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第7話 その名はヒュドラ

私達を乗せたタクシーは京都の神無月家の前で止まり、私達は神無月家の屋敷へと突入する。

数人の神無月家の人間が寄ってくる。


「なんだ君達は。早く帰りなさい」


「ヤマタノオロチの件で神無月家に用事があって来ました」

「今は忙しいから帰りなさい」


「いや、ちょっと」

「帰りなさい帰りなさい」


「私達は流守から来た」

「ほら帰りなさい」

「帰った帰った」


「ちょ……」


聞く耳持たねえ。


「あさひ、私なら押し通れると思う」


「鬼宮さん。流石にそれは最終手段にしよう」


大丈夫。私には切り札がある。

不本意ながら手に入れてしまったこの力、無視はしきれないはずだ。


「『太陽の手』田中あさひです!通してください!」


「……あぁ、アマテラス様の」


「まあそれはいいから、今日のところは帰りなさい」


「嘘でしょ!?」


アマテラスの依代だと分かっても通してくれないの!?

自分から二つ名みたいに名乗るの結構恥ずかしかったんだけど!?

彼方達の私への対応と違いすぎる。もしかして私結構大事にされてる?


「『ロックシンガー』MIHARUです!通してください!」


「通すわけないだろ!」

「何考えてるんだ!」

「あとでサイン欲しいな」


MIHARUさんが私と同じように宣言して通ろうとして、止められる。イジってんの?

というかファンいたぞおい。


「『元弓道部』一ノ瀬龍です!通してください!」


「師匠それなんの肩書きにもなってない!」


「あの、えっと『2年2組』小宮花梨です!失礼します!」


「小宮さんそれもう職員室に入る時のやつ!」


突っ込んでいった小宮さんは、その小学生レベルの体躯をあっさり押し返され、尻もちをついてしまう。

ヤバい。


「ああ、悪い。転ばせるつもりは無かったんだが」


「『鬼宮柚子』。殺す」


もう二つ名の部分で本名言ってる。

ってそんなこと考えてる場合じゃない。鬼宮さんは既に小宮さんを突き飛ばした職員の首を掴み持ち上げている。


「う……ぐぁ……」


「ストップストップ!ほら小宮さんも止めて!」


「宮っち!大丈夫!大丈夫だから!」


「……本当に?」


「本当に!」


小宮さんの言葉で鬼宮さんは止まり、持ち上げている職員を別の職員の方に投げ付けた。


「……道はひらけた」


「いいのかなこれ……」


「田中さん、今は進もう」


私達は京都の神無月家の屋敷の中へと入っていく。



……それで入ったはいいけどどうすればいいの?



「偉い人ー!偉い人いませんかー!神無月家の偉い人ー!」


「偉い人いたら出てきてくださーい!」


考えた末私と小宮さんはとても頭の悪い声を張り上げながら神無月家の屋敷を歩き回る。

流石のMIHARUさんと一ノ瀬師匠も苦笑いしている。鬼宮さんは小宮さんを優しく見つめている。ブレない。


「偉い人ー!偉い人ー!」


「なんだ、騒々しいな」


私が偉い人を求めて歩いていると、縦長な帽子が特徴的な着物姿の偉そうな男性が出てきた。


「あ、どうも。神無月家の偉い人ですか?」


「神無月家ではないが、それなりの地位にはついている」


「あ、それなら神無月家の偉い人どこにいるか知りませんか?ちょっと作戦について聞きたいことがありまして」


「それならば必要ない。作戦は私に一任されているからな」


は?神無月家じゃないのに?

なんなのこの人?


「何者か聞きたそうな面をしているな」


「え、はあ、まあそうですね」


「なら教えてやろう。我が名は安倍晴明。神無月家により一時的にこの世界に顕現した存在だ」


安倍晴明。彼方から名前を聞いてた強い陰陽師の人だ。


「晴明さん。2体のヤマタノオロチのことなんですが、京都の神無月家は討伐しようとしてるのではなく京都から追い出そうとしているように見えました。あれはどういうことですか」


MIHARUさんが早速ヤマタノオロチと神無月家の動きについて晴明に尋ねる。


「ああ、本来ならばヤマタノオロチだけだったのだが、ヒュドラが出てきたから急遽作戦を変更したのだ。私の監視網をくぐり抜けて呼び出すとは大したものだよ」


「ヒュドラ?」


話の流れ的に、多分MIHARUさんの見たヤマタノオロチの片方がそのヒュドラというやつなのだろう。

全く知らないけど。蛇の妖なのかな。


「ヒュドラというのはギリシア神話に出てくる怪物の名だ。首を切り飛ばせば、そこから2つの首が生えるそうだ。私も出現してからインターネットで軽く調べた程度の知識しかないがな」


インターネット使って調べ物してんの?神社作られるような歴史上の人物が?


「そんなのどうやって倒すんですか。攻撃したら増えるんでしょ」


「ヘラクレスはヒュドラの首が再生しないように火で焼いたとされている。故に本来ならば火行《かぎょう》で攻めるのがよいだろうな」


急に知ってる名前出てきた。ヘラクレスならなんとなくわかる。


「攻略法あるならそれでどうにかすればいいじゃないですか火行?ってやつで」


「うむ、単体ならばそうしているところなのだがな。生憎ヤマタノオロチは水行《すいぎょう》であり、火行の力は克《か》ち消されてしまう。水行に対しては土行《どぎょう》で攻めることが常套手段なのだが火行に弱いことから分かる通りヒュドラは金行《ごんぎょう》と思われる。土行と金行は相生《そうじょう》の関係であるからおいそれと使えばヒュドラの力が増す結果になりかねん」


「ん?んお?おお……?」


難しい話をされて間抜けな声が出る。火行に弱いから金行?相生?なに?どういうこと?


「……弱点を補い合っているため迂闊に手出しができないということだ」


「あ、そういうことですか」


晴明が見かねて説明し直してくれる。

晴明さん最初からわかりやすく説明してほしいなあ。

安倍晴明が話しているのは五行思想というもので、この世のものは木火土金水から成り立ちそれがお互いに影響を及ぼすという考えです。


簡単に言えばタイプ相性みたいなもんなんですが、ポケモンに教育を受けた我々にはあんまり直感的に感じられない部分も多々あります。どうして土が水に有利なんだ。


なのでまあそういうものがあるとだけ知っておけばいいです。


細かく知っておくとしても大体の創作で触れるのは相生《そうじょう》と相克《そうこく》だけなんでそれだけ知っておけばいいです。


名前の通り相生は生まれる相性、相克は打ち克つ相性というもの。


たとえば火に限って言えば火は木が燃えることで生み出され、火が燃えた後には土が生まれます。これが相生です。土って言うか灰ですが。


そして火は水により消されることにより打ち克たれ、火は金を溶かすことで打ち克ちます。これが相克です。


正直ごっちゃになりません?木と金どっちも火で燃えてんじゃんよ。


なので今作ではそんな大事に扱いません。

覚えておかなくていいよというアナウンスでした。


余談ですが相克の発展形に相侮《そうぶ》という概念がありまして、相手が強すぎると打ち克つことができないというものです。


火で言えば火が強すぎて水が蒸発してしまうというものですね。


結局パワーかよ。

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