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魔女

「どうも始めまして。今日からここに住むことになったユヅキ・サヤマです。よろしくお願いします」


 俺が自分の名をエルセリアをポカポカと叩く「魔女」に伝え挨拶する。それに続きムツキも挨拶をする。


「…………ムツキ・サヤマ……よろしく」


 「魔女」はエルセリアを叩くのを止めムツキに近づき、ムツキを首を上に向け見上げ口を開ける。


「──大きい」


 それを聞き俺はムツキと「魔女」の身長を目でざっと確認する。ムツキの方が身長が十ほど高そうだ。

俺の身長は百七十センチ、ムツキの身長は俺の頭一つ分より大きな差があるから大体、百四十センチくらいだろう。

 それに対し「魔女」は十センチぐらい小さい。かなり小柄な体系だな。被っている帽子やローブ全てがぶかぶかで身長に対し合って無いように見える。


 この「魔女」は自分の身長をどうやら気にしている様だ。俺達はこれからこの屋敷に住むことになる。当然この「魔女」とも長い付き合いになるだろう。身長の話はしない方がよいだろう。

 そう考えているとムツキが口を開ける。


「…………私より……小さい」


「? なんていった! このー!」


 ムツキのその発言を聞き「魔女」は怒りながらムツキを下からポカポカと叩く。叩かれているムツキは痛みを全く感じてなさそうだ。

 ほっといても問題は無さそうだ。それを見ていたエルセリアがそれを止める。


「私に自分より若い者を虐めるわりにはフィルナルド、貴方は自分より遥かに若い子を虐めるのですかな?」


「ほっといてよエル! この子ボクが小さいからってバカにしているんだ!」


「…………別に……馬鹿には……してない」


「ほらそうやって見下してる! そうやってボクをバカにしているんだ! 上から見下しているんだ! うわーん」


 フィルナルドはムツキを叩く手を止めない。俺も止めた方がいいかな。


「フィルナルドさん、ムツキは人見知りであまり人付き合いに慣れていないんです。どうかその辺で勘弁して頂けませんか?」


 俺は慣れない敬語を使う。この人はどうやら色々と五月蠅そうだ。慣れて無くても使った方が良さそうだ。


「そこの君! たしかユヅキ君と言ったね! 今何て言った? もう一回言ってくれたまえ!」


 何か不味いことでも言ったか? 面倒な人だな。そう思い俺はさっき言った発言を繰り返す。


「ムツキは人見知りであまり人付き合いに慣れていないんです。どうかその辺で勘弁して頂けませんか?」


「違う! 違う! その前だよ! そ の ま え !」


 ムツキを叩くのを止め。急かすようにフィルナルドは俺に迫りくる。俺はその迫力に押されフィルナルドの名を呼ぶ。


「フィルナルドさん」


「そう! それだよ! エル見てごらんこの世界にはボクを子供扱いしない人が居るんだよ!! さあ、ユヅキ君! もう一度名前を!」


 俺はオウムのようにその名を繰り返す。


「フィルナルドさん」


「ああ! いいよ! もっともっと! 呼んでくれたまえ!」


「フィルナルドさん」


 フィルナルドは俺に名前を呼ばれると顔を赤らめ照れる。


「フィルナルドそこまでにしておきなさい。自分の年を考えてください。見ている私が恥ずかしいです。それよりユヅキ殿やムツキ殿に早く自分の自己紹介をしてはいかがです」


 エルセリアがフィルナルドを止める。


「そうだねエル! 自己紹介が遅れたよ! ボクの名はフィルナルド・エセンティス・ユースティラーナだよ。ユヅキ君! 君には気軽にフィルって呼んで貰いたいな!いやぜひとも呼んでくれたまえ」


 フィルナルドが無い胸を張り自信満々に自分の名を俺達に告げる。


「…………フィル」


「ムツキ! 君はダメだ! その呼び方はユヅキ君だけが呼ぶものだ!」


 俺はフィルナルドを見る。フィルナルドは身長がとても小さく自分の身体に合わないとても大きな帽子やローブを纏っている。その服装は魔女を思わせる。髪の毛は緑色で大きな帽子からは大きなポニーテールが垂れている。もみあげは胸まで届いていて、ポニーテールをほどいたら地面にまで届くほど長い髪だと解る。眼も髪の毛と同じく綺麗な緑色だ。

 エルセリアが言ってたが年は俺達も上らしい。見た目からは性別が男とも女ともどちらにも当てはまりそうなくらい特徴が無い。声も高くそこからも性別は窺えない。


 話していると地雷になりそうな特徴が多すぎる。先ず身長の話はダメだ。それに合わせ年齢の話も触れない方が良いだろう。話には出て来なかったが性別に触れるのもマズそうだ。


「ねえ。ユヅキ君! フィルって言ってよ! ね~え!」


「まだ親しくないのでフィルナルドさんで勘弁してください」


「まだって事は親しくなったら呼んでくれるんだね! じゃあこっち来て!」


 逆らうと面倒そうだ。それにこれから同じ屋敷で暮らす中になる、大人しく従うか。俺とムツキは何処かに行こうとするフィルナルドの後を追おうとする。


「ムツキはダメだ! エル! ムツキと一緒に買い出しに行ってくれたまえ。今日は二人の歓迎会をしよう。盛大にね!!」


「二人の歓迎会なのにムツキ殿に歓迎会の準備をさせるのですか? フィルナルド?」


「いいから行くんだ! ボクはユヅキ君と二人っきりでやる事があるからね! エルは豪勢な食事を頼むよ」


 隣に居るムツキが俺を見つめる。この屋敷に住む以上フィルナルドとは仲良くした方が良いだろう。


「ムツキ買い出しの方頼めるか?」


「…………うん……ご主人」


 ムツキは俺と離れるのを嫌がっているを顔を見て解る。それを知らずにフィルナルドが俺の手を引っ張る。


「フィルナルド。貴方は全く自分勝手な! 仕方がないですね。ムツキ殿行きましょう!」


「…………うん……エルセリア」


 エルセリアがムツキを連れその場を離れた。残されたのは俺とフィルナルドだった。


「じゃあ行こうか! ユヅキ!」


 ムツキと離れるのはムツキと出会ってから初めてだな。

 

 そんなことを考えながら、いつの間にか俺の事を呼び捨てにしたフィルナルドの後を俺は着いていく。

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