初戦闘
──カンッ!!
木刀同士がぶつかる。
その衝撃で俺の身体がぶれる。金髪の男は身体の軸をずらさずに俺に向けて木刀を振るう。それを何とか木刀で受け流す。再び金髪の男が木刀を振るう。俺は何とかそれを受け流す。それを何度も繰り返し続ける。防戦一方だ。手が痺れてくる。
「刀を持ったことが無いという割には中々やるではないか! 少年!」
金髪の男は余裕そうに話しながら刀を振るう。それを受け流す。
「……っく」
俺は余裕も無く口から声を出す。剣道などの習い事や運動をしていない万年帰宅部の俺の身体が悲鳴を上げているのが簡単に解る。このままやっても俺は敗北を待つばかりだ。元々有るかも判らない自分の剣の才能を期待して戦うつもりは無い。
「動きが悪くなってきたぞ! 少年! 君の能力は火だったのだろう? その能力使っても構わないぞ」
男は余裕そうに話す、当然最初からそのつもりだ。能力は火ではないがな。俺は自分の身体の速度と手の力を能力を使い上昇させる。向かってくる男の木刀を俺は受け流し、男の身体を狙いに入れ木刀を振るう。
「火は出さないようだな……。だが先ほどよりもいい動きをするようになった!」
俺の木刀は男には届かず軽く払われる。そのまま木刀はこちらに振るわれる。それを木刀で受け流そうとするが間に合わない。
早い。
俺は自身の動体視力を能力を使い上昇させる。木刀の動きはゆっくりになる。だが身体は上昇した視力に追いつかない。続けて俺は自分自身の身体能力を能力により上がった動体視力に合わせるように能力を使い合わせる。問題無く木刀を受け流し、男の胸を刺すようにに木刀を突く。上昇した能力で放つ突きを男は難なく躱す。
これでもダメか……。
「驚いたぞ。少年! この短い間でここまで腕を上げるか! 能力を得たことによる身体能力の強化が馴染んできたのか?」
男は未だに余裕を崩さない。
「……そんなこと。俺が知るか!」
俺は自分の能力を今持てる最大限を使い自身の力と速度をこれでもかと上昇させ、木刀を男に向けて再び振るう。俺の木刀は、男の振るう木刀にぶつかり鍔迫り合いになる。
「私の名前はラクギリヤ・ユーステスだ! 少年! 君の名前を聞こう!」
「貴様に答える名前は無い! それよりも何故真剣の方を使わない?」
「……この剣達は、振るうべき相手を見て振るう。少年! 君はまだその相手ではないという事だ! だからこそ、私は! 少年! 君の名前を聞きたい!」
「……断る!」
俺は木刀を持つ手に力を更に込め、思いっきりラクギリヤの木刀を払い捨てようとする。するとラクギリヤの手からするりと木刀が落ちる。
「……今だ。ムツキ行くぞ!」
俺は男から遠のき、ムツキの手を掴みその場から急いで逃げようとする。
「……わかった」
ムツキは俺の手を固く握り返し、走る。
ラクギリヤ達は俺達を追ってくる気配は無い。俺達はその場からの逃走に成功した。
「追わなくても、宜しいのですか?」
部下はラクギリヤに尋ねる。
「ああ、構わない。私たちはまた会うことになるだろう」
「……はあ? わかりました。十刀聖騎士総司令ラクギリヤ様」
「ここには、もう用は無い。一度サンクの屋敷に戻るぞ」
「了解です!」
ラクギリヤは地面に落ちた自分の木刀を拾い腰に戻し呟く。
「……少年。君の名前が聞けなかったのは実に残念だったが、私たちは必ずまた会うことになる。あの刀が君が持つ限り必ず出会う事になる。次に会うときまでに更なる力を手に入れている事を期待しているぞ。少年……」
ラクギリヤは静かに笑うとその場を後にした。




