対帝国軍会議 その⑤
「ユヅキ君を借りたい!? どういう事だボイスン?」
クリシュがボイスンに尋ねる。
「なに簡単なことだ。俺の所は元々はライネスの力で成り立っていた。だが肝心なライネスは防衛向きでは無く、帝国に対する攻撃要因としての活躍が多かった。帝国が異世界転移者を召喚したおかげて俺の国の防衛が不安でね。二つ名候補達の育成がしたいと思っていたんだ。お前のとこには「剣鬼」と「魔女」がもう居るから二つ名候補が一人ぐらい減る事ぐらい構わないだろう?」
「そちらの国のカズマとライネスで転移者を叩くんだろ。どうして防衛にユヅキ君が必要になる?」
「いいや、行くのはライネスとそこに居るユヅキだ! カズマは異世界転移者の能力の情報を持っている。これを敵地で下手に失いたくない。そこのユヅキもカズマと同じ異世界人なんだろ? 情報の共有を行えば変わりにはなるはずだ」
そのボイスンの発言にクリシュは声を大きくして言う。
「ユヅキ君はまだ子供だ! 敵地でしかも同じ世界から来た同級生と戦わせる訳には……」
クリシュが最後まで話す前に俺が口を挟む。
「俺なら別に構わない。俺が出ないと話は進まないんだろ? 俺はアンタの私兵だ。アンタが決めてくれ」
俺は何の迷いも無くクリシュに告げる。ここで話が硬直しても話が長引き面倒な事になるだけだ。
「ユヅキ君良いのかい?」
「ああ」
俺達の会話を聞き終えるとボイスンは話す。
「話は決まったな。そこのユヅキは今回の作戦で使わせて貰うぞ。クリシュ!」
「ああ、解った! だがユヅキ君は戦闘には手を貸さない。私はまだ若い彼を人殺しにするつもりは無いからね。それで構わないか? ボイスン?」
「問題は無い。ソイツの役目はライネスに敵能力者の能力の情報を教える事だからな」
作戦の内容が決まり会議はこれで終わりかと思いかけたその時ライネスが口を開ける。
「おいおい! 勘弁してくれよ。俺はそこに居るユヅキ・サヤマに殺され掛けたんだ。俺を殺そうとしたヤツに命を預ける? それはごめんだね。雇い主様!」
ライネスは両手を横にして首を振る。
「ライネスこの話はもう決まった事だ! 金を払えば文句を言わず帝国を倒す。それだから帝国の植民地一つを崩壊させたお前を私は傭兵として雇ったんだぞ!」
ボイスンは口を大きくしライネスに告げる。それを聞きライネスは答えた。
「はいはい、雇い主様。大人しく傭兵をやりますよ。戦闘中俺を殺そうとしないでくれよ? ユヅキ・サヤマ?」
ライネスは笑みを浮かべながら俺を見る。俺はその目を見ながら答えた。
「お前こそ、俺を殺したいんじゃないか?」
「ああ、今でも殺したいさ。お前には俺の腕を吹き飛ばされた貸しが有るからな」
ライネスがこちらを笑いながら睨みつけてくる。何かを投げようとしてくる。俺はそれを見て反射的に木刀を構えた。
「……ユヅキ! 殺り合うならボクも手を貸すよ。ボクはアイツが嫌いだしね。ボクはキミの味方さ」
隣のフィルナルドの周りに魔法陣が浮かびあがる。その行動と共に周りに居る者達が戦闘態勢に入る。一真が何が起こっても良いように周囲に糸を張る。エルセリアは何時でもこの場を止められる様に剣を握っている。仮面の人物は座ったまま動こうとしなかった。
「ちょっと勘弁してよ。怪我をしたら治すの誰だと思ってるのよ!!」
アーチェが怒りながら注意するが場の空気は変わらない。ライネスは一つの球をこちらに投げた。俺はそれを手で受け止める。
「お前が味方の以上は殺しはしねぇよ。異世界転移者を使って帝国が動き出す前に行動したい。作戦は明日の朝一番に行う。そのボールが爆発したら迎えに行く。俺は作戦の準備が有るから先に会議を終わらせて貰うぜ。じゃあな! ユヅキ・サヤマァ!」
そう言うとライネスは笑いながらこの部屋から出た。それと同時に周囲の緊張が解けた。
「それでは今回の会議は終わりという事でいいかクリシュ?」
「ああそれで問題は無い。異世界転移者の対策は任せたボイスン」
その会話を最後に会議は終わった。それと同時にそれぞれが部屋から出る。俺も部屋から出ようとするが一真に止められる。
「何処に行くきだ? 有月?」
「屋敷に戻る」
それを聞き、一真はため息をする。
「有月、お前はほんと変わらないな。俺からクラスメイトの能力を聞くのを忘れてないか? 作戦は明日実行なんだぞ? 話を聞いていたのか?」
「解っている。一真。能力者の情報を聞こうか」
「正直俺は人選ミスだと思うがな。お前クラスメイトの顔と名前一致してないだろ?」
俺は何も答えない。正直言うと俺はクラスメイトのほとんどと会話していない為、名前など知らないし、顔もあやふやだ。
「はあ……。一応教えて置くぞ」
俺は一真からクラスメイトの能力の情報を得た。
「そもそも、お前どうしてこの場に居るんだ? お前の性格ならこんな面倒事に首を突っ込まないと思ったんだがな……。街で仕事でも探して日銭でも稼いで過ごせば良いだろう? どうして一番危険で面倒な事をしている? 何でライネスと共に行動し指名手配されている帝国に戻って、クラスメイトと戦うなんて面倒事をお前が選んだ? 断らなかった? お前と一緒に居た女はどうした?」
俺は考え込む、だが答えは出て来ない。
「……全て成り行きだ。俺自身が選んだ事じゃない。この作戦を引き受けたのはここの王に住む場所と仕事を与えてくれた仮があるからだ。ムツキは屋敷で待たせてる」
「そのムツキと言う名前は何とかならないのか?」
「もう名付けたからな。今更変えられない」
「お前ってヤツはほんとに……」
そう言い一真はため息をした。




