第4話 犠牲
岡崎先輩と分かれたあと、私はオカルト研究部の部室に向かっていた。
優子を連れて今日のところは帰ろう。桃園さんも連れて。
「優子、桃園さん。岡崎先輩先に帰ったから私達も……」
ドアを開けるとそこには数人の生徒と、羽交い締めにされている桃園さん。
そして震える指を十円玉の上に置きコックリさんをしている……いや、させられている優子がいた。
「優子、何をやって……」
「あさひ……!」
優子が立ち上がり、こちらに向かおうとする。
その瞬間、桃園さんの声が響いた。
「離しちゃダメっす!」
桃園さんの声に優子の動きが止まり、席に座り直す。
「帰ってもらうまでがコックリさんっす。今指を離したら失敗になるっす」
「余計な事を」「あと一人で気狐様が来られるのに」「本当に殺してしまうぞ」
周りの生徒達が口々に桃園さんを責める。
一目で分かる。全員取り憑かれている。
「優子、なんでこんなことに」
「急にこの人達が部屋に入ってきて、コックリさんをしないと桃園さんを殺すって言われて、それで……!」
「脅せばコックリさんをしてくれる」「もっと早くこうすればよかった」「私達は頭がいい」
強硬手段に出たってこと?私が優子を連れてきたから……いや、その場合は桃園さん自身がターゲットになっていた。
「そうだ、こうすれば早い」
「ぐえっ……」
生徒の一人が桃園さんの首を絞め始める。
「十円玉から指を離せ」「なるほど、そうすれば早い」「やはり私達は頭がいい」
「下衆が……!」
桃園さんが顔を赤らめ、バタバタともがき始める。
私が桃園さんの方に向かおうとするが、取り憑かれた生徒達が壁になり進めない。
鬼宮さんならこの程度薙ぎ払って進めるのに!
「あさひ……ドラキュラ伯爵の時のこと、覚えてる?」
優子が不意に私に話しかけてくる。
「優子!今そんな話してる場合じゃない!」
「ごめん。でもちゃんと伝えておきたくて」
「……優子?」
優子の言葉に、私は振り返る。
優子はなにか、覚悟を決めた顔をしていた。
「あの時は結界の御札剥がしちゃって、今はコックリさん。あの時は知らなかったけど修学旅行の時も人質にされてたんだってね」
「優子、何を言ってるの」
「いつもいつも足引っ張ってごめんね」
「そんなの気にしてないよ。だからやめて」
「ううん。これ以上は桃園さんが本当に危ない」
桃園さんの顔を見ると、顔色は紫色で、ぐったりとしていた。
「最後にひとつだけ聞いて」
優子が泣きそうな顔で何かを伝えようとする。
嫌だ、聞きたくない。
「あさひのこと信じてるから。あとはお願い」
私の言葉にならない叫び声は届かず、優子は十円玉から指を離した。




