第6話 2体目のヤマタノオロチ
MIHARUさんと分かれホテルに帰り、軽いレクリエーション。夕飯。そしてお風呂を終え、私達は消灯の時間までのんびりしていた。
「あさひは何買うの?木刀?」
「お土産で木刀買うやついないでしょ。無難に八ツ橋とかかな」
私はスマホで明日の自由時間に買う予定のお土産を調べ、優子は今日のレポートを書き、小宮さんと鬼宮さんはガーコマというカードゲームで遊んでいる。
トランプ持ってきた私が言うのもなんだけど、デッキ持ち込むのは小宮さんはっちゃけすぎじゃない?
そんな思い思いの時間は、館内放送で終わりを告げた。
『鬼宮柚子さん。小宮花梨さん。田中あさひさん。一ノ瀬龍くん。外に出る服装に着替え、荷物を持って至急ホテルのロビーまで集まってください』
「……ん?私?」
「あさひあんたなにしたのよ」
「さあ?優子呼ばれてないから班単位ではないよね」
「……全員民間協力者」
「え?あ、本当だ」
鬼宮さんの言葉で私はようやく気付く。
ということは京都の神無月家から応援要請とかだろうか?
「まあ早いとこ行ってきなよ。私待っとくから」
「うん。留守中よろしくね」
優子を残して、私達はロビーへと向かった。
―――
途中で一ノ瀬師匠と合流して、ロビーに行くとそこにはMIHARUさんがいた。
「……あの、MIHARUさん。何やってるんですか」
「お、きたきた。じゃあ借りていきますね」
「はい。よろしくお願いします。田中。失礼のないようにな」
「え、ちょ、MIHARUさん。どういうことですか!?」
「ああ、ごめんごめん。ちょっとライブ準備で急に人手が必要になっちゃって。今日会ったばかりの修学旅行生に頼むのも変だけど、他に手が空いてるのいなくてさ。お願いできるかな?」
戸惑う私に、MIHARUさんが説明する。
曖昧で進めてきた、偶然旅先で意気投合をしたというカバーストーリー。
いくら病的に寂しがりなMIHARUさんでも、自分が寂しいからとそれを悪用して連れ出すような真似はしない。
なにか呼び出さなきゃいけないことがあった。そして今の私達に思い当たることがひとつある。
「えっと、私たちでよければ、ライブの準備協力します」
「僕は少し忘れ物しちゃったんで、外でちょっと待っててください」
一ノ瀬師匠が部屋に戻り、それ以外の全員がホテルの外に出る。
昼に乗ったのとは別のタクシーがホテルの前に止まっていた。
「それでMIHARUさん。何があったんですか?」
「ヤマタノオロチが2体現れた」
ヤマタノオロチが2体。ヤマタノオロチが2体?
「……MIHARUさん多分ヤマタノオロチは8体現れるもんですよ」
「あー、いや、そうじゃなくて、八本頭が2体現れた」
「……おおごとじゃないですか」
「だから呼んだんだよ」
京都の神無月家が安倍晴明と協力して対応すると言ってたとんでもないやつ。
それが2体?
「うーん。でもあさっち。今のところこっちの神無月家から協力要請は来てないよね。2体いても別になんとかなるんじゃないの?」
「そういやそうね?彼方達ならヤバかったら旅行者でもなんでも使うし、神無月家的には問題ないとか?」
「判断基準が彼方とは違うって可能性があるし、何より神無月家の動きが妙なんだよね」
「妙……ですか?」
「うん。抑え込んで攻撃はしてるけど、なんていうかな。倒そうとするより京都の街から追い出そうとしてる感じ?」
追い出そうとしてる。別にそれでも良さそうに思えるけど、倒すのではなく京都から追い出すということは、京都の外で暴れるということだ。
被害が出る。ここじゃないけど人がたくさん死ぬ。彼方なら多分そんなことはしないよな。
「まあ、追い出そうとしてるんじゃなくてどこかに誘導しようとしてるんじゃないですか?前に街の一部を爆破してどうにかするって作戦立ててましたし」
「その割には避難勧告とかないんだよなあ。まあ1回行って話聞いてみようよ」
MIHARUさんは譲らない。直接見たからこそ感じる何かもあるかもしれないから、私はそれ以上の反論はしなかった。
そして少しすると、一ノ瀬師匠が弓を持ってやってきた。
「すみません。遅れました」
「ただの確認作業みたいなもんだしそんなもん必要ないのに」
MIHARUさんがそう言って、私達はみんなでタクシーに乗り込み、神無月家へと向かった。
っていうかやっぱり弓持ってきてるじゃん一ノ瀬師匠。




