第3話 自称オカルトマスターの岡崎先輩
「悪いわね付き合ってもらって」
「別に危険なことするわけじゃないんでしょ?オッケーオッケー」
翌日、私は約束通りオカルト研究部の部室へと向かっていた。
約束と少し違うのは一ノ瀬師匠ではなく優子と一緒に行っているということだ。
一ノ瀬師匠は昨日に引き続き弓を使う仕事があるからと彼方のところへ行った。
私も弓使えるんだから私も呼べばいいのに。
鬼宮さんもなんか彼方が今後出てくるやつを予測した結果、屋敷で待機することになったと言っていた。
鬼宮さんといつも二人一組な小宮さんも一緒。コックリさん調査部隊は私一人になった。
一人で調査するのもなんかさみしいからこうして優子に来てもらった。
毎日頼むわけにはいかないけど、たまにはいいでしょ。
「失礼しまーす」
「あっ、来たっすよ!この人達……あれ?昨日と違うっす」
「吉井優子です。よろしく」
部室の中には部長ともう一人、男の人がいた。
「桃園さん。その人が岡崎先輩?」
「いかにも!天知る地知る人が知る!流守が誇るオカルトマスター岡崎とは、あ、この僕のことだ!」
訂正。変な人がいた。
というか歌舞伎みたいに名乗ったくせになんでダンサーみたいに上を指差すポーズしてんのよ。チグハグじゃない。
「かっこいいっす先輩!」
カッコいいか?これ。
「それで君の名は何というのかな?」
「桃園さんから聞いてないんですか?」
「そもそも昨日名乗ってないっす!」
あれ、そうだったかな。言われてみればそうだったかも。
「私の名前は田中あさひです。昨日一緒に来たのは一ノ瀬師匠……一ノ瀬龍です」
「そうかそうか。では龍クン!話を始めようではないか!」
「私あさひです岡崎先輩」
「では桃園部長よ!優子クンのことをよろしく頼むぞ!」
「はい!任せてくださいっす!」
「外出るの?別にここで話しても良いでしょうよ」
「乙女の秘密というのは聞かれる人数が少ないほうがいいだろう?」
「別にそういう話じゃないんで気にしなくていいですよ」
「乙女は僕の方だ!」
「岡崎先輩男ですよね!?」
「さあ行くぞ!時は金が鳴るなりいざ鎌倉だ!」
よくわからないテンションに押されて、私は岡崎先輩に連れ出されるのだった。
―――
連れ出されたのは廊下の端っこ。人のあまり来ないところだった。
「さて、それでコックリさんの何が知りたいんだ?」
「うわ急に真面目になった。そっちが素なんですか?」
「……ちょっと待ってろ」
岡崎先輩が目を閉じ、少し深呼吸をする。そして
「コックリさんの何が聞きたいんだ〜〜い?」
「別に求めてないです」
「はあ……別にどっちが素とかじゃないよ。真面目な話するとテンションが落ちる、それだけの話だ」
そうなんだ。
ずっとテンション地の底ならいいのに。
「それで、何が聞きたいんだ?」
「えっと、コックリさんがなんで流行ってるのかとか、どうやったらブームが終わるのか知りたいなって」
「ブームの始まりはおそらく、誰かがコックリさんに失敗したからだな」
「失敗したから?」
誰かがやったからっていうならわかるけど、失敗したからってどういうことだ。
「あさひクン。君はコックリさんについてどれくらい知ってる?」
「何人かでコインを使ってコックリさんに質問するゲームでしょ」
「軽いパーティゲーム感覚でやる人間が多いが、あれは降霊術だ。低級の妖を……幽霊を呼び寄せてそいつに質問に答えさせる」
うん?今妖って言った?
もしかして神無月家の人なのこの人?
「最後にコックリさんを送り返せば儀式は何事もなく終了する。しかし送り返せなかった場合幽霊に取り憑かれることとなる」
「失敗したら取り憑かれるってことね。それが広まった理由とどう結びつくの?」
「幽霊に取り憑かれた人間が、別の人間とコックリさんを遊んだらどうなると思う?」
妖に取り憑かれた人間がコックリさんを遊んだら?
別にコックリさんを遊んだから妖が強くなる要素なんてない。新しい妖が来るだけで……
「あっ」
「気付いたみたいだな」
「新しい妖が来て、わざと失敗して取り憑かせて、また別の人間とコックリさんを遊ぶ……」
爆発的なブーム。
その裏では妖が連鎖的に取り憑いている。
「岡崎先輩!ブームを止めるにはどうすれば!」
「隠れることを許さず一人一人除霊していくか、本体を討つかの二択だな」
「本体?」
「コックリさんで呼び出されるのは野狐と呼ばれる長期的な作戦を立てることなどできないイタズラ狐だ。そいつらに指示を出している本体がいる」
「どうすればそいつに会えるんですか!」
私の荒げる声を受けても岡崎先輩の声のトーンは変わらない。
「今のペースで行けば今日か明日にでも会えるだろうさ」
「どういうことですか?」
「こういった尖兵を送り込むのは、決まって本体が現れる条件を整えるためだ。人間を操って結界を物理的に破壊する知能はないようだから大規模なコックリさんでもして降臨するつもりだろう」
「強力な奴が出るってことですか」
「コックリさんなんてものに頼るやつだから大した奴は出ないと思うけどな。それじゃあ僕はそろそろ帰るとするよ。君たちもコックリさんには参加せず自衛してくれたまえよ!桃園部長によろしくな!ハーッハッハ!」
「あっちょっと!行っちゃった」
岡崎先輩は元のウザいテンションに戻り、そのまま帰ってしまった。
コックリさんのこと、帰ったら彼方に報告しよう。




