振り返り(彼方視点)
ある日の神無月家。俺はあさひからヤマタノオロチ及びヒュドラ討伐の話を聞いていた。
「それで、肝心の2日目はどうだったんだ?」
「えーっと、確か朝はパンだったかな。ロールパンとサラダと」
「あさひ、その辺は別に飛ばしてもいい」
「ま、まあそりゃそうよね」
あさひが誤魔化すように笑いながら話を続ける。
修学旅行の思い出話じゃなくて報告書の作成のために聞いてるってこと、分かってるんだろうか。
「金閣寺で鬼宮さんが暴走して、清水寺でMIHARUさんに会って……」
「あさひ」
「MIHARUさんとの合流は重要でしょ?」
「その辺はいいから、夜にホテルを抜け出したあたりからを頼む」
「はいはい」
あさひは思い出しながら、話をする。
「MIHARUさんがヤマタノオロチが2体出たって言ってきて、京都の神無月家の動きが変だから乗り込む話になったの。あ、この中の1体がヒュドラね」
「変。とは?」
「なんて言ってたかな……討伐じゃなくて京都から追い出そうとしてるように見える。みたいな?そんなこと言ってた気がする。実際そのとおりだったわけだから、見る目あるよね」
「それでその方針に反発して、独自に討伐に向かったと」
俺は調書にメモ書きを増やしていく。
言い方が悪かったか少し気まずそうにしているが、俺としては別に気にしていない。
こいつを調子に乗らせるのも嫌だし、フォローはしないでおこう。
「うん。あとは彼方も知っての通り、月読神社に行ったけど晴明さんの結界のせいでツクヨミさんが入ってこれなくて、晴明さんは私達を捕まえようとしてきたの。なんか何が起こるかわかんないからってさ」
「そしてとっさの機転で芦屋道満を呼び出して、安倍晴明の拘束を振り払い討伐に向かったと」
「そうそう!ホテルのみんなを人質にした晴明さんもひどいけど、道満さんも晴明さん相手に京都そのものを人質にしてさー!」
あさひは元気に最強陰陽師2人への不満を吐き出している。恐れ知らずと言うか分け隔てないと言うか。
なんにしてもあさひへの聞き取りはこのあたりで終わりでいいか。
「よし、じゃあこの辺で終わり。アイス食っていいぞ」
「あ、マジ?まだまだ暑いもんね。ラッキー」
あさひはアイスを求めて部屋を出る。
あさひの証言を照らし合わせても、ヒュドラを呼び出した人物は分からない。
ヒュドラ程の妖が誰に知られることもなく自然発生する確率は極めて低い。ヤマタノオロチと同時となればなおさらだ。
何者かが呼び出した。しかし誰が何のために。
「あ、彼方」
「……なんだ、あさひ」
「ひとつ言い忘れてたけど、私道満さんの修行でアマテラスの力を武器に乗せられるようになったわよ」
「そうか、メモに加えておくよ」
俺は調書に雑に書き加え、俺もアイスを食べるために部屋を出る。
9月はもうぼちぼちと終わり、10月が始まろうとしていた。




