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第5話 晴明神社にて

一ノ瀬師匠の長い解説を終え、私達は三十三間堂を出る。


「これから晴明神社行くんですけど、一ノ瀬師匠も来ます?」


「来ます?ってタクシー出すの私なんだけど」


「僕一人ならいいけど、班員がいるからちょっと無理かな」


MIHARUさんの私に対するツッコミをスルーして一ノ瀬師匠は話を続ける。

そうか班員いるんだった。

なんか一ノ瀬師匠とばっかり話してたから忘れてた。


「そっか、これからどこ行く予定なんです?」


「近くに弓道の体験教室があるからそこに行って、その後博物館に行く予定だよ」


「体験教室って。旅行先に来てまで弓の練習ですか?」


「あはは、班員のためだよ。いくらなんでも自分が矢を射るためだけに修学旅行の自由時間使って今さら体験教室なんて行かないよ」


「まあ、そりゃそうですよね。すみません」


「それにゴム弓持ってきてるからね。自主トレならそれで十分だよ」


自主トレはするんかい。


「まあゴム弓ならいいですよ。一ノ瀬師匠のことだから普通に弓持ってきてるんじゃないかとか若干思ってましたから、それに比べたらゴム弓くらい」


「……ふふっ」


何その笑い。持ってきてんの?まさか持ってきてんの?


「師匠もしかして」


「ずっと話してると回る時間なくなっちゃうし、そろそろ行くね」


「師匠!その前に答えてくださいよ師匠!おい弓道バカ!」


誤魔化され立ち去られたが、タクシーが来てしまったので私達はそのまま晴明神社に行くことになった。



―――



「うわー。なんか星がいっぱい」


晴明神社に着いた私の口から出たのは、バカみたいなセリフだった。

でもまあ実際星のマークがあちこちにあった。入り口とか、なんかの石とか。確か五芒星《ごぼうせい》ってやつだ。


「花梨《かりん》ちゃんこの五芒星ってどういう意味なのかわかる?」


「え?いや、わかんないかも。宮っちは?」


「……ごめん。わからない」


優子が小宮さんに、小宮さんが鬼宮さんに聞くが、誰も分からない。

正直あんまり聞いてなかったけどここまで先生が解説してたり、一ノ瀬師匠が解説してたりしてたけど、今は解説役が誰もいない。


なんで鳥居がふたつあるのかとか、入り口の方にあった橋の意味とか、地面にあった格子状の模様とか、なんもわからず見ている。


「まあ、別にいいか。適当にお参りしましょ」


「えっ、今調べてたんだけどな……」


MIHARUさんがスマホをしまいながらそう言う。なんか悪いことしちゃったかな。


「なんかすみませんね。それでなんかわかりました?」


「ああ、星のマークが安倍晴明のマークなんだってさ。さっきの格子状の模様は別の陰陽師のマークだって」


安倍晴明のマークだからこんなにあるのか。

当然だけどやっぱり安倍晴明についてしっかり祀ってある神社なんだなあ。


その証拠に、観光客に紛れてピリついた空気を持つ人間がいる。

おそらくは京都の神無月家の人間。安倍晴明について色々準備が必要なのだろう。

妖との戦いをいくつも乗り越えてきたからか、いつの間にかそういう見分けがつくようになってしまった。


「……お参り終わったら声かけに行きます?MIHARUさん」


「そうだね。あんたの力を貸すこともあるかもしれないし」


「え?なに?なんかあった?」


MIHARUさんも小宮さんも鬼宮さんもなんとなく気付いてる中、優子だけがよくわからないという顔をしている。実際に戦っているかどうかの差だろうか。

私達はお参りを済ませ、京都の神無月家と思わしき人に声をかける。


「すみません、ちょっとよろしいでしょうか」


「修学旅行の学生さんですか?なんでしょうか?」


思いの外丁寧な対応をしてくれる。

忙しいからもっとふいにされるような冷たい反応を覚悟していた。


「もしかしたら、神無月家の人ですか?田中あさひです」


「誰だ……?」


「ほら、流守《るもり》から修学旅行で来ると言っていた」


「……ああ『太陽の手』か。何の用だ」


安堵したのもつかの間、私が一般の修学旅行生ではないと分かると態度が冷たいものへと大きく変わる。

よく考えたらこの人達が神無月家じゃなかったら不審な声掛けだったなとか、そんなことを考えている余裕はなかった。


「な、何って言われても、何か手伝うかもしれないから挨拶しておこうかなと」


「そうか。万が一のことがあれば頼ませてもらう」


「えっと、それで」


「用が済んだならどこかへ行ってくれ」


冷たいっていうか扱い雑じゃない?

私『太陽の手』よ?アマテラスの依代よ?


「いや、ちょっと!連絡先とか、こっちの神無月家の拠点とか教えてくださいよ!」


「必要ないだろう。呼ぶときはこちらからホテルに連絡を入れる」


「そりゃそうかもしれないけど……!」


「私は修学旅行生じゃないからさ。私には教えてもらえるかな?」


MIHARUさんが聞き出そうとするが、神無月家の反応は芳しくない。


「民間協力者なら間に合っている。『太陽の手』ならまだしも他に頼ることは無い」


京都の神無月家はあくまでも私達の力は借りないつもりらしい。

鬼宮さんの怪力はかなり戦力になると思うけどなあ。


「なんでそんな教えたがらないんですか?教えるだけで民間協力者5人の信頼を得られるんですよ」


「あさひあさひ。私アルバイト。民間協力者じゃない」


「……4人の信頼を得られるんですよ」


すっかり忘れてた。優子ただのバイトだったわ。


「教える時間がもったいないだけだ」


「だとしたらこうやって押し問答してる時間の方がもったいないと思います。答えるまで粘着し続けますよ」


我ながらどうかと思う粘着宣言に、京都の神無月家の人たちは折れて渋々教えてくれた。


「ありがとうございました。それじゃあお気を付けて」


私達は京都の神無月家の人にお礼を言ってその場を離れる。


「ねえあさっち。彼方くんやはるっちに聞けば十分だったんじゃないの?」


「まあ、そうね。ぶっちゃけ単なる意地ね。意固地になって時間潰させてごめんね」


「まったくだな。せっかくの宮っちとの観光の時間を無駄にするのはいただけないな」


鬼宮さん。怒ってるとまでは行かないけど不機嫌にさせたかも。


「あはは、ごめんね宮っち。でも正直ちょっとムカついてたからスッキリしたかも」


「もっとガツンと言ってやるべきだあさひ。なんだったら私が直接この手で」

「ダメだよ宮っち!あの人たちだって守るために戦ってるんだから。ね?」


「……冗談だ宮っち」


不機嫌だと思った矢先これなんだから困る。


「ほらあさひ、いつまでもそんなことを言ってないで観光しようよ。あの桃の像なんか触っていいみたいだし、撫でに行こ」


その後私達は優子の言う桃の像を撫で回したり、展示されてる安倍晴明の逸話のパネルを見たり、お守りを買ったりして自由時間を満喫してホテルに戻ったのだった。

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