オスティニア戦争(前編)
一真からクラスメイトの能力を聞き終え屋敷に戻ろうと城を出る途中にクリシュに話しかけられる。
「……ユヅキ君少しいいかね?」
「問題無い。何の話だ?」
別に急いで屋敷に戻りたいわけでは無い。ここでクリシュの話を聞く時間は沢山ある。俺の答えを聞きクリシュは話始める。
「今回の君の任務はライネスに君のクラスメイト達の能力を教えるだけで。先ほど言った通り君は戦闘を行ったり、ライネスが行うそれ以外の行動に関わらなくていい。君は一度ライネスと戦いライネスがどういう人物かは解っているみたいだからね。必要以上に彼と関わる必要はない」
「ああ、解った。だが何故そこまでして、俺とクラスメイトを戦わせようとしない? 俺はアンタの私兵だ。アンタの命令には逆らえない」
俺がそう言うとクリシュは静かに答えた。
「それは、君が帝国に追われているからかい? 行く当てが無いから、だから私の命令は聞くと?」
「さっきの俺と一真の話を聞いていたのか?」
「悪いが君とカズマ君の話は聞かせてもらったよ」
まあ別に聞かれて困る話では無かったからな、これで困る事は特に無い。俺は黙って話の続きを聞く。
「ユヅキ君……。私はね。出来れば君の様な若い人に、それが例えこの世界の人物で無いとしてもだ。人を殺してほしくないんだ」
クリシュは顔を暗くしながら話す。クリシュただでさえ体調が悪そうな顔を悪くして俺に見せる。
「どうしてそこまで拘る? アンタはこの国の王だろ。帝国とは今戦争中のはずだ。同盟国の一部、オスティニア国もそれで滅びたんだろ? それならその時子供も当然死んだはずだ。それに対し同じ同盟国のこの国が何もしないはずが無い。兵を出したはずだ。当然俺ぐらいの年齢のも居ただろう? 王のアンタが何故そこまで怖がる?」
「怖がる? 君には私が怖がって見えるのか? それもそうかも知れないな……。オスティニア戦争あれは本当に酷い戦争だった……。私はあれ以来、人が死ぬのが怖くなってしまってね。部下に死ねと戦場に送り出す事が怖くなったんだ。戦場も教会とヤスティナ国の兵に任せてばかりだ。この国を守るべき王としては恥ずかしい姿さ……」
そう言いクリシュは自分を笑う。酷く哀れな姿だった。とてもこの国の王には見えない。
「そのオスティニア戦争ってそこまで酷かったのか?」
「君は異世界人だから知らないのは無理が無いね。君の妹のムツキちゃん、それとこれから同じ作戦を行うライネスはオスティニア人だ。知っておいて損は無いだろうな……」
クリシュは少し黙りしばらくして重い口を開き始めた。俺はその話を真剣に聞く事にした。
「………………あれは今から十年前の事だ。その時も帝国とは争っていたが、まだそこまで酷い物では無かった。何故なら帝国は世界統一の為にこの大陸の全てを統一する為に全ての国に同時に攻撃を行っていたからな。小さな同盟国に兵を出す余裕は無かった」
全ての国を相手に戦争を仕掛ける。とても正気とは思えない行為だ。世界統一が目的ならば一つづつ叩き取っていけば良い。一度にまとめて相手にしようなど無謀の極みだ。
「……だが、帝国が同盟国を無視できなくなる一つの事件が起きた。それは当時帝国の精鋭の一人十刀聖騎士総司令アイリッシュ・ユーステスが同盟国に対する戦争の戦場の視察中にオスティニア人の一人に殺されるという事件だ。その事件をきっかけに帝国は各戦場で活躍していた。十刀聖騎士、全十名の内七名を同盟国の戦場に投入した。十刀聖騎士一人は全て能力者で構成されていて戦場を支配するほどの力を持つ。それが七名もオスティニア国に襲い掛かってきたのだ」
「いくら総司令といえど場所は戦場だったんだろ? 偶然死んでも仕方ない事で済む。他の戦場を手薄にしてまで一つの国に執着するか?」
俺のその疑問に対してクリシュは答えた。
「アイリッシュ・ユーステスは十刀聖騎士総司令だけでは無く。帝国の帝王の息子でもあったからな。それが能力者では無い、ただの一般兵に殺されれば帝国の威信に関わる。さらに帝国の能力者による圧倒的支配にも揺るぎが生まれるからな。帝国がそれを許す訳が無かった」
その答えに対して俺は納得した、帝国はどうやら優秀な能力者を使い各戦場を支配して領土を拡大しているみたいだ。俺が納得するとクリシュは話の続きをした。
「当時の同盟国に能力者は一人も居なかった。その為オスティニア国以外の同盟している国は一つの決断をした。それは…………オスティニア国を見捨てると言う選択だ。その選択せざるを得なかったのは理由が有る。それは帝国がオスティニア人特有の銀髪の髪を持ったものを敵味方問わず殺し始めたからだ」
「それは自国の兵や民の銀髪を持つ者全て殺したと言う事か?」
クリシュは顔を暗くしながら告げた。
「──ああ、そうだ。帝国のオスティニア戦争での目的はオスティニア人全ての殺害に変わったんだ。その行為を命令しながら一言帝王は全ての国に告げた。「銀髪の髪を持つ者全ての首を差し出せ」ただ一言そう告げたのだ。当然帝国と敵対している国にも銀髪の髪を持つ者は居る。他の国は黙って銀髪の髪を持つ者達の首を差し出したのさ。大人も子供も老人も赤ん坊も性別も関係無く全て殺された。中にはオスティニア人では無い者も当然いる。だが帝国に首を捧げるしかなかった。その理由は単純だ第二のオスティニア国に成りたくなかったからだ」
俺はその発言を聞き考えた。十刀聖騎士の力は相当強力な物らしい、それが一斉に襲い掛かると国が簡単に滅びるほどの力だ。
それほどの力を持つなら、何故同時に全ての国を襲うと言う愚行に出たのだろう。クリシュの話によると帝国と他の国の戦いは硬直している様に
聞こえる。帝国もいたずらに死者を出すだけだろう。それなら能力者を使い一つづつ制圧すれば良い。それが出来ない理由が有るのか?
俺は考えを胸にしまって忘れる事にした。こんな事を考えても俺が戦争をどうにか出来るわけでは無いからだ。
黙ってクリシュの話の続きを聞くことにした。




