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異世界で初めてのお風呂

 風呂場に着いた俺は脱衣所で汚れている服を脱ぐ。隣でムツキも服を脱いでいる。着衣を脱ぎ終わった俺達は風呂場の中に入る。

 風呂場に入った俺達の目にはとても巨大な浴槽が映る。

 広いな小さな温泉並みにあるぞ。近くには何らかの個室の様な者がある。まさか……サウナか?中世風の街並みを見ていたから清潔感のある生活は見込めないと思ったが、考えを改める必要が有りそうだ。


「……ここも……すごい……大きい」


 ムツキが目を輝かせ風呂を見る。驚くのも無理は無いだろう。ここまでの大きさは俺達二人で使うのには広すぎる。

 取り合えずはシャワーを浴びて身体を綺麗にしてから湯に浸かろう。俺は隣に居るムツキに話す。


「先ずはシャワーを浴びる。洗い方は解るか?」


「……ううん……解らない」


「解った。着いてこい」


 ムツキは小さく否定する。俺はシャワーヘッドが複数置かれているエリアまでムツキと共に移動した。

 シャワーの前に着いた俺に一つの問題が発生する。水を出すためのバルブが無い。これでは水が出せない。俺はシャワーの周りを見渡す。どうやってお湯を出すかが解らない。近くに石鹸は有る。なら問題なく使用できるはずだが……。

 エルセリアに聞きに行くか?いや一度脱いだ服をまた着てわざわざ聞きに行くのはとてもめんどくさい。

 自力で解決するか……。俺はシャワーの周りを観察しながら触る。それをムツキが裸で見ている。勿論俺も裸だ。


 俺達二人は裸でシャワー一つに苦戦すると言う間抜けなざまを見せている。おもに俺がだが。


 シャワーを見ていると一つの魔法陣が書かれているのを見つける。もしかしてこれに手をかざせば良いのか?

 俺はそこを触る。


「……あちっ」


 突然全身にお湯が俺に降り注ぐ俺はそれを受けて小さく声を出す。その声を聞きムツキが心配そうに声を掛ける。


「……大丈夫? ……ご主人?」


 俺はその言葉を聞き問題無い様に振る舞う。


「ああ、問題無い。ムツキここの魔法陣に触れるとお湯が出る。やってみろ」


「……わかった……ご主人」


 俺を真似しムツキがお湯を出す。出てきたお湯を全身に浴びムツキは喜ぶ。


「……できた」


「よし、そしたら次は身体を洗うぞ。まずこの石鹸を泡立てるんだ」


 俺は近くにある石鹼を持ち泡立て、その泡で身体を洗う。見たところここにはスポンジが無い。贅沢は言えない手で直接洗うしかないか……。

 俺は泡を手で身体に付けて洗う。普段スポンジで洗っていたから違和感がある。洗いずらい。まあ異世界だからスポンジが無いのは仕方が無いか。この程度の不便なら仕方が無い。


「こうやって全身に泡を付けていき、身体を洗うんだやってみろ」


「……うん」


 ムツキは俺の真似をして体を洗う。だが途中で問題が発生する。


「……ご主人……背中に……届かない」


 ムツキの手では背中まで洗う事が出来ないのだ。まあ俺もあまり届いてないが。仕方が無い背中は諦めろと言う前にムツキが声を出す。


「……ご主人……洗って」


 思考が一瞬止まる。スポンジ越しならまだしも手で直接洗えと?


「ムツキ。男女同士が簡単に肌を触れるのは良くない」


 俺は当然否定する。だがムツキは諦めていなかった。


「……ご主人……私達は……兄妹……だから……問題無い」


 ムツキが俺の前に立ち背中を洗うように迫りくる。確かに幼い頃、無月の背中をよく洗ったなスポンジでだけど。


 俺は少し無月の事を考えた後、ムツキの背中を洗う事にした。柔らかい肌が泡越しに感じる。

 あまり意識しない様に俺はムツキの背中に泡を付けて洗う。それをムツキは受け入れる。


 昔を思い出す、無月の背中を洗う時もこんな感じだったな……。スポンジを使ったが。ムツキの背中を洗い終わると俺はついでなのでムツキの髪の毛も洗う事にした。石鹸を泡立てムツキの綺麗な銀髪に泡を付けて洗う。ムツキは気持ちよさそうな声を出す。


「痒い所は無いか?」


「……気持ちいい」


「…………そうか」


 ムツキの身体と髪を洗い終えると俺はシャワーからお湯を出しムツキの身体にかけて泡を落とす。すると汚れが落ちムツキの傷一つ無い綺麗な身体が現れる。髪も先ほどよりも輝いて見える。


 俺はそれを見て一瞬無月のバラバラの死体が頭に浮かんだ。理由は解らない。ムツキを見ていると無月の事を何時もよりよく思い出させる。それに対し俺は複雑な感情を胸に残した。


「……今度は……私が……ご主人の背中……洗う」


 ムツキは石鹸で泡を立てて俺の背中を洗う。無月は俺が背中を洗ってやると決まって最後は俺の身体を洗う。

 俺はそれに懐かしさを感じ静かに受け入れた。ムツキが俺の背中を洗い終えると俺達は湯銭に浸かろうと入る。

 湯銭は二つ有った、この屋敷はやたらと金を掛けてるなそう考え俺は湯に足を入れる。その瞬間俺の足に冷たさを感じる。


 ハメられた。水風呂だ! これ。先ほどまでシャワーを浴び暖かかった俺の身体に冷たさが襲い来る。俺はすぐさま水風呂から足を出した。隣でムツキが水風呂に入ろうとしている、俺はそれを慌てて止める。その後俺達は隣の暖かいお湯に浸かった。


「……暖かい……ご主人……暖かいね」


「ああ、そうだな」


 先ほど水風呂に入った足がまだ冷たい。キンキンに冷えていた。一体何℃だったんだ? あの水風呂。俺は足の寒さを紛らわす様に暖かいお湯に肩まで浸かる。


「……ご主人……寒いの?」


「ああ、さっきの水風呂がまだ響いている」


「……何で……温まるはずの……お風呂が……冷たいの?」


 ムツキは俺に聞いてくる。水風呂とサウナは一緒に使うらしいが俺はサウナについてよく知らない。


「さあ? 俺には解らん」


「……ご主人にも……解らないこと……あるんだ」


 この世界の事は俺には全て解らない事だらけだ……。それでもムツキは俺を信頼してくれている。


「……なあムツキ? 風呂は広いんだ。こんなにくっつかなくても良いんじゃないか?」


「……? ……こっちのほうが……暖かいよ?」


 広い湯舟の中ムツキは俺の肩にくっついている。まあムツキがその方が良いなら良いか……。


 後日エルセリアに聞くと脱衣所にスポンジが置かれているそうだった……。

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