第12話 死にかけたりもしましたが新たな力も手に入れました
急降下した折り鶴は土産物屋の前を通り、再び急上昇する。
なんで急降下したのよ。
「今のなんだったんですか道満さん!」
「ほれ、これ持て」
道満から手渡されたのは、土産物屋の前においてあった木刀だった。
「…………泥棒!」
「人の生き死にがかかっとるんじゃ。1本くらいなんじゃ」
そりゃそうかも知れないけど、一般市民の私としてはあまりに豪快に取ってきたことにビビってしまう。
というかあの店も営業時間外に外に置くなよ!
「というか木刀なんて渡されても代わりになりませんよ。一ノ瀬師匠の矢は神無月家の洗礼をされてるからヒュドラの首を飛ばせたんであって、これだと叩いても単なる打撃になっちゃいます」
「好都合だ。行くぞ!」
「行くってどこに……まさか!」
折り鶴は私たちを乗せて、ヒュドラとの間合いを詰める。
クロスレンジ、インファイト。私達は首の間を飛び回る。
「うわわわわわ!」
迫りくるヒュドラの首を木刀で叩いて身を守る。
首は飛ばないから増えない。でも減りもしない。
「む、不味いな」
ヒュドラが霧を吐く瞬間、道満は折り鶴を加速させ離脱する。
「何考えてるんですか!」
「毒は厄介だのう。ヤマタノオロチの方にするか」
「聞けよ!」
折り鶴がヤマタノオロチの首の間に入り込み、先ほどと同じように私は木刀で首を叩く。
先程と違うのは毒がないことと、その分パワーがあることだ。
一撃一撃が私の腕を痺れさせる。
「まだできんのかお前は!」
「何を!?いや聞くまでもないわ。アマテラスのことですよね!無理ですよこんなの!」
「神の力、妖の力は心に宿る!必死になれ!余裕をなくせ!1つのことを考え続けろ!そうすればコツが掴める!」
「1つのことって言われても!」
あの頃は、海坊主の頃は確かに流守の人たちを守ることに必死で、だから使えた。
でも今はどうだ?京都の外の人を守るために必死だけど、それよりも折り鶴から落ちそうで怖くて。
ヒュドラの毒を吸い込んだら多分死ぬ。
ヤマタノオロチの攻撃もまともに食らったら多分墜落して死ぬ。
なんでこんな奴らと戦わなきゃいけないんだ。守るためだ。
そりゃそうだけど。そうなんだけど……!
「私は……」
私の考えが1つにまとまる。
戦い始めた日からずっと思ってきた、戦う度に隠していた、私の根底にある部分。
「死にたくないいいいい!!!!」
凄まじく情けない言葉を出しながら、私は木刀を振るう。
ヤマタノオロチの首に当たり、ヤマタノオロチの首に傷が入る。
「グギャアアアア!」
「えっ」
痛みで激しく暴れるヤマタノオロチの首の間を、道満は繊細に飛び回る。
「その感じだ!その力の流れを記憶しろ!」
2、3発叩き込みながら、折り鶴が離脱する。
すべてダメージありだ。
「さあ、弓を持て。ようやく勝負ができる」
私は言われるがままに弓を持つ。
さっきと同じ感覚を、弓と矢に……
「……多分行けます」
「それは何より。それで、どっちを仕留める?倒して残り1体になれば援護できるぞ」
道満に言われて私は少し考える。
ヤマタノオロチは毒と再生がない代わりに一撃が重くて、まともに当てても腕が痺れた。
ヒュドラは矢で簡単に吹き飛ぶほど弱いかわりに、その力を毒と再生で補っていた。
毒は防御することができ、よくわからないけど道満の言いぶりからするに、アマテラスの力が使えれば再生も封じれるんだろう。
つまりヒュドラのギミックはすべてクリアしたということになる。
「ヒュドラでお願いします。多分そっちの方が楽です」
「よし、では行くぞ」
折り鶴がヒュドラに近付き、左の側面をヒュドラに向ける。
私はアマテラスの力を矢に込め、弓を引き絞り、放つ。
ヒュドラの首が飛び……再生はしない。
「どういう原理なんですかこれ」
「アマテラス様は太陽神だ。その熱は火行ではなく、なおかつ火行と同じように傷口を焼くことができる」
「へぇ……相性良いんですね」
「普段なら火行で十分だがな」
私は道満と雑談をしながら、矢を使ってヒュドラの首を6本飛ばす。
矢が尽きた。残り4本は、木刀だ。
「いつでもいいですよ道満さん」
「ついさっき情けないこと叫んでた人間とは思えんのう」
うっせえ。
折り鶴がヒュドラの首の間に飛び込む。本数が圧倒的に減り、攻撃を入れる度に首は飛ぶ。
ヒュドラの首が全滅し討伐が終わる。アマテラスの力を使えるようになったら、あっけない。
「さて、あとは俺が土行でヤマタノオロチを……」
道満がそう言った瞬間、無数の土の塊がヤマタノオロチに襲いかかり、ヤマタノオロチは崩れ去った。
「……チッ、晴明の野郎は流石に掌返しが早いことだ」
ヒュドラが倒されたことで気にせずヤマタノオロチを倒せるようになった。そういうことだろう。
手柄を取られた道満が悪態を付きながら、折り鶴は月読神社へと戻るのだった。




