第10話 衝突!道満vs晴明!
「さて、最後は蛇退治だとして、まずは何をしてほしい?」
道満は私に対して尋ねる。答えは決まっている。
「十二神将を倒して鬼宮さんと一ノ瀬師匠を助けてください!」
「任せておけ」
道満が短く答えたあと、十二神将に向かい炎が燃え、水が流れ、土塊がぶつかり、木が突き刺し、金属片が切り裂いた。
「すごい……一瞬で」
「あ、ありがとうございます芦屋さん」
「宮っちー!」
解放された一ノ瀬師匠かこっちに来て、小宮さんが鬼宮さんに抱きつく。
「ハハハ。この程度対したことでもないわ。さて」
道満は私の方から晴明の方に向き直り、言葉を放つ。
「晴明よ。策謀では敵わなんだが、力比べなら俺たちの間に差異はない。いや、結界に気をやらねばならぬ今俺がお前より数段上だ。諦めることだな」
「……ふ。相変わらず勝ちではない状況で勝ち誇るのが得意な男だな貴様は」
「何……?」
「人質がこの場にいる者だけだと思っている時点で貴様の負けだ」
この場にいない人質。それは、まさか。
「吉井優子だったか。いや、個人に限る必要は無いだろう。『太陽の手』にとっては、学友の誰が犠牲になろうと耐え難き苦痛であろうからな」
「そんな……!」
優子が、みんなが人質に取られている。十二神将を倒せるかどうかなんて、最初から関係なかったんだ。
最初から私達に選択権なんて。
「得意の策謀も落ちたものだな晴明。まるで的が外れている」
「……道満さん?」
道満は嫌な笑みを浮かべている。
「俺は確かに助けを呼ぶ声に応じて来た。だが、俺の一番の目的は晴明。お前の鼻を明かしてやることだよ」
「……何が言いたい」
「言わなきゃ分からないほど耄碌したか晴明。その人質はこいつたちにとっての人質。そのせいでお前のいいようにされるのならば、どうでもいい程度の存在ということだ」
「道満、貴様!」
道満が右手を開き、掲げて力を入れると、晴明は露骨に焦った顔をする。
何をしようとしてるのか分からないけど、なにか、とてもまずいことをしようとしている気がする。
とてもまずい人物を呼んでしまった気がする。
「面白いと思わないか?安倍晴明が人質を取ったせいで芦屋道満に結界を破られ、ヤマタノオロチに京都を滅茶苦茶に破壊されたなどというストーリーは」
今完全に分かった。道満は結界を破壊しようとしている。
京都の外に被害が出るのはダメだが、京都の中で被害が出るのも当然ダメだ。
「ちょ、ちょっと待ってください!道満さん!」
「ちょっと黙ってな。いいところだから」
私は道満の式神に捕まり、引き剥がされてしまう。
「……お互いが心臓を掴み、動けない状態というわけか」
「晴明殿は口が上手いなあ。油断するとすぐ自分の有利に話を進めようとしやがる。俺の心臓じゃなくてこいつらの心臓だ」
「鬼宮さん!道満を止めて!」
「そんなことすればどうなるかわかるよな?俺の指ひとつであのチビの首、飛ばせるぜ」
鬼宮さんの弱点である小宮さんを一瞬で見抜き、動きを止める。
晴明とは敵対してるが、状況は何一つ良くなっていない。
「それによ晴明。お互い動けないっていうのはお前達にとって有利だ。追い出さなくても自然に出ていくのを待てばいいし、こいつら修学旅行生が予定通り帰ればそれでおしまいだ」
「……それがわかったからどうするというのだ?」
「簡単な話だよ。交渉ってのは不利な側が場を動かさなきゃならないよ……な!」
道満は掲げた手を閉じる。その瞬間晴明が青ざめ、急いで印を結ぶ。
その間に、雨が数滴振り注いだ。
「道満貴様!本当に結界を破るなどとは!」
「信じてたぜ晴明。俺だって虐殺の片棒進んで担ぎたくはないからな。まどろっこしいのはここまでだ。俺とこいつらにオロチとヒュドラの討伐許可を出せ」
「……」
「もう一度結界破ってやろうか?」
「いいだろう。ただし連れて行っていいのは1人だけだ」
「プライドの塊だね。じゃあ……」
道満は式神による拘束を解き。こちらに歩み寄る。
「お前が一番いい。ついてきてくれるか?」
「その前に一発だけ殴らせなさい。それでチャラにするから」
きっと最初から、最終的にここに着地するつもりだったのだろう。
だがそこにたどり着くまでにとんでもなく危ない橋をわたってここに来た。
誰がこんな奴に似てるもんか。




