幕間 『お土産配り』
修学旅行から帰ってきて、私はお土産をあちこちに配っていた。
自分の分、両親の分、祖父母の分。
神無月家の職員さんたちの分、それとは別に修学旅行に来れなかった彼方と遥の分、あとは橋花さんと中村医院とモネさんと……。
家族と神無月家以外だと中学時代の友人の分、そしてヒカリの分だ。
「ほら、修学旅行のお土産よ」
「わあー、お湯呑みだ。ありがとうあさひちゃん」
広範囲に八ツ橋を買ってきたわけだけど、八ツ橋に追加してヒカリには湯呑みを買ってきた。
「あれ、このお湯呑み……」
「何か気になることでもあるのヒカリ?」
「多分2個対になってるデザインのやつだよね?もう1個はあさひちゃんの?」
私はドキリとする。1個だけで分かるもんなんだ。
やっぱりそういうところ、ヒカリはよく見ている。
「あー、それもちょっと考えたんだけどね……」
「お金足りなかったとか?」
「……勝手にお揃い買ってきてプレゼントとか、キモいかなって思って、1つしか買えなかった」
恥ずかしさで顔が熱い。
キモさで言ったらそんなこと意識してること自体が相当キモくないだろうか。
それを本人の前で白状させられている。
なぜ私はお土産を渡すだけでこんな辱めを受けるハメになっているんだろう。
「……ふふっ」
「わ、笑わないでよ!もう!こんなことなら無難にキーホルダーとかにすればよかった!」
「もらうならキーホルダーよりは木刀がいいかな。旅先って感じがしていいよね」
「えっ、木刀?」
木刀欲しがる人いるんだ。
ヒカリの感性は相変わらずよくわからない。
あの木刀、ヒカリにプレゼントしちゃおうか。
「木刀も買ってきたんだけどさ。よかったらヒカリいる?」
「えっ!いいの!?やったー!」
ヒカリがとても喜んでいる。修学旅行は楽しかったけど、ヒカリと一緒にいる時間の方が癒やされるかもしれない。
「でもちょっと意外。あさひちゃんそういうのあんまり買わないタイプだと思ってたから」
「うん、まあ……いろいろあってね」
「色々って?」
「……今から木刀取ってくるね!」
京都て起こったこと、とてもじゃないが神無月家と関係ないヒカリには話せない。
私は誤魔化して立ち上がる。
「えーっ!今から一緒に八ツ橋食べるんでしょー?」
「そんな距離ないから時間掛からないわよ。お茶でも沸かして待ってて」
「むー……あ、そうだあさひちゃん」
「なに?ヒカリ」
「今度お揃いのマグカップ、買いに行こうね」
その後、私は木刀を取りに一旦家に帰った。
9月の夜風では、私の顔の火照りをとるのには足りなかった。




