疲れムツキの胸の中で眠りに着く。
その日からムツキと共に寝る時にだけ俺に悪夢が襲う事は無く、変わりに別の同じ夢を見る事になった。その夢は白髪の女の子と共に俺が夢の中で寝ると言う意味の解らない物だった。




