幕間 『対空亡用結界研究その1』(彼方視点)
流守町、神無月家。
京都であさひがヤマタノオロチを退治し、ツクヨミ様が京都に行き、俺と遥はあさひの無事にとりあえず安堵していた。
「さて、と。あさひの安全も分かったことだし結界作りに戻らないとな」
「彼方。ちょっと休憩しない?根を詰めすぎても良くないしさ。クッキーとかあるわよ」
遥がそう言って立ち上がり、クッキーの缶を取りに行く。
「まあせっかくの2人きりだし、少しお茶するのも悪くないかもな」
「……あっ!なっ、違っ!そういうことは考えてなくて!」
遥が2人きりという言葉に反応して、みるみる赤くなっていく。
「……悪い、俺がからかうのはあさひがからかうのとは、ちょっと話が変わってくるよな」
「ほ、本当にそろそろ休憩が良いと思っただけで、あさひの結界の進捗がどうでもいいわけじゃなくて!」
言われなくてもわかってる。
遥はやるべきことを無視して色ボケに走るような奴じゃない。
本当にただ効率を考えて休憩を提案してくれただけだ。
「今帰ったぞ神無月彼方よ」
「そりゃ二人きりなのはうれしいけども!」
「邪魔したな」
「待ってくださいツクヨミ様!お話しを!お慈悲を!」
ツクヨミ様がとんでもないタイミングで帰還し、即退室しようとする。
遥がまるで悪の組織の親玉にチャンスを懇願する幹部のようだ。
ここまで取り乱されると流石にちょっと気にする。
「ツクヨミ様、今休憩をしようかと思っていたところでして。良ければご一緒にどうです?」
「うむ、それも良いのだがその前にひとつ耳に入れておきたい話があってな」
「どのような話でしょうか」
「うむ、では……」
ツクヨミ様は少し広い場所に移動し、召喚を始める。
地面に浮かぶ九字切りの紋様。呼び出すのは……
「ハハハ、ツクヨミ様自ら口寄せしてくださるとは光栄ですなあ」
芦屋道満。一ノ瀬から連絡があった、あさひが呼び出したという名のある陰陽師だ。
「道満様でしたか。どのようなご用事で」
「ふん、神無月家か。道満でいいわ」
「……道満。何の用事ですか?」
俺の対応に、道満はニヤリと笑い答える。
「神を追い出す結界を作っているのだろう?昔、俺が作った結界が役に立つかと思ってな」
「……!協力してくれるんですか!?」
「あいつのおかげでヒュドラを倒して、晴明の鼻を明かしてやることには成功したからな。その礼に消えるまでの短い時間くらい手伝ってやるさ」
「ありがとうございます!」
「それともうひとつ。分かっていると思うが。晴明の監視の目を盗んでヒュドラを解き放った者がこの日本のどこかにいるはずだ。気を付けておけ。まあ流守に来るとも限らんがな」
「……肝に銘じておきます」
そいつが何者なのか、何が目的だったのか、今はどうでも良かった。
その後俺達は休憩を忘れて作業に没頭した。
結果として『妖を追い出す結界』と、道満が消える前に残した知識を組み合わせ『神を追い出す結界』を開発した。
次はこの2つから『神も妖も追い出す結界』を作り出す研究だ。




