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対帝国軍会議 その③

 ライネスの発言と共に会議は始まる。


「さて、今回の議題の異世界転移者についてだが。これを知ったのはほんの偶然による者だ。俺が何時も通りに東の植民地に潜入しようとする。その時、魔術師の一人を捕まえた事でこの話は始まる。今回の俺の任務は東に有る帝国の研究所を叩く事に有った。ここ一か月そもそも東の植民地では不思議と有名な魔術師共が各地から集まっていた。俺は当初それは研究所に集まる集団だと思った。それで研究所に行くであろう魔術師を一人捕まえ拷問に掛けた。するとそいつはこう言った。「俺はサンク様に異世界転移者を召喚する為にここに呼ばれたと」俺はそれに疑問を持った。十刀聖騎士サンクの名は俺も知っている。だがヤツの担当は北だ。ここ東に居るのは可笑しい。俺は急遽予定を変更して、異世界転移者についてソイツに聞いた。だがソイツは異世界転移について詳しく知らないそうだった。そのため俺はソイツを爆弾に変えサンクの異世界転移とやらを探り阻止しようとした、だが……」


 ライネスが全て言い終える前に一真が口を挟む。


「それは失敗に終わった。現に俺達はこの世界に転移された能力と共にな」


 一真が自身の手から「愚者の糸」を使い糸を出す。一真により中断された会話の続きをライネスは続ける。


「ああ、そうだ。俺が爆弾に変えた魔術師による。異世界転移者の召喚の阻止は失敗に終わり帝国による新しい兵器となる能力者が三十九名も現れた。作戦が失敗に終わった事を知った俺は作戦を変え能力者三十九名の殺害を試みる事にした。途中でそこに居るカズマが味方に付いた事で能力者の能力を知るアドバンテージを得たからな。作戦は単純な物だった。爆弾に変えた市民共を次々とサンクの屋敷まで誘導して中に居る能力者共を全て市民共と共に爆破する。簡単な物だったがそれは失敗に終わった。そこに居る異世界転移者ユヅキ・サヤマによってな」


 ライネスが笑いながら俺を見る。俺はそれを睨み返した。


「えっ、ユヅキって異世界転移者だったの!? ムツキちゃんと兄妹だったからてっきりオスティニア国の人間だと」


 アーチェが会話に入り込む。


「あっ? オスティニア人の特徴は銀髪だろ。どうして黒髪のユヅキ・サヤマがオスティニア人って事になる?」


 ライネスが銀髪の髪を輝かせながら言う。


「……異世界転移者って事はユヅキも能力者なの?」


 隣に居るフィルナルドが手を離し不安そうに俺に尋ねる。俺は真実をそのまま告げる。


「ああ俺は異世界転移者で。能力者だ」


「そっか。ううん。ボクはキミが能力者でキミに対する好意は変わらないよ。キミはボクを大人扱いしてくれる希少な存在だからね」


 フィルナルドはテーブル下で俺と再び手を結ぶ。俺はそれを受け入れた。その手は小さな物だった。


「髪の色などそこまで重要では無いだろう。話を続けろ! ライネス」


 話を戻すためボイスンが割って入る。それに対し一真が話す。


「いやそれがそうでもないんです。ボイスンさん」


「どういう意味だ? カズマ!」


「俺達異世界転移者はほとんどが黒髪です。中には茶髪や、金色に髪を染める者もいますが。大体は黒髪です。ライネスが言っていましたが。この世界では黒髪と金髪そしてオスティニア戦争で数が減った銀髪は貴重なんでしょう? 俺と同じ年齢で希少な髪の色をした人間は全員敵って事ですよ」


 一真は淡々と喋る。


「君は同じ異世界から来た。仲間が殺されても問題無いと。そう言うのかい?」


 クリシュが一真に尋ねる。


「ええ、俺の覚悟は決まっています。敵であるなら容赦はしません」


 一真は何ともない顔で言う。


「ユヅキ君。君も異世界転移者何だろう? 君もそうなのかい?」


 クリシュは俺にも尋ねる。俺は少し考え込むが直ぐに答える。


「俺はある事情により帝国に追われる身だ。向こうが襲ってくるなら抵抗するしかない」


 それを聞くとクリシュは顔を暗くし「そうか」と言う。


 俺は生きる為に手段は選んでいられない。例え同級生を殺す事になろうとも俺は生きる為に戦うだろう。俺はそう考える。だが途中で違和感を覚える。

 俺は無月のもう存在しない世界で何の為に生きようとしているのだろう。

 この世界に来て俺は色んな敵と戦って来たそれはなんの為だった? 同盟国に向かう為だ。なら何の為に同盟国に向かった? そして到着して、何の為に俺はこれから戦うんだ? 俺に自分に対する疑問が湧いてくる。


 無月と両親の死んだあの日俺の人生は既に終わった。そして一真により無月と両親を殺した殺人鬼を殺されて俺は無月の居ない無意味な人生を送っている。仇ももう死に居ない・

 俺の人生は既に終わっている。俺は何でまだ生きようとしている? 俺の手が無意識に震えていた。それに気づきフィルナルドが心配そうに聞く。


「ムツキ? どうしたの? 大丈夫?」


「ああ、問題無い」


 俺は手の震えを止めそれに冷静に答えた。


「また話がそれ始めてきたぞ。俺も何時までも国を開ける訳には行かない。問題は残った能力者三十七名をどう対処するかだ。その数の能力者が襲いくればただでさえ瀕死の同盟国は持たないぞ」


 ボイスンがそう話す。


 会議はまだ始まったばかりだった。

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