プロローグB(彼方視点)
俺は遥に連れられ、部屋の中に入る。
遥からの報告。嫌な予感はするが聞かないわけにはいかない。
「それで遥。なんの用だ」
「単刀直入に言うわ。反魂の御札と反魂香の使用形跡が見つかった」
「反魂香だと?」
反魂香。中国発祥の霊薬の1つで、焚くことで死者と話すことができるもの。
話すだけではなく使い方によっては蘇りにも使える。
だが死者の蘇りはこの世界の理を歪めてしまう。
安倍晴明や芦屋道満のようにいっときだけならまだしも、繋ぎ止め続けるとなるとその歪みは生贄によって抑える他なくなる。
繋ぎ止める限り、永遠にだ。
「犯人と誰を蘇らせたかの目星は?」
「犯人に関しては周辺のカメラを精査中。蘇らせた対象が妙なのよ」
「生きている人間を蘇らせようとしたとかか?」
「蘇生対象が不在。無差別的に蘇生をしたものと思われる」
なるほどそれは妙だ。
通常であれば蘇らせたい人間がいるから反魂の儀式を行なう。
しかしその人物は対象の蘇生ではなく、反魂の儀式自体を目的としている。
「実験を目的としたものか、あるいはオカルトマニアによる単発的な犯行である可能性が高いな」
「それがそうとは思えないのよ。こういった儀式は素人が手を出せばいくつか手順を間違えたり、フェイク情報を掴む。だけど今回はそういった綻びが一切なかった」
「相当に知識ある者の犯行ということか?だとすれば対象不在の理由が……」
「だから妙なのよ。それで、あさひについてはどうする?」
「そうだな……」
無差別的ということは、誰が蘇るかわからない状況にあるということだ。
民間協力者は親しい人間の死から妖退治の世界に入ることは珍しくない。
一ノ瀬や鬼宮達のように妖に恨みもなく入ってくるやつのほうが珍しいだろう。
その中でもあさひは親友のめぐみが死んでから日が浅い。
万が一蘇っためぐみと遭遇すれば、その心理的な負担は計り知れない。
「今回の件が片付くまで民間協力者によるパトロールは中断。正規職員たちにパトロールをさせる。特に田中あさひには適当な仕事割り振って遠ざける。それでいいか?」
「ええ、それが妥当なところだと思うわ」
ただでさえ忙しい神無月に人手を減らすのは辛いところだが、そうも言ってられない。
あさひ達は協力者である以前に、守る対象だ。




