愚者の糸 その①
「…………ご主人……どうする?」
現在俺達が向かう門は二人の男によって塞がれている。周りには五十ぐらいの爆弾にされた民衆がいる。一人はライネスと名乗る男、もう一人は親友の一真だ。二人がどうやって知り合ったのか知らないが、一真がいるのであれば何の問題は無い。
「このまま、門に行く」
俺は一切の迷い無くそう言い門に向かう。
「…………ご主人が……行くなら……着いてく」
ムツキは覚悟を決めその後を着いてくる。
ライネスと名乗る男のことは俺は知らないがもう一人が一真なら問題は無い。
この門にこの時間に門に向かえと言ったのは一真だ。どうしてライネスと言う男と共にいて、虐殺行為を止めずに見ているのかは、知らないが、長い付き合いの俺には解る。これはこの騒ぎを利用して門を抜けろ。そう言うことなのだろう。
門に近づくと気づかれたのかライネスに話しかけられる。
「そこのお前たち、動く事。それを許可した覚えは私には無いんだがな。死にたいのか?」
ライネスがそう言い爆破の能力で俺達を殺そうとする。
「……待て。そいつが約束のヤツだ」
一真がそれを止めると。ライネスは「へぇ、コイツが」と言い爆破しようとするのを止めた。それを確認して一真が話しかけてくる。
「この門を抜けて同盟国に行け。道は覚えているだろ? 所でその少女はどうした?」
「大丈夫だ覚えている。少女は拾った」
「拾ったってお前な……。まあいい。行け」
一真が呆れ気味にそう言ったのを聞き俺はムツキと門を抜けようとする。
「大丈夫だ。ムツキ行くぞ」
「……わかった…………ご主人」
俺達のその会話を聞き。門を通ろうとする俺達に一真は話しかけてきた。
「おい待て。今その少女の事を無月と呼ばなかったか? どうして? よりにもよってお前が! その少女の事を無月と呼ぶ!」
一真は怒り気味に俺に聞いてくる。拳を握りしめ、今にも俺を殴りつけて来そうだ。
「拾った時に名前が無かったから、名前を付けたそれだけだ。もういいか? 俺達は行くぞ」
混乱しているムツキの手を軽く握り門を塞ぐ二人の横を通り門を抜けようとする。
「ここを通す訳には行かなくなった。通りたければそこの女を置いていけ」
「長い付き合いだが、お前に幼女趣味があったとは俺は知らなかったな」
「俺もだ!お前が何処ぞと知らない女に自分の死んだ妹の名前を付けるとは知らなかったぞ!!」
ムツキと一緒に行く俺をここから通すつもりは無さそうだな。俺はムツキを置いて通るつもりはない。ならやることは一つしかないな……。俺は手に持っている木刀を構える。
「ムツキ下がっていろ」
「……はい……ご主人」
ムツキは不安そうに俺の隣から離れ後ろに行く。
「カズマ手を貸してやろうか?」
ライネスは楽しそうに一真に聞く。
「約束を忘れたか? コイツに手を出すな。そういう約束でお前と協力したはずだ!」
「忘れてはいないさ。ただ聞いてみただけだろ。俺は先に作戦を進めるぞ。速く終わらせろよ」
ライネスはそう言い門から離れ民衆の元に向かう。
「……有月、どうしてもその女を置いて行かないんだな……」
「ああ、俺はムツキと同盟国に行く。それを邪魔するなら一真お前でも容赦はしない」
俺は木刀を一真に向けて思いっきり振るう。だがその木刀は一真に当たることは無く宙で自然と止まる。木刀を思いっきり振るおうとしてもビクともしない。俺はすぐに木刀に小さい糸が絡み、そのせいで空中で止まったままだと気づく。
「糸を絡めて木刀の動きを止めたか」
俺は木刀に絡みつく糸を手で取ろうとするが外れることは無い。
「……どんな物にも名前は存在する。物や現象に名前を付けるのは当然の事だ。名前が無ければ人から人にそのモノを説明することが出来ないからだ。当然俺の能力にも名前を付けた。名前は「愚者の糸」そう名付けた」
糸を手で取るのは不可能か、ならば能力には能力をだ。俺は自分の能力を使う対象は今俺が触れているこの糸。それを、能力を使い糸の繊維をバラバラにする様に弱くする。すると糸の縛りは緩くなる、糸が緩くなったのを木刀を使い押し切る。
「自分の能力に愚者と名付けるとはな。俺は全然お前のことは愚者だとは思わないぞ」
「いいや。俺は愚者だ。お前の家族を妹を俺は助けられなかった! 俺は愚か者だ」
「アレは仕方が無かった。どうしようも無かった事だ。お前が気に病む事は無い」
俺は再び木刀を一真に向けて振るう。それを一真は糸を使い止める木刀は一真にぶつかることなく止まる。
「俺があの時……間に合っていれば、もっと早くたどり着いていれば……せめて、お前の妹だけは」
一真の出す糸が俺に絡みつき身動きを取れなくする。
「有月お前をこのまま門の外に放り投げ捨てる。そのまま同盟国に行け。このままここに戻ってくるな……」
糸が俺に纏わりつく。
「……ご主人!」
心配そうにするムツキの声が聞こえる。
「問題ない」
俺は自分の能力を使う。俺の能力は触れた所に発動する。今糸は俺の身体全体に触れている。能力を使って糸を解くのは容易い。
問題無く糸は能力により解かれた。




