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第4話 三十三間堂への寄り道

「さて……どうやって晴明神社に行けばいいんだろう」


清水寺から出て最初に出た言葉はそんな間の抜けた言葉だった。

急遽決めたからね。なんも分からん。どこにあるのかすら分からん。


「え?先生の言う通りタクシーで行くんじゃないの?」


「買えるお土産減るじゃん。学校からバスの1日券もらってるしバス調べてそれで行きましょ」


私がスマホで晴明神社へのアクセスを調べようとした時、MIHARUさんが提案をした。


「あー、よかったらタクシー奢ろうか?」


「え?いいんですかMIHARUさん」


「うん。わがまま言って着いてきた側だしさ。よければそれくらいさせてよ」


「じゃあ、お言葉に甘えて」


「5人だからちょっと大きめの呼ぶわ」


私達はMIHARUさんの呼ぶタクシーに乗ることとなった。


「でも逆に余った時間どうするのあさひ?」


「ん?そうねー。どっか別のところ行って時間潰すか、さっさとホテルに帰るかのどっちかね」


とはいえMIHARUさんのお金で晴明神社に行くわけだから、他のところ行くからそこにもタクシー出してくださいとは言いづらい。


「え……早めに帰っちゃうの?じゃあ時間いっぱいタクシーでドライブしない?」


「それメーター料金えらいことになりますよMIHARUさん」


これどっか寄ったほうがいいわ。

私も神無月家の高額バイトで金銭感覚おかしくなってる自覚あるけど、流石にここまでじゃない。


「じゃあゲームセンターに寄って遊ぶとかどう?」


「小宮さん。私あんまりいい子じゃないけど、流石に制服でそんなとこ行くほど不良じゃない」


「まあ、そうだよね。一応授業の一環だもんね」


小宮さんがアハハと笑う。

冗談のつもりなんだろうけど、鬼宮さんが怖いからあんまり冗談言わないでほしい。


「新幹線の中で一ノ瀬くんがどっか行くって言ってたじゃん。あそこにすれば?」


「三十三間堂だっけ?まあ、行ってみるかぁ」


優子の提案で私達は三十三間堂にも行くことになった。

タクシーの運転手が言うには三十三間堂の方が近いらしいから、そっちから先の目的地となった。



―――



「おっ、一ノ瀬師匠だ」


三十三間堂に入ると、一ノ瀬師匠の班が即目に入った。


「田中さん。田中さんの班も三十三間堂見に来たの?」


「うん、そういや一ノ瀬師匠が行くって言ってたから行くかーって」


「もしかしてどこ行くか決めてなかったの?」


「え、うん」


「普通先に決めておくもんだと思うよ」


「あ、あはは、まあそのおかげで一ノ瀬師匠と一緒に回れるってことで」


一ノ瀬師匠が呆れた表情をするのを、私は笑ってごまかす。

そして一ノ瀬師匠が他の班員に聞こえないように小さな声でこちらに尋ねてきた。


「ところで田中さん。あれってMIHARUさんだよね?カバーストーリーはどうなってるの?」


「えっ?えーっと、偶然行き先が同じ観光客?」


「じゃあちょっと距離置いて歩いた方が自然じゃない?」


一ノ瀬師匠の言葉にMIHARUさんがショックを受ける。


「勘弁してあげて一ノ瀬師匠」


「うーん、まあいいや。行こうか」


「……私あいつ嫌い」


「大人気ないですよMIHARUさん」


拗ねるMIHARUさんを連れて私達と一ノ瀬師匠達は一緒に靴を脱いでお堂へと入っていった。

お堂の中にはとんでもない数の千手観音《せんじゅかんのん》の像があった。


「うわぁ……これ何体いるの?」


「1001体あるらしいよ。すごいよね」


私の疑問に一ノ瀬師匠がすぐ答えを返してくれる。

多分ちゃんと予習してきてるんだろうなあ。私にはできない。


「えっと、じゃあ千本×1001体で……」


「千手観音って別に腕千本無いらしいよ」


「えっ、そうなんですか?1、2、3……」


「あさひ、数えてないで先に進んでよ」


「あ、ごめんごめん」


私は優子に背中を押され、先に進む。

順路通りに進むと、お堂から出て外観を見ることになった。


「ほら、ここが通し矢の舞台となった廊下だよ田中さん」


「一ノ瀬師匠。実はそもそも通し矢がなんなのかよく知らないんですけど」


「あ、そうなんだ。現代では色々変わっちゃったんだけど、昔の通し矢はこの軒下の端から端、120m先の的を狙い打つ競技だったんだ」


「こんな距離をですか!?」


「さらに天井がある都合山なりに放つこともできないからね。並大抵の膂力《りょりょく》……弓を引く力じゃ届きすらしないよ」


昔の人はすごいなあと思いながら私は一ノ瀬師匠の解説を聞く。

私じゃ多分届かない。


「すごいもんですね……ところで何本射るんですか?4本?」


「本数じゃなくて時間だね。24時間的に向かって弓を引き続けるんだ」


「24時間って……夜通しですか!?」


「うん。あこがれるよね。本数で言ったら最大で約13000本の矢を射ったんだ」


「一万……?」


「だいたい6秒に1本」


「うへー。総数もすごいけどそんなハイスピードなこと自体もすごいですね」


というか一ノ瀬師匠さっき24時間弓を引くことをあこがれるって言った?

流石にそこまでの弓道バカじゃないよね?気のせいだろう。


「これだけの本数になったのは藩の威信をかけて弓を引いてたからなんだ」


「藩の威信ですか?」


「うん。13000本ともなると用意するだけでも大変だしね。国家プロジェクトだよ。当然弓を持つ役もその藩で最高峰の実力者。そんな実力者達がここでしのぎを削ったんだ。僕もそんな物に選ばれるようになりたいよ」


なるほど、さっきのは聞き間違えではなかったようだ。

24時間弓を引く。さっきはそのインパクトだけで判断してしまったが、今では聞けばその最高峰への憧れの言葉だと分かる。

そう考えると私にも気持ちがわかる気がする。


「それに記録を塗り替えられなかったらその責任を取って切腹をしてたんだ」


「えっ」


「憧れるよね。自分の弓の腕に命をかけて戦いに来れるの」


うん。前言撤回しよう。

一ノ瀬師匠は弓道バカだ。私にはわからない。

その後は現代の通し矢について聞くこととなった。

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