不審な死体(後編)
ラクギリヤと部下それとボーエルはサンクの死を聞き。サンクの遺体が有るというサンクの屋敷に向かっていた。
「いまだに信じられねぇな……。サンクの爺さんが事故死ならまだ解る。だけど話によるとバラバラにされて死んでるんだろ? 俺達十刀聖騎士は全員が能力者だ。殺されたとしたなら同じ能力者によるものしかあり得ねぇ。考えられるのは異世界転移者の誰かが殺したのかだ。能力者なんて目立ちたがり屋が多い。自分の能力を過信しているからな。街に他の能力者が入ってきたと言う情報は無いんだろ? ラクギリヤ?」
ボーエルは歩きながらラクギリヤに話しかける。
「ああ、「墜国」以外の侵入者は居ない。異世界転移者が殺したと考えるのが自然だな……」
「そんなヤツが居るかも知れないのに、俺に異世界転移者の面倒を見ろと?」
「……その話は後にしよう。今はサンクの状態を確認しておきたい。能力の情報が解るかも知れないからな」
その会話を遮り部下が口を開ける。
「それがどうも異世界転移者達はサンク様の死に無関係そうなのです!」
部下の発言を聞きボーエルは尋ねる。
「それはどういう意味だ? 転移者が現れてすぐにサンクの爺さんは死んだんだろ? なら転移者が殺したと考えるのが自然じゃあねぇか?」
「……遺体を見れば解るそうです。どうぞ、こちらです!」
屋敷の上部分が崩壊したサンクの屋敷に到着したラクギリヤ達は部下の案内で地下に案内される。
「屋敷の地下はどうやら隠し扉になっており発見が遅れたそうです!」
部下はそう言い部屋の下にある床の一部を持ち上げる。すると下に向かう為の階段が現れた。それと同時に腐敗臭が流れる。
「……凄い臭いだな」
「この臭いを感じ隠し扉に気が付いたそうです」
ラクギリヤ達は地下室に向けて階段に足を乗せ歩き始める。下に向かうのと同じく腐敗臭は強くなる。
地下室に着いた彼らに待っていたのは大量の死体だった。死体は虫に塗れており、とても悲惨な光景だった。
その死体を見て冷静にラクギリヤは部下に尋ねる。
「死んだのはサンクだけでは無かったのか?」
「服装からしてサンク様の雇っているメイドや魔術師のものだと思います」
部下は吐き気を堪えながら答える。それを見てボーエルは言う。
「……状況は見た。ここでは話にはならないだろ。上に戻ろう」
ラクギリヤは自分の金の髪を触りながら答える。
「ああ、その方が良さそうだな」
死体を放って置きラクギリヤ達は地上に戻る。地上に戻ると同時にボーエルは口を開ける。
「……鼻がもげるかと思ったぜ。……でだ、ラクギリヤ? あの遺体の状況どう思う?」
部屋の窓から外を見てラクギリヤは答える。外には所々に溶けかけの雪が存在する。
「春が近いとは言え、今はまだ冬だ。夏場よりは死体の腐敗は遅い。場所も地下室だ。腐敗の進みは夏より遅い。少なくとも一か月以上前に殺されたものだな……。それだけでは無い腐敗状況から遺体は殺された時期が違う。少なくとも犯人は長期間はここで人を殺していた事になる」
「俺も同意見だ。サンクの爺さんの死体は一番腐敗が進んでいた。だがそれは可笑しい。ほんの四日前に異世界転移者達がサンクに会ってたて言うじゃあねぇか? 腐敗状況からしてサンクの爺さんが殺されたのは少なくとも一か月前だ! どうなっていやがる!?」
「異世界転移者はサンクの見た目を知らない。サンクの偽物が転移者達の前に現れたとしか説明できないな。まあ偽物かどうか尋ね様にも死体はあの有様だ。とても区別出来ないだろう」
それを聞きボーエルは慌ただしく聞く。
「なら、目的は何だってんだ! サンクの爺さんに化け異世界転移者達を召喚しただと? そもそもの話サンクの爺さんが異世界転移者を召喚を提案し実行の為にここに来たのは三か月以上前だ! 俺達はその報告を聞きサンクの爺さんの異世界召喚を止める為に来たんだろ!? 何で偽物のヤツがサンクの爺さんを殺し異世界召喚を実行した? 訳が解らない! 更にだ! 異世界転移の方法何て爺さんのヤツ何処から見つけた? 中央の魔術書にもそんな事書かれて無かったんだろ? 異世界から人を呼ぶ? 馬鹿げていやがる! そんな事聞いた事が無いし、歴史上一度も起こった事がない!!」
「落ち着けボーエル!」
そのラクギリヤの声を聞きボーエルは冷静さを取り戻す。
「すまねぇな、頭に血が上っていた。だがそもそもだ。爺さんは何でここで異世界召喚をしようとしたんだ? サンクの爺さんの担当は北だろ? 何で東のここにわざわざ来て異世界召喚を実行しようとした? 北でやればいいだろ?」
「それは解らない。だがサンクは三か月前に我々中央に異世界転移者を召喚してその召喚した能力者を使い魔王攻略を行うという手紙を出した。私達中央はその行為により十刀聖騎士のパワーバランスが壊れると危惧した。その為、私はここ東を担当しているアルガスタと君の協力を得て、異世界召喚を阻止するように動いたのだが……」
その言葉を言い終わる前にボーエルは口を開ける。
「阻止できなかった。だろ、召喚されたモノは仕方がねぇで済む。しかしこの遺体の多さは何だ? サンクに化けるならサンクを殺せば済む事だろ? だがメイドや、サンクが異世界召喚の為に各地から呼び出した魔術師達まで殺されている。それも時期はバラバラだ。それなのにだ。転移者達はメイドや魔術師達を見たと言っている。メイドや魔術師達はこの街から出てないんだろ? サンクの偽物だけでなく、メイド達の偽物も用意したのか? 二十名以上の偽物を何故? 何でここまで手間を掛ける? 意味が解らねぇ。それに肝心の偽物の行方が解らない。街の監視は万全なんだろ?」
「ここ四日の間に偽物達が出たという情報は無い。監視の方も問題無く機能している」
「なら、まとめて神隠しにあったとでも言うのか? 神隠しなどお伽話の幻想だ! そんな物存在する訳が無い!」
ボーエルのその発言を聞き吐き気を抑え込んでいた部下が驚く。それを見てラクギリヤはその発言を取り消すように言う。
「ボーエル! 神の存在の否定は教会に背くことになるぞ。聞かなかった事にしよう。君もそれでいいね?」
「は! ラクギリヤ様!」
部下はなにも聞いていないと言ったのを確認し、ラクギリヤは小さく呟く。
「…………しかし、神隠しか、その言葉は異世界より召喚された彼らがもっとも相応しい言葉だな」
「何か言ったか? ラクギリヤ?」
「いや、何でもないさ。それより今の話をしよう。サンクが死んだ以上話通りに北側は君に任せたい。細かい事はアルガスタが戻ってから決めよう」
「……暇はもう出来なさそうだな。解った。それで話を進めようじゃあないか」
その言葉を最後にラクギリヤ達は屋敷を後にした。
(…………世界の扉を開ける準備はできたな。この異世界転移事件のおかげで扉を開ける鍵はそろい始めている。問題は何時開けるかだ。その機会は私が生きている間ではもう無いだろうからな。少年、君は一体何処で何をしている? 私を楽しませてくれ)
ラクギリヤは金に光る自身の髪を触りながら、その野望を胸に隠した。




