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保険

「さて予備の作戦の内容について説明させて頂こうか」


 ライネスが何時も通り笑みを絶やさないまま説明する。


「今回俺は作戦失敗時に備えて一つの策を練っておいた」


「それでその策と言うのは?」


 クリシュがライネスに聞く。


「簡単な物です。クインの実千個を俺の「狂気爆弾」で爆弾に変えて市場で部下に売りさばかせました。食べればソイツは爆弾に変わり、食べなくても俺の好きなタイミングで破裂する爆弾となっています。クインの実の賞味期限は短いですからね。今頃腹の中でしょう。つまり爆弾になった人間が千人ぐらい、東の植民地に居るわけです」


 どうって事無いと言った感じでライネスは話す。それを聞きアーチェが激怒する。


「ちょっと! 今回の作戦で一般人の犠牲者は出さない様に言ったじゃない!! アンタ何考えてるのよ!!」


「王女様? まだ爆弾に変えただけだ。爆破はしていない。それに食べた本人達も自分が爆弾に変えられたとは思っていないが? 俺が爆破しなければ犠牲者は今の所出ない。何か問題でも?」


「そんな屁理屈が通用するとでも!? 今回の件は教会に報告して貰わせます!!」


 その場を立ち去ろうとするアーチェをクリシュが呼び止める。


「待てアーチェ! ライネス爆破していないと言う事は何かまだ有るのだろう?」


 クリシュの鋭い目線がライネスに突き刺さる。それをもろともせずライネスは話を続ける。


「流石王様! 話が解る。ええ勿論です。一般人をいくら爆弾に変えても異世界転移者は殺せませんからね。爆弾に変えた一般人共は所詮陽動です。本命は異世界転移者の殺害そこに変わりは無い」


「なら何故一般人を爆弾にした? お前の言う通りならば特に意味は無いのだろう?」


「目的は人払いです。今回の作戦は異世界転移者の暗殺、奇襲を目的に行動しました。ですが作戦は失敗に終わり次の奇襲の機会はもう無いでしょう。そこで次は異世界転移者発見前の元々の作戦である。帝国の魔術研究所を叩く方に変更します」


「帝国の魔術研究所? 実在するのか?」


「アルガスタの婚約者を拷問に掛けた所、実在する事が解りました。異世界転移者も厄介ですがこちらを先に叩いておいても良いかと」


 クリシュが考え込みそして口を開ける。


「その魔術研究所は異世界転移者よりも脅威になるのか? ボイスンは何と言っている?」


「雇い主様はどちらも叩けと言う事です。人使いが荒いことで。優先順位としてはやはり異世界転移者の方が高いですね。残り三十二人の能力者はやはりかなりの脅威です」


「それなのに先に研究所を叩くのか?」


「研究所を守る為に帝国は異世界転移者を出してくると思われます。ついでに数人は殺せるかと」


 帝国の魔術研究所を叩くのは理解できた。そのついでに俺のクラスメイトの異世界転移者を叩くと言うのもだ。問題はどうやって研究所を叩くかだ。そこの所を俺はライネスに聞く。


「話は理解できた。どうやって研究所を叩くんだ? 作戦を説明しろ」


「作戦についてだが、もう始まっている。アルガスタ殺害時に手紙を一通送った。その内容は十日後に魔術研究所を攻める事、そしてクインの実を爆弾に変えて食べたものを爆弾にした事、最後に爆弾に変えた者を魔術研究所に攻め込むと同時に爆破する事だ」


 その内容を聞きアーチェが怒る。


「結局殺すんじゃない!! 貴方は人を殺す事しか考えないの!?」


「落ち着けよ王女様! 実際に殺しはしない。この世界で教会に目を付けられて生きて行けないからな。あくまで植民地の中から人を追い出す為に使う。俺の能力で犠牲者を出さずに戦うのは面倒だからな。それなら先に人を追い出して置けばいい。これで魔術研究所を派手に壊しても一般人の犠牲者は出ないはずだ」


「そんな簡単に行くのかしら? 避難しない人も居るかもしれないじゃない!」


「部下に見張らせているが、今の所は一時避難の方向で話が進んでいるそうだ。作戦時には街中に人は居ないだろう。居たらそいつには残念だが死んでもらうがな」


 作戦の内容を聞くとクリシュが話す。


「ライネスお前にしてはシンプルな作戦じゃないか? 真正面からの攻撃なんて」


「俺も出来ればこんな作戦は使いたくないんですけどね。教会に目を付けられているし、雇い主からも出来るだけ犠牲を出さない様にしろとの事で。苦し紛れの策と言う事です」


 続けてライネスが話す。


「所で王様? この作戦の目的は魔術研究所の破壊が目的です。異世界転移者の方はついでです。そちらからも戦力を出していただきたいのですが? こっちの雇い主様はカズマ一人しか出してくれないので戦力不足なんですよ」


 クリシュがこちらを見る。それに対し俺は答えた。


「俺なら別に構わない。それが仕事ならな」


「今回の作戦は破壊が目的です。ユヅキ・サヤマは戦闘としてはそれなりに使えますが。他に出せないですかね」


「私の所の二つ名持ちは自分勝手な者が多いからな、私の指示を聞く者は居ないだろう」


「それなら仕方ないですね。俺とカズマそしてユヅキ・サヤマの三人でこの作戦を進めるとしましょう」


 俺に向けてライネスがボールを一つ投げ渡す。俺はそれを受け止めた。


「作戦開始は前回と同じくそのボールで知らせる。出発は今日を入れて二日後だそれまでに準備して置けよ」


 ライネスのその言葉を最後に作戦会議は終えた。

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